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夏の夜長
*諸泉尊奈門
「ぅ……きらい!ざっとさん、きらい!」
呂律の回ってない舌足らずな口調でナマエさんが組頭を突っぱねる。ああ、そうだとも。酒に酔っている。
だからきっと本心ではない……それに、組頭の呼び方も前の「雑渡さん」に戻っている。だから本心ではない。
………が、組頭はぴしりと固まって動かなくなってしまった。後ろ姿でわかる、物凄いショックを受けて今呆然としてるのだろう。
「ミョウジさん、ご冗談を……言葉が過ぎますよ」
「…冗談じゃないもん、嫌っていうことするざっとさんは嫌いだし」
つん、と組頭に背を向けたミョウジさんがあろうことか寄りかかってくる。や、止めてくれ……!組頭の傷に塩を塗るような真似は…!!肝を冷やしながら振り返ると、真っ白になった組頭は小頭によって連れて行かれてた。やはり固まってる………。
話を戻そう。そもそもミョウジさんが夏の夜長について話し始めたのがきっかけだった。もうこの時点で大分酔っていたが、組頭も久々だしとお酒を許容していた。たびたび幼くなる言動もお酒のせいと分かっているので誰も気に留めない。………さすがに箸を両手に構え始めたときは危ない、と取り上げたけども。
山が多いこの里の山の景色の話から、星、虫(甲虫)、そして少し肝の冷える怖い話に移り変わった時だった。ミョウジさんが「こわい話はイヤだ」と言い始めたのだが、高坂さんや小頭も大変に酔っていた……組頭も。
夜通し対象に尾行し、様子を見守ることも任務では多々ある。だから人ならざるものの姿は私も片手では数え切れないくらいには見たことはある。何かされたり、怖い目に遭ったりはしてない………まだ。
しかし、経験豊富な組頭たちからは怪談話たちが溢れてやまないくらい出た。しかもちゃんと怖いのだ。
そして限界が来たミョウジさんが吐いたのが、冒頭の言葉。
「今日は尊奈門くんとねる」
「ぅえ゛っ!??!!っごほ、げほっ!!!駄目です、それは!!」
「あんな怖い話されてひとりで寝ろっていうの……?はくじょうもの!!!」
「いいですか、ミョウジさん。貴方と組頭は婚姻しているようなものなのです。契を交わしているのです……そんな貴方が、他の方と同室で過ごすなど、よほどの事情がない限りあってはなりません!」
「…………」
あ、理解はしているが納得はできぬ表情だ。
「……組頭は大変に反省しております、どうか……どうかお許しを。見てください、あのように小さくなられてます」
「でもオレ、何回も途中で止めたよね……つまり、機会を与えてたよね。それ全部無視して怖い話してきて嫌がることしたのざっとさんだよね。」
「………そ、れはそうですが、えっと……」
言い返す言葉がない。だってミョウジさん正論だから。なんていえば丸く収まる…??!
「たった一度の過ちでしょう、組頭は何度も貴方にそのようなことをしたのです?」
こ、高坂さん………!後光が差して見える。助け舟を出してくれた高坂さんに目で合図を送る。
「……した!」
「「えっ」」
これには高坂さんも私も動揺するしかない。ど、どんなことをしでかしたのだ、組頭……!内容次第ではフォローのしようがない。
「そ、それは一体…?」
「えっちのとき待ってって言っても無視する、いつも気絶するまでやる」
「……………」
気まずい。非常に気まずい。突っ込むに突っ込めない。たしかに、組頭が人払いをする翌日大体ミョウジさんは動けないからと部屋にいる。
「それは……えと……ミョウジさんのことが好きすぎて、加減を間違えてるだけでは……?と、ともかく。先程の件も、嫌がらせのつもりでしていることはないです、組頭は。………それはミョウジさんも分かりますよね?」
「……皆ざっとさんの味方するんだ」
少し鼻声で声が震えている。あ、まずい。泣きだしてしまう。ミョウジさんはお酒を飲むと笑い上戸になる反面、泣き上戸にもなる。
「ナマエくん」
「………」
「ごめんね、ナマエくん……お願いだから、泣かないで」
「……ざっとさんが悪いじゃん」
「うん、ごめんね……泣かせたかったわけじゃないんだよ。私も、尊奈門たちも」
ちらりとこちらを見上げてきたミョウジさんと目が合うので強く頷いておく。
「廊下でねます」
「風邪ひいちゃうよ……夏とはいえ夜はほら、冷えるし」
「…………」
納得のいかぬ表情だ。組頭、あともう少しです!!
「ナマエくんを一人にさせたくないよ、お願い。」
「………接触禁止です」
よし!!!!廊下や私の部屋で寝ることは回避された。なんやかんや、ミョウジさんも優しいので明日には仲直りしている……はず。もしくは聞いた話自体忘れているかもしれない、確か以前もこのくらい酔うと記憶が朧気になってたはず。
「尊奈門、陣左」
「「はい」」
「途中のやつは本気で忘れて」
頷く。あの気まずい話だろう。
「そう言うならまず怒らせるな……ミョウジさん、私も話を広げた責がある。嫌いと言われて結構堪えてるから、許してやってくれないか?」
「………ゆきだるまを作る権利で、てをうちます」
「………………凍傷になるまでは、だめだからね」
組頭が渋々そう答えると、やった!と両手を上げて喜ぶナマエさん。そうして自室に戻っていった二人を見送る。
「「……………はぁ〜〜〜〜〜………」」
「はっはっはっ………振り回されてるなぁ、ミョウジさんと組頭に」
小頭は笑いながら膝を叩いてる。
「いや、そんな……たしかに夜の話はちょっと反応に困りましたが…頭を打ってでも忘れます」
「そうしておけ、組頭は嫉妬深い……手に入れた自分のものの管理は私達でさえ目を光らせてるからな」
「嫉妬深い……しかし、組頭は女中とも下男とも過ごすミョウジさんを放任…とまではいかずとも見守っている様子に思えますが」
私がそう零すと高坂さんと小頭が「お前は何もわかってない!」と口を揃える。
「あれは見守ってるのではない、邪魔をしに割入ってるのだ」
「割入る………」
「あぁ。遠くでお前の恋仲が他のやつと楽しげに談笑していたら気にはなるだろう。たとえ、お互いそういう感情がない顔をしていても、だ。……あとからこっそり何を話していたのかではなく、その場に赴くのが組頭だ」
「な、なるほど」
「まあ良い面もある…ミョウジさんが来たばかりの頃は身分の関係で怪しむ者も多かったが、あの溺愛っぷりと己らに向けられる目で本気なのだと理解した女中も多い。仕事に勤しむ者だけが残るようになったな」
「………確かに!ミョウジさんが手伝うのもあって、毒味の回数も減りましたね」
惚れ薬なる怪しき妙薬を混ぜこむ女中も多かった………それこそ、組頭が火傷を負う前までは特に。
「あの人はなんでも楽しんでこなしてくれる、慣れない故限界を分かっておらずたまに倒れたりもしてるが……まあ、それはおいおい」
「雪遊びは厳格化せねばなりません……聞けば壊死の一歩手前までいったと。せっかく五体満足で雪の中助かったのです、少し過剰なくらいが丁度よいかと」
「そうだな、陣左の意見に同意だ」
「誤っていたら、正していただきたいのですが…」
そう私が切り出すと、二人の目線がこちらへ向く。
「組頭は火傷を負ってから、たまに熱すぎる湯船に入ろうとしていたり…感覚が鈍くなっていると感じます。ミョウジさんも、同じような状態なのでしょうか?」
「そうだな……得に寒さに関しては鈍いと言えよう。特に足……組頭と同じく鈍くなってる」
「なるほど……」
「何か気になる点でも?」
「あ、いえ……厨によくいる蒼という女中が、縫い物が得意と聞いたので……冬に向けて、組頭とミョウジさんお揃いの足袋代わりのものを編もうかと」
「おお、良いな。二人とも喜ぶだろう」
「尊奈門、ナマエさんは股引までないとだめだ」
「そ、それは少し初心者には厳しいです…」
慣れたら作って差し上げたい。冷えたくて雪遊びしてるわけではなく、感覚が鈍いため気付けばより冷えてる、がきっとミョウジさんなのだ。
*雑渡昆奈門
「ナマエくん」
「うぇ…?」
「名前、呼んで」
「ざっとこんなもんさん……」
そうだけど。もう眠くてぽやぽやしてるナマエくんはさっき私に嫌いって言ったことも、雑渡と呼んだことも忘れかけているんだろうか。私はこんなに傷ついたのに。嫌いって勢い任せに言われたことよりも、距離を取られた名前の呼ばれ方のほうが傷ついた。
「そうじゃなくて……お願い、いつもみたく…呼んで」
「?…昆奈門さん、どぉしたの……?」
「なんでもないよ……もっと呼んで」
「昆奈門さん……さっき、嫌いなんて言ってごめんなさい」
「ううん、私もごめんね。思い出話として盛り上がったつもりだったんだ……」
ナマエくんは忍じゃない。虫や家鳴りにも驚いてるし、私達が天井から顔を覗かせるのも毎回びっくりしてる。特別怖がりに感じてしまうけど、忍者じゃない子の感覚ならこれが普通なんだ。だから、任務先の心霊や怨霊の話なんて聞きたくないと主張するのも当然……配慮が足りなかった。
「でも、好きって言ってほしい」
「ふふふ……昆奈門さん大好き〜」
「なぁに、ご機嫌になって……おわ、凄い勢い」
ばふ!と音がなるくらいの勢いで布団ごと抱きついてきた。ニコニコしてて本当にかわいい。
「大好き!」
「ふ、……私も」
「…でもお化けの話はほんとに嫌です。あとゴキブリ」
「うん、しないし居たら倒すね」
「………ど、どうやって…?」
「え?手でパンって」
「触らないでください」
抱きしめていた腕を解かれた。なんでそんな、ゴミを見るような目で私を見つめるの!?
「待って待って待って、今は綺麗だから…え、じゃ足?潰したほうがいい?」
「離れてください!!!!」
「綺麗だから今!!!!!」
ずさぁっ!!とナマエくんが壁際まで離れるので一歩歩み寄ると廊下に逃げ出した。こんな真っ暗な中少し方向音痴の気があるナマエくんが適当に走ったら絶対に迷う。……しかも犯人は私とはいえ、怪談話をしたあとだ。号泣まっしぐらだろう。
「ちょっと、待ちなさいナマエくん!!!」
「やだぁぁあっ!!!!」
(で?子の刻過ぎてるのに走り回ってたと?)
(だって昆奈門さんがゴキブリ手で潰すっていうから!!!信じられない!!手で!?!?!!!)
(だから、仮定の話であって今は綺麗だって!!)
(手が駄目なら足で潰す?とか言ったんですよ、山本さん!!!信じられない!!ううう気持ち悪い………)
(元気なのか大人しいのかどっちかにしなさい全く………とりあえず、処置の方法は想像して気分が悪くなるだけだろうからもう寝なさい)
(本当に綺麗だってば、ナマエくん、最近見てないもの)
(今後も綺麗でいてください………)
(小頭………何か?)
(追いかけっこしてたから叱っただけだ…何歳なんだあの二人は)
(ふふふ、仲直りしたんですね)
(あぁ…尊奈門も気をつけておけ、ゴキブリを手や足で潰すと組頭が言ったらゴミを見るような目で見られたとのことだ。虫嫌いだからな……ミョウジさん)
(あぁ………なるほど。気をつけます)
(酔いが冷めるほど引いてた)
(ふ…っ、はははっ!…ちょっと想像できます)