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お花見
*ミョウジナマエ
「……はっ!」
「ミョウジさま、少しお休みになられたほうが…」
起きたらすり鉢と魚のアップ。頭を振って調理の続き。これは手作りのさくらでんぶ作り。
タラの身をすり鉢で解してから味付け。あとは食紅でピンク色にしたら終わり。
「これを錦糸卵とのおにぎりにするんです」
「ミョウジさまが考えるものってぜんぶ可愛らしいですわね」
「いや、オレが考案したわけでは…元があるものを再現してるだけですよ」
プリン、ポンデリング、さくらでんぶ……ぜんぶ考えて形にしてくれた偉人がいる。
「わあ…!ほんとに桜みたい!可愛らしいですね」
「これをひと口大のおにぎりにしましょう」
「もも色と黄色で可愛らしい、本当のお花みたいですわ!」
午後のお花見に向けて下準備。朝早くから起きてお重にお弁当を作りましょう!と女中の蒼さんたちから誘われた。他の忍軍の人たちにはお弁当形式じゃないけど振る舞われるらしい……好評だといいけど。
一応、ひじきと枝豆の煮物も作ったし、肉豆腐も作った。あとはブリが安かったから照り焼き。あとは桜えびの卵焼き。こんなもんかな……。
できた!疲れた……。お重を風呂敷で包んで、雑渡さんたちが待ってくれているお花見場所へ。人が少ない場所を選んでくれたらしく、蒼さんたちと歩いていても静かだ。桜並木になっていて、すごくきれい。
「お天気になりましたね!」
「ミョウジさんの日頃の行いはいいですもの…お天道様も数少ないお願いくらい叶えてくださいますわ」
「そ、それはちょっと買い被り過ぎでは…?」
「そんなことありません!雑渡さま、みなさま!お待たせいたしました!」
「ミョウジさまと作ったお弁当ですわ!」
そう蒼さんが言うと雑渡さんが文字通りすっ飛んできた。
「ナマエくん、疲れたでしょ…ありがとう」
「ヘヘ…拘っちゃいました」
「じゃあ私が全部いただくから」
「だめだめだめ、全員の分ですよ」
「えぇ…」
見るからにしょげてるけど流石に……お昼抜きっていうのは酷だ。オレもお腹減ったし。
「じゃあ食べましょうか……お腹すいたし」
「君たちもおいで、朝から作ってたんだろう」
「よいのですか?」
蒼さんたちも座り、桜の木の下でお重を広げる。恐らく初めて見るさくらでんぶに皆目を丸くして興味津々って顔で見てた。
「も、桃色だ」
「甘いです!」
「これは…?野菜でもないし…」
「ナマエくんが考えたんでしょ」
「はい、よく遠足のお弁当に入ってて好きだったんですよ」
「美味しいよ」
雑渡さんもニコニコしてひと口大とはいえおにぎり10個くらい食べるもんだからびっくりした。すごい食べる。尊奈門くんも…ていうか皆すごい食べてる。そんなにお腹空いてたんだ?!待たせすぎたかな……。
「照り焼きもいい加減だな…酒が進む」
「オレも少し呑みたいです」
「だめ、君酔うととんでもなく可愛くなるんだから。攫われちゃうよ」
「攫われないですよ…」
雑渡さんに手を取られて失敗。とりあえず肉豆腐食べておくか。桜きれい。ようやく春になったんだな……春といえば……
「あ!菜の花!」
「食べたいの?」
「菜の花の辛子和えとかどうでしょう」
「いいけど、私に1番に作ってね」
もちろんです、と返す。つくしもあるし、ふきのとうもある。オレのときは雪解けの時期のイメージだけど、今は随分寒いから今から出てくるだろう。ふきのとう、食べたことなくて食べてみたいんだよなぁ。
「高坂さん」
「駄目だ」
「まだ何も…!「『暖かくなったからお散歩行きたいです』とか言い出すんだろう」…ぐ…」
「ふふ、お見通しだね」
「駄目です。春になったら尊奈門と体を鍛えてください」
「けち……」
「聞こえてますよ!!!組頭も甘やかさないでください!」
「ええ?私も怒られるの?」
けらけらと笑う皆の声を背に里を見下ろす。山があって、木が生い茂ってて、商店の通りを歩くならまだしも確かに……森に入ったら迷っちゃいそうだ。高坂さんの一理はある。あるけど、先にようやく迂闊に過ごしていても寒すぎない時期になったから歩き回りたい気持ちもある。
「川とか行きたいです」
「…ん〜それは、だめ。ほら、冬眠明けのくまとか…気が立ってる猪とかもいるし」
「え、熊居るんですか??」
「うん、いるよ」
「……急に怖くなりました」
「珍しいのですか?」
「ううん、お祖母ちゃんの家にはよくいたんだけど……その、オレが生きてる時代って自然を犠牲にして発展してるからいろんな動物も絶滅したし、そうなると熊は食べるものがなくて…人里におりてきてるのが問題になってたんです」
「それは……確かに大問題ですね、恐ろしい」
「刃物とか特別な理由がないと所持してるだけで捕まるから、猟銃は資格がある人だけ使用を認められてて。でも人里に降りてきてても、すぐに発砲許可は出ないんです」
「なるほど……ミョウジさま、もし山中に用事があるときは必ず誰かにお声がけを。」
「私も心配ですわ」
「怖いから入らない」
「あーあ、陣左が怖がらせるから」
雑渡さんに揶揄われた高坂さんは悔しそうな顔ででも…と呟いてた。猪は見たことないけど、熊の怖さはよく知ってる。もしかしたら匂いに釣られてここの里にも降りてくるかもしれない。毎日気をつけて過ごさないと。
その日の夜、雑渡さんが菫の花を摘んで帰ってきてくれた。きれいな紫色だ。一輪挿しに活けて窓辺に飾る。
「凄い、きれい!売ってるお花みたいですね」
「うん……可愛い、今日楽しかった?」
「とっても!ありがとうございました、わがまま叶えてくれて」
「いいよ…私としてはもっとわがまま言ってくれていいのにと思うけどね」
「だめです。ダメ人間になっちゃう」
「ならないよ…なっても私が養ってあげるよ?」
「だめなんです。またお弁当作って縁側で食べましょう」
「うん、さくらでんぶ美味しかった」
「あれでそぼろ丼作るとご馳走ですよ、ミョウジ家のご馳走」
「へえ、美味しそう……ナマエくんの思い出の味って何かあるの?」
「ん〜……甘い卵焼きとか…?母さんのご飯は全部好きだったからこれ!っていうのがないような…」
「ナマエくんの遺伝子を見るに、きっと美味しい料理を作る母君なんだろうね」
褒めすぎですよ、と後ろから抱きしめてきた雑渡さんの頭を撫でる。大きな犬みたいな甘え方をしてくる人だ。近所にいた秋田犬を思い出す。よく肩に顔を乗せられてたな……撫でろ!って鼻息フンフンして。
「ナマエくんは花も好き?」
「見るの好きですよ……でも、虫が苦手で。桜ももう少し過ぎたら毛虫フィーバーですよね……気が重い……」
「あぁ…たしかに。忌避剤とかないから下歩かないようにね」
「凄いかぶれるので気をつけます……うう、気持ち悪い」
「この間トカゲに飛び上がってたもんね」
「10年以上ぶりに見ましたよ……トカゲは、まだ。まあ…って感じです」
イモリとかヤモリとか。そういうのは可愛いと思う。蛇は…見てる分にはいいかな。
「夏になったら星を見に行こう、冬は寒すぎるからね」
「高坂さんけちだから」
「ははは、心配してるんだよ」
それは分かってる。ちょっと母さんみたいな心配の種類を持ち合わせてる人だ。まあでも……雪禁止なのは仕方ないとも思ってる。
「今度たけのこ掘りに行こう、尊奈門が好きなんだ」
「いいですね、やってみたかったんですよ」
結構難しいって聞くけど、どうなんだろう?簡単にポキって折れちゃうから根本から掘り起こすのが大変らしい……お祖父ちゃんから昔数回聞いたことある。あんまり掘りすぎると、熊の餌がなくなるから全部取るなよ、とも言ってたな。
オレの世代ははちみつ食べてるのんびり屋なイメージが強い。たけのこ食べるんだ…と幼心に驚いたのは今でも覚えてる。
「伸びてきたね」
まばらになってきた襟足の毛を撫でながら雑渡さんがそう呟く。もさもさしてるから刈り上げとかしたい。バリカンなんてないだろうなぁ…。
「はい……流石に切りたいです」
「伸ばさないの?」
「なんか……伸ばすにしてももっとこう……きれいに…」
「可愛くて好きだけどな」
「雑渡さんはなんだって可愛いじゃないですか」
「だって事実だもの、ナマエくんは可愛いよ。今日だってお重の蓋を開けるとき少し緊張してたでしょ?尊奈門がおにぎり食べて甘い!美味い!って言ってて息を吐いたのも可愛かったし……空になった重箱を嬉しそうに見てたのも可愛かったなぁ…あと桜の花が頭についててそれも…」
「分かった、分かりましたから」
「今も照れてて可愛い」
「すみません、謝るから…」
「ふふ。まだまだあるのに」
もういい、照れて顔がなくなる…!
「悪いことばっかり覚えて……」
「人聞きの悪い…好きな人に好きって伝えることの何が悪いの。ちゃんと受け止めて。」
(それで好き好き言い過ぎて怒られたのか?……何やってるんだ)
(陣内うるさい)
(大の大人がへそを曲げて拗ねて……ミョウジさんの方が歳下だとは思えん)
(好きだから好きって言っただけだし)
(なんでも過剰はいかんだろ)
(…………)
(はぁ…)
(また小娘たちと楽しそうにしてる……邪魔してくる)
(ミョウジさんに同情するよ)