お好きにどうぞ・トリップ・男主
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惚気
*雑渡昆奈門
ついに。ついにだ。ナマエくんが晴れて私の恋仲になった。片思いに見せかけた両片思いの期間はすごく楽しかった、少し顔を寄せたりすると照れるナマエくんが本当に可愛かったし、寂しいときとか寒いときに素直に甘えられない様なんかもう巻物に記そうかと悩むくらいだ。
もちろん恋仲になってからも可愛いさは健在、どころか毎日更新されていってる。恋仲になった日の目合いなんかとろとろに溶けてぐずぐずになっていたナマエくんに歯止めが聞かず、次の日立てなくしちゃって怒られたりとか。だってナマエくんが抱いてって言ってきたからね。
「ナマエくん」
「うぉ……雑渡さん」
「今日は何作ってるの?」
女中の娘達に大層気に入られてるナマエくんはよく厨にいる。4人で何か作ってたり、申請してから食材を買いに出かけたり。なんだか私とよりも恋仲らしいことをしていることも多々ある。私のナマエくんなのに。
「ポンデリングです」
「ぽんで…?」
聞いたことない語感に聞き返すと、女中の娘達は面白かったみたいでくすくす笑いだした。
「何笑ってるの」
「いえ、私たちと同じ反応でしたので」
「雑渡さま、少し大人気ないですわ!私たちまだ16の乙女ですのにそんなに敵意を見せて」
「こら、蒼!…意見には同意ですけど。私達はミョウジさまを横取りしたりしませんよ」
「生意気……無断で出かけてるの知ってるからね」
「あら、山本さまの許可を得ていますわ」
「
「あまり嫉妬深すぎるとミョウジさまが潰れてしまいますよ」
くぅ、減らず口……!気づけば陣内が入り口で笑ってた。全然庇ってくれないナマエくんは油の中の球体を真剣に見つめていた。
「どーなっつ?という洋国のお菓子だそうで」
「上手にできたら、雑渡さまに差し上げましょうってお話してたんですよ」
「揚げ加減と生地のもちもちさが難しいんですって」
次々に色々教えてくれる娘達に返事をしながら、買い物中の様子も聞き出す。ナマエくんはこのくらい集中してると周りの話を聞いてないことが多いからね。
「変なの居なかった?」
女中で食堂の給仕が主な仕事とはいえ、女中たちにも防衛術やらは教えてある。だから4人での外出も陣内は許可しているんだろう。私達と比べたら拙いものの、そこらの輩にやられないくらいには鍛えている。
「えぇ、ミョウジさま魚屋に感動してらしたわ!」
「魚屋に?」
「なんでも…ミョウジさまのところでは、あらかじめ切り身にした状態で魚が売られていることが多いので、水あげされた状態で並んでるのが珍しいと仰ってました」
「あと…雑渡さま、お耳を」
「なに?」
「桜が咲いたらお花見がしたいと!」
こそ、と小声で教えてくれた。なるほど……計画しても良さそう。桜が咲く頃には雪も完全に溶けて、陣左の外出禁止令(1人)も解かれるかもしれない。いいことを聞いた。この小娘たちはナマエくんが照れながら私の話をする、その様子を見るのが大好きらしくて男子禁制!と4人でよく話し合ってる。結果は私に筒抜けなんだけどね。
「できた!」
「おお、ぽん…ぽんで…」
「ポンデリング!」
丸が8個くっついたような輪っか状のもの。さらに白い……砂糖かな?液体状の砂糖のようなものをかけてすこし冷やすと。
「あ、まだだめですよ」
食べると思われたのか両手で丸いのを隠してきたナマエくんの額に唇を落とす。可愛いからね。
「奪ったりなんかしないよ」
顔が真っ赤になったナマエくんを撫でながら試食まで待つ。
「山本さんもどうぞ」
8個の球体に切り分けて実食。おお……白い液体状だった砂糖がジャリッとしていて、生地の方は仄かな甘みでちょうどいい。もちもちで、少し団子に似てる食感だ……これはこの娘たちが好きそうな。
「「「お、美味しい…!!!」」」
わあ、目がきらきら。
「揚団子とは違うものの、団子のような…不思議な食感ですね。甘さもちょうどいい」
「ふふ、好評だ……雑渡さんは?」
「全部食べたいくらい美味。ポンデリングって名前の意味は何?」
「なら良かったです…このドーナツを作り出したのはえと…倭の国の企業なんですけど、由来は外国のパンの名前からもじったもの…ですね」
「どーなっつ、素敵なお菓子ですね」
「私はまたミョウジさまのぷりんが食べたいですわ」
「最近は卵高いからだめよ…でもあのぷりんも美味でした」
「ちょっと、ナマエくんを口説かないでよ」
気前がよく優しいナマエくんはすぐ人のために動こうとする。女中が要望を出せばぷりんを作っちゃうだろう…たまにはその優しさを独占したい。
「もう、雑渡さまってば……」
「すまぬな、組頭は嫉妬深いんだ……ミョウジさんも組頭を拗ねさせないでくださいよ」
別に拗ねてないし。ナマエくんが私以外にも笑顔振りまいてるの見て腹立たしかっただけだし。
「またプリン食べましょうね」
「食べるけど……」
「美味しいものの独り占めはよくないですよ」
ナマエくんにそう釘を刺された。心外だ、甘味を分け与えたくないんじゃなくてナマエくんの手作りのものというのが大事なのに。このあとに一生懸命違いを説いたけど、ナマエくんはあんまり分かってなさそうだった。
「今日は鶏肉がびっくりの価格だったのとご近所の方々からもらった分が凄いので、唐揚げ作ろうって」
「唐揚げ?」
「雑渡さん好きだと思います…多分、揚げ物大丈夫ですか?」
「油かぁ……多分?天ぷらなら食べたことあるけど」
南蛮の国の料理だから、滅多に見ないし珍しいものだ。単体だと胸焼けがしそうだ。
ひとまずまた何か考え込んだナマエくんに君が作るものなら喜んで頂くよ、と告げて陣内と戻る。夕餉が楽しみだ。
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「おぉ…?生姜の香りがするね」
「はい、臭みを消そうと思って」
重たくなったらこれをかけてください、とナマエくんに渡されたのは大根おろしと…?柑橘の香りがする。さっぱりしそうだ……この子のこういう細やかな気遣いは本当に嬉しい。しかもこの別添え皿を出されているのは私だけ。
「これが唐揚げ…いい香りですね」
「醤油とにんにくと生姜で漬けましたからね…ごはんが進むかと」
「わあ、いただきます!」
尊奈門が食べ始め、私達も手を合わせる。かり、と音が聞こえるくらい衣がサクサクだ。醤油とにんにくの風味が鼻を抜けていき、確かにご飯が進む。美味しい。
「美味しい」
「すごい美味しいです、ミョウジさん!」
「これは若い衆が食い尽くしそうだな」
「その通り、もうおかわりパーティーで」
ほとんど残ってないとナマエくんが溢す。
「君のぶんは?」
「実は……ドーナツの試食でお腹が膨れてしまって……」
「夕餉抜きってこと?」
「それはいけませんなぁ」
「なりませんね」
心配性の陣左がまた腕組んでる。陣内と陣左の視線に耐えられなかったのか、いつもより少なめの白飯をよそってきたナマエくんの茶碗に私の唐揚げを1つ乗せると、陣内と陣左も乗せた。
「こ、こんなに」
「しっかり食べないと…そうだ、これ頂くね」
大根おろし。胃もたれしたわけじゃないけど、せっかくナマエくんが私のために考案してくれたものだ。頂くに決まっている。これも美味しい。随分さっぱりして同じ料理でも全然違うように感じる。
「い、いいです、尊奈門くん、もう充分」
「駄目です!ナマエさんは華奢なのですから骨から太くしないと」
今から太くなるものなの?まあ尊奈門は少し抜けてるから…言いたいことはわかるし、尊奈門も床に伏せがちなナマエくんを心配してるんだろう。熱に5日以上魘されてる時なんか、何か持病があるのか?と心配していたしね。
「苦しい……」
「頑張れ、大きくなれないよ」
「もうここからは伸びませんってば」
「分からないよ?」
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*諸泉尊奈門
高坂さんより承ったミョウジさんの監視。
今日は組頭とミョウジさんの火傷の薬を受け取りにいくついでに、包帯や消毒液などの買い出しの日だ。
ミョウジさんにとって私たちのすべてが珍しいらしく、買い出しや雑用でも喜んで進んで引き受けてくださる。
……高坂さんは何にでも興味がありすぎる、と頭を抱えていらしたが。
「ミョウジさん、あちらの男にお気をつけを」
「…お侍だから?やっぱり仲悪いの?」
真剣な顔で見当違いなことを話すミョウジさんに苦笑しながら首を振る。あやつは組頭のことをよく思ってない地侍なのだ……組頭はおろか、忍自体をに近いか。侍のほうが偉く、黄昏甚兵衛様にもお仕えになれると盲信している。
お前の実力不足が今の結果の全てだろう。そう吐き捨てたいが、組頭の顔に泥は塗りたくない。
「おやぁ?……これはこれは、雑渡殿の」
下卑た笑みを浮かべながら大きな声でこちらへやって来る。ミョウジさんはまだ悪意に気付いていないのか、表情に変化はない。
「誰かと思えば……雑渡殿の夜伽役だったか?」
「……言葉が過ぎます、彼は組頭の正室です」
「なんとまあ……男を正室に選ぶとは。しかし丁度いい、雑渡殿が選ばれるなら夜の方もそれなりなのだろう?いやはや、恥ずかしながら最近妻と盛り上がらずな……ぜひ教えていただきたいものだ」
「……尊奈門くん、これって浮気ってこと?」
「え!?あ、いや……まぁ」
まさか私に話が来るとは思わず、なんとも言えぬ返答になってしまった。言葉通り受け取るなら相手をしてほしい、そういう意味では浮気になる。
「添い遂げた人がいるのに浮気をなさるんですか?」
「え?!いや…」
「それに、勃起不全を他人に乗り換えることで治療なんて…その相手に飽きたらまた別の相手を探すんですか?もっと根本的治療をしたほうがいいですよ」
けろっとした顔で言い放つミョウジさんは、いつも組頭に抱きしめられて顔を真っ赤にしている人とは思えない。
「ぼ、勃起不全……」
はっきりと口に出されたことで地侍が口ごもる。
「身売りをしているわけでもないですし、そういう治療の学があるわけでもありません。きちんと医者にかかったほうがよいのではないですか?……あ!知り合いに、医術に長けている子がいるので医者に心当たりないか聞きましょうか?」
にっこり、そう笑って問いかけるミョウジさんは完全に善意で尋ねているのだろう……その発言の中身が地侍のちっぽけな自尊心やらを傷つけているとは露知らず。
「あ、行っちゃった……なんか怒らせるような回答だったかな」
「いえ…完璧でした」
「完璧!?そうなんだ…大変だね、あの人。浮気したら不貞だって裁かれたりしないの?」
「裁かれは……ミョウジさんのところはまさか?」
「円満離婚じゃない限り、裁判所で裁判するよ。慰謝料の請求とかになってくるし」
慰謝料……思いの外厳しいんだ。男の浮気の一つや二つ、我慢するのが女の役目とは言い訳としてよく言われたものだ。そういうもの、と諦めているものも多いが、そもそも浮気をせず一生添い遂げる夫婦が多いのも事実。
これは、帰ったら組頭に報告しよう。先に地侍に絡まれた件だけを耳にしたら激怒に違いない。
(き、機嫌が良いですね…どうしました?)
(ん?ナマエくんが失礼な物言いされたのに取り乱さず、後の先で見事に返り討ちにしたと尊奈門から聞いてね)
(あぁ……ここでは浮気は咎められないって聞きました)
(なぁに、不安になっちゃったの?)
(既婚者だったんですよ…!なのに簡単に声かけてきて……なんか、当たり前なんだって思ったらちょっと…)
(ふふふ、私はナマエくんだけだよ……あ、任務を除いてね。でもそういうときは必ず声かけるから。……内容によっては機密事項が高くて、知らせるのが後になっちゃうかもしれない……それだけは忘れないでいて。)
(………じゃあ、誤解してオレが泣いたりしても怒ったりしないでくださいね)
(もちろん……きちんと話をしようね…何、どこへ行くの。今いいところだったのに)
(み、水…)
(あとででいいでしょ……顔見せて?)
(近い…)
(口吸いするからね、ほら口あけて)