秋の味覚・トリップ・男主
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秋の味覚 木の子
*ミョウジナマエ
虫が元気に昼も夜も飛び回り、それに逃げ回るしかない夏がようやく終わりを迎えた。お盆の時期に部屋の蝋燭が風もないのに消えて泣き叫んだりと夏は色々事件が多かった…けど涼しくなってきて、空の雲が夏の終わりを告げていた。
鈴やいざというときの石ころなんかも持ち合わせて、いざ芳花さん、蒼さん、松さんの4人できのこ狩りへ。熊も猪もいると聞いて怖がってたけど、毎年きのこ狩りしてる場所で熊も猪も出にくい場所を教えてもらってそれなら……と同行。
図録を持って木の根を見てみる。これは……しいたけ?見目は完全にしいたけ。肉厚で美味しそう。バター醤油で食べたい。
「あ!しいたけですわね」
「醤油で炙って食べたいですね」
「……もうお腹が減りましたわ……まだ始まったばかりですのに」
蒼さんと笑いながらしいたけを採取。自生してるのすごいなぁ。次は舞茸、えのきとおなじみのきのこがたくさん生えてる。取りすぎないようにして場所を移動しながらどんどん採取していく。
「ミョウジさま、見てください!松茸です!」
「おお〜!ほんとに生えてるんだ……お吸い物の出汁もいいし……」
「贅沢ですわ……これは黄昏殿に献上しましょう」
頷く。名前しか知らないオレにもこの間、昆奈門さんの恋仲だから、と絹の服一式が贈られてきた。値段を想像してしまい、ひっくり返った。
「!」
「ミョウジさま、こちらへ」
「……く、熊…?」
「いいえ、それにしては草木の揺れが小さいですわ」
じゃあ猪…?猪だったら木に登ればなんとかなる。熊は木も登るから怖いのだ。
「……グルル……」
「え……狼!?ニホンオオカミ?!」
「ミョウジさま、わくわくしてる場合じゃございません!えーと……忌避剤である煙玉を出します!そしたら斜面に気をつけて里まで降ります。松についてきてください!」
頷く。直接攻撃なんかしたくない。狼もきのこの匂いに釣られてきたんだろう。秋は美味しいもの多いもの。煙幕に近いものを出してその隙に逃げ出す……誰一人逸れず里に降りて来られた。
「ニホンオオカミ、すごい!本物!かっこよかった…!!」
「ミョウジさま……襲われかけたのですよ?」
「ご、ごめん……でも!絶滅しちゃってるからさ……!剥製でしか見たことないんだもん……あんなに可愛いんだね」
「もう…高坂さまが聞いたら怒りますわよ」
「その通りです。擦り傷の治療をしますのでこちらへ」
「げ……高坂さん」
「げ、とは??お前たちは……切り傷はないな。捻挫や打撲などはないか?」
「ええ、ございません。破傷風になったら大変ですし、消毒なさってきてください。下ごしらえは済ませておきますから」
芳花さんにそう言われ、医務室へ。枝か何かで切った腕に消毒して包帯を巻く。たしかに薬が発展しきってない現代では小さな傷から入る菌で大熱を出したり、大病に繋がりかねない。そう思うと恐ろしい。
「高坂さん、狼いたんですよ」
「えぇ、そりゃいますよ」
「オレの時代だと、ニホンオオカミは絶滅しちゃってるんですよ……本とかでしか見たことなくて」
「絶滅……少し切ないですね」
「気温とか、人の増加による住処の拡大で一番最初に森がなくなりますからね……かっこよかった〜!」
「どんな様子でした?群れ?」
「いや、1匹で……唸ってました。縄張り入っちゃったのかもしれませんね」
「ふむ……きのこや落ちてるきのみなら栗なんかを探している最中だったのでしょう、もしくはこのケガの血の匂いとか」
「……怖いこと言わないでくださいよ」
「可能性ですよ…若い狼なら群れから自立した個体ですかね」
かっこよかったなあ。狼ってスタイリッシュで。野犬と狼からいまのペットにつながる犬個体が増えていくんだけど、やっぱり自然元来のスタイリッシュさはかっこいい。顔つきとかも。
手当のお礼を告げて台所に戻る。何作ろうかな。確か鮭大量にあって消費しないといけないから蒸し焼きなんかいいかも。人参、えのき、舞茸を散らしてその上に切り身を乗せる。塩と胡椒をかけておしまい。蒸し上がったあと食べるときに醤油を垂らせばご馳走になる。
しいたけは豆腐と一緒にお吸い物にして、残ったきのこは明日肉巻きにしよう。尊奈門くんが好きそうだ。
「肉できのこを巻く?面白いですね」
「一緒に炒めたことはあっても巻くとは…!」
「これならばら肉でも千切れず巻けるので、かさ増し的な風になるしきのこがタレを吸うので美味しいんですよ」
「明日も楽しみですわ……あら、雑渡さま!」
「ふふ、狼に会ったんだって?何故か喜んでたって陣左がぼやいてたよ」
「初の!狼です……ニホンオオカミ生で見れるとは思いませんでした」
「本当は怖がってほしいんだけど………ま、いっか。怪我は?」
「多分逃げるときにやっちゃったんだと思います…小枝で切っただけなので、浅いです」
「ふむ……ねえ、次木の子とか栗とか拾いにいくときは少し離れたところにして。血の匂いを覚えられてるかもしれないから……来年まで今日行った場所には念の為近寄らないでね」
「血の匂いを…?」
「うん、そうやって狙われたら次会った時噛みつかれるかもしれないから……念の為ね?」
頷く。たしかに……向こうの縄張りに踏み込んだのはこっちだし、残したもので狙われたらひとたまりもない。
「そうですわね、あのいつものルートの木の子は取りすぎない程度には収集しましたし……栗の収穫のほうが大変ですしね……」
そういえば、どうやってあのイガイガを除くんだろう。器具とかあるのかな……まさか素手……??
「いい香りがする」
「ミョウジさま考案の夕餉ですよ」
「ん〜楽しみ……手を洗ってこよう」
ぐりぐりと頭を押し付けた後に昆奈門さんが立ち去る。
「ふふ、ラブラブですわね」
「う………」
「あら、真っ赤になられて…雑渡さまもとくに怪我のあとは食欲が減退してしまい、何も口にされない時期もあったんですよ……回復したとはいえ、食事に特別思い入れがないような様子でしたので……ふふ!ミョウジさんのご飯を食べ尽くす勢いで召し上がる様子が見れる日が来るなんて」
怪我のあと……体の面でもそうだし、精神的な面でも元気がなくて食べられなかったんだろう。
「へへ……嬉しいですね」
「ええ、とっても」
では!と昆奈門さんたちに用意したご飯を並べる。
生姜と胡麻和えの玄米ご飯に蒸した鮭たち、しいたけと豆腐のお吸い物。そして大量に収穫できたにんじんしりしり。
「豪華だねえ」
「にんじんと卵か」
「南の方の家庭料理ににんじんしりしりってやつですね」
「「「「にんじんしりしり…………」」」」
まさか4人とも呟くと思わなくて笑ってしまう。方言だから馴染みないよね。
ちょっとしょっぱい系のおかずばかりになってしまったかな……献立の組み合わせは本当に難しい。生姜は傷みかけてたから急いで使わなきゃだったし、人参も糖度は増すだろうけどいつまでも置いておくわけにはいかない。この時代の野菜、フルーツ全てにおけるけど味はもちろん淡白。
現代の野菜たちの品種改良による糖化は努力の賜物なのだ。
だからか分からないけど、人参なんかは甘くもないし香りが強いから苦手な人が多いらしい。卵と炒めてすこし甘めの味付けにしたにんじんしりしりなら克服できるかなぁと。しれっときのこ蒸しの中にも入れたし。
「いい鮭だね、旬だ」
「しいたけ美味しいです…!」
尊奈門くん、詰まらせるよそんな勢いで食べたら……。
「栗はどうするの?栗ご飯?」
「ふっふっふ………まあお楽しみに」
「あ、可愛いこと考えてる」
昆奈門さんからしたらこれも可愛いらしい。生姜ご飯気に入ってくれたみたいでおかわりの嵐だった。お吸い物も完売状態になってあんなにあった木の子メニューがあっという間になくなった。
「すごい勢いだった……」
「ナマエくんは食べた?これから?」
「これからです」
お吸い物とかそういうのは別で取っておいてある。お盆を用意して昆奈門さんの隣に座る。一度向かい合わせで座って拗ねられてから絶対に隣になった。
「いただきます」
「ナマエくん」
「?」
「可愛い計画教えてよ」
「そうですね………スイーツ、とだけお教えします」
「「「すいーつ!!!」」」
芳花さんたちが一気にテンション上がった。
「スイーツかぁ……ふふ、楽しみにしてるね」
一番は私だからね、と確認してくる昆奈門さんに頷く。もちろん……ケーキを食べたことないであろう昆奈門さんに食べてほしいから作る…どんな反応してくれるんだろう。
「ふふ……ん、鮭美味しい」
「君のご飯はなんだって美味しいよ?食べすぎて太りそうだ」
「動き回ってるんですからオレより太る可能性少ないですよ……ふふ、今日のおかわり合戦凄かったですね」
(ナマエくん、またこの生姜のご飯食べたいな)
(はい、また作りますね)
(あと……ポンデリングも)
(あれ気にいってくれました?)
(もちろん)
(あと肉じゃがも食べたい)
(昆奈門さん、もしかしてお腹空いてます?)