Alien
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早いものでもう一年とすこし。…雄英入試に向けて、相澤消太って人と同居してからだ。
そして分かったこと、できるようになったことがいくつかある。
うん、今日実は入試日だからど忘れしないように念じてるの。できるようになったって言ったって、そもそも使い慣れてない個性プラスで付け焼き刃みたいもんだから。おさらいってやつね。
・右手の止める個性は対象に触らなくてもよくなった
・左手の治癒はリスクがあることが判明
・逆転の法則で止める以外もできた
・反動かなんかでダメージ2倍のハンデついた
対象に触れてる空気に触れるっていう考えしたらヌルッとOKだった。つまりわざわざ触りに行かなくても目の前の空気に触れてればいいということ。
格段に戦闘楽になった、と思う。
左手の治癒のリスク…直したらその怪我がほぼ丸々自分に返ってくるんだよね…
この間転んで大泣き、いやもうギャン泣きしてる子供がいて、居た堪れなくなって個性使ったら俺の膝が出血しだしてある意味でまた泣かせたっていう苦い経験から判明した。(その子より傷は結構軽くなってたけどね)
そもそも、対象に触れてる空気に触れてるからって考えでいけるなら、「止めるっていう概念を止められんじゃね?」って
暇の極みから編み出した考えで蛇口をひねって、水を出してその水を止める→その「止める概念を止めよう」ってやったら、蛇口を戻しても水が流れるっていう奇跡が起きたんだ。本当奇跡。すごかった。
哲学の世界すぎて、自分でも意味がわからなくなる時がある。
ダメージ2倍は相手にだったらよかったんだけど、全然自分自身に対してだ。だからデコピンがグーパンチみたいな痛さに早変わり。
だから相澤消太っていうオッサンと体術やってて投げ飛ばされると、うまく受け身とってもうまくできなくても痛くてしばらく動けなかったりするのだ。なんで不便なんだろうと思う。
自分のことを治癒できないのかなって思ってやってみたけど、他人にやるより効果出るのが遅くなる。なるべくケガしないようにしないと、痛すぎて動けなくなるっていう結末が待ってる。
あ!!あの特徴的な頭は!!
「出久くん!」
「!くましろくん!」
わーわーとハグする。第一受験者発見が出久くんなんて、なんか嬉しいなあ。
約束した通り連絡先を交換しておく。
「今日、頑張ろうね!」
「うん!」
ああ、癒し…もしも弟ができたらこんな気分なんだろうな…。
会場に入ってなぜか1番最初に見つけたのが、この間街を破壊してた敵のような理不尽なアイツ。目合わせないようにしないと…いや、さすがに受験会場だし攻撃してこないよね。
ていうか、あれ完全に理不尽の極みだし俺悪くないよね??
普通に道を歩いてて視界に入るなって攻撃されるって何?ヤクザもびっくりだよ。
プレゼントマイクの1人だけテンション高めの説明を聞きながらぼけーっとする。ロボット戦かぁ…。
キッツイなぁ、痛みに耐えつつ、ポイントを的確に積み重ねてかないと…死ぬな。
会場は一人一人連番でも違うらしく、俺は…Bだった。スタッフに連れられ、会場へと向かう。
漠然と小さい頃からヒーローになりたい、と思ってた「だけ」なんだなと感じる。こんなに校舎や学校の敷地自体が大きいなんて、今日ここにきて初めて分かった。まあ施設紹介も限られたところしか載せないだろうけど…色んな状況下に合わせて訓練できる施設がてんこ盛り、っていうのもパンフレット読んで分かったことだし。
さすがに雄英にも普通学科があるのは知ってたけど、漠然と夢見てるだけで調べたり最悪雄英ナシでもヒーローになるためになにか行動してた訳じゃない。子どもの中の子どもだったな…と反省する。とりあえず入試終わったら、相澤さんにもう一回お礼言おう。
会場についてマラソンのスタート地点みたいに色んな人が群がる中、真っ先に見つけた。
「あ、出久くん!Bだったんだね」
「あ、う、うん…」
すっかり顔が青白い。誰がどうみても緊張してる。
「…緊張してる…よね?大丈夫だよ、落ち着いて!出久くんはたくさん努力してきたんでしょ?それこそ、倒れちゃうくらい。それに面接じゃないんだから、上手く見せようとか思わなくていいんだし」
「ゔっ、ま、まぁ…そうだけど…」
プレゼントマイクの説明受けてる人数だけでも倍率は相当なもの、って分かるもんなあ。緊張してないわけではない。自分を鼓舞して言い聞かせてるんだ。
「いままで血反吐もゲロも吐いてきた自分を信じてやれなくて、いったい誰を信じるのさ!」
「!…そ、そうだ『START!!!』??」
なんと、もう試験は始まったらしい。出遅れた、普通に。
「急がないと!じゃあ、また後でね出久くん!」
急いでばらける。比較的大きいロボットの説明図だったし、ビル街みたいな場所だけど頭がはみ出てよく見える。
遠隔射撃をするスナイパーみたいな気持ちで止めて倒していく。今何ポイントだっけ…45…?くらいだったか?なんて適当なんだろう。
受け身とかまだうまくできない時があるから、遠隔、または一発触発を目標に集中してたら数えるのを忘れていた。
「っやべ、」
足を庇って座り込んでいる人の元に、大きく腕を振りかぶったロボットが見えた。焦って某サイヤ人みたいなポーズをしちゃったけど無事止まった……よかった!焦ったのにロボット単体を止めることができてて一安心。
制御もコントロールも、できてる。対面でも、ヒーローじゃない人が周りにいても大丈夫、大丈夫…。言い聞かせるようにして自分を落ち着かせる。
「…あれ??」
いきなりスイッチオフになったロボットに呆然としてる男の子に手を差し出す。
「大丈夫?ロボットは止めたよ…立てる?」
「おぉ!わざわざありがとうな!」
いいよ!と返事。ポイントはもらいますので。
同じ個性慣れてない組の出久くん、大丈夫かな。
とりあえず中央の方に向かうか、と方向転換した瞬間。
「なんだあれ!?」「あれヤバいだろ!」「狙われないうちに逃げなきゃ!」
その声と視線をもとに見上げる。
「わ、なんだあれ」
説明聞いてなかったからかもしれない。今度からちゃんと人の話聞かないと。聞いてます知ってますよみたいな顔して皆が逃げる中、とりあえず無駄な体力使うのは愚策と逃げようとした時嫌な光景が視界に映る。
瓦礫に足を挟まれた子と、1人立ち向かう出久くんの姿がスローモーションのように見えた。
「出久くん!!!…と誰か!!」
皆とは反対方向に走り出す。1人高く飛び上がって向かっていった出久くんのパンチがヒットしたのか、バゴォン!!!と重たい一撃が聞こえた。
せっかく出久くんのポイントにもなるし、囮のようになってくれたんだ、彼の勇気を無駄にするわけにはいかない。
最大限の力を「止めず」に女の子の足に乗っかってた石を砕き割る。出久くんほどマッスルなわけではない俺の腕で叩き割れるかすごい不安だったけど、オールマイトのパンチをイメージしたら上手くいった。本番に強くて助かる…でも多分、指があらぬ方向に曲がってるから折れてるなあコレ…。
「!あ、ありが「っぐぁぁあああぁぁぁ!!!!」大丈夫!!?」
折れてる、と認識した途端に痛みがやってくる。いやもうまじショック死しそう、痛くて涙がぼろぼろ出るが頷いて大丈夫、と返事をする。自分の痛みに悶えてる場合じゃない、そのまま上を見やる。
出久くん、足と手すごい方向に…あれも絶対折れてる。ていうか着地できんのか!?最大限の1発を放ったのか?それじゃあ、着地の余力は残ってないはず、ていうかそもそも片足じゃこの高さは着地したら折れる!
ロボットを出久くんの稼いで動かなくしても、あの巨体がこちら側へ倒れてくるかもしれない二次被害の場合にこの子が出久くんを担いで動かせるとは思えない。俺も今は自分の体を動かすのに手一杯だ。
「ど、どうしよう、腕がみたことない色しとる…!」
アワアワして腕を見てくるその子に尋ねる。
「き、み…個性は?!」
「え?む、無重力!」
まるでシナリオがあるみたいだ。俺も、この子も、出久くんも、なんか大丈夫な気がしてきた。
「個性の説明は省くけど、俺は今すぐには使い物にならない。だから出久くんのこと、君の個性でなんとか頼む!」
左手で上を指差す。その子も上を向いて目をひん剥く。そりゃ驚くよね、人が落下してきてんだもん。
「…友達、なんだ…」
急に頭を殴られたかのように目の前が揺れて、そこで意識が途切れた。
「…え、と?」
誰だ、このおばさんは…ナース服みたいな白衣を着てる。そしてここはどこ?なんか保健室みたいな匂いがする…
「…試験は!??!!」
ガバ!とつい起き上がるとぺしん!とおでこを叩かれた。痛い。
「コラ!急に起き上がるんじゃないよ!…全く無茶をして!!!治癒の個性全く使いこなせてないじゃないか!」
連鎖ですごい怒られた。でも、自分に使ったって治癒するの遅いんだもん。
この人はリカバリーガールというらしい。たいていの怪我は治しちゃうらしく…すごい。治される人の体力を活性化?させるみたいなウンタラカンタラ。(寝起きでぼーっとしてた)
とりあえずそのまま家に帰される。もちろん、相澤消太の家、というか部屋に帰る。
玄関まで来て、もう見慣れたなにもない部屋を見てどっと疲れが押し寄せる。自分の家くらい、安心できる場所に帰ってきた安心感がある。
「あ〜〜……づっかれた…」
スマホ確認タイム。オイ、既読ついてんじゃねーか返事しやがれってんだ相澤消太…!
ぐっ、と、悪態をつきたくなったが我慢。泊まり込みらしいし今は受験シーズンだからな…学校の先生も大変だよな。普段の中間とか期末テストでさえ自分の学校の先生たちもせかせかしたり、丸付けとか点数ミスったりするのに何千人の採点とかだもんな…。作業多いから手分けして合格書類の作成とかもきっとあるだろうし。
…そういやどこの学校の先生なんだっけ?言ってたっけな?いや、聞いてないはず。なんの科目の先生なんだろう…なんとなく、現文か現代史っぽいけど。
もう今日はメシはいいや、とりあえず寝よう。
(あ、そうだ出久くんに…LINE…)
(今日は、お疲れさま)
(お互い満身創痍だね)
(出久くんも体休めてゆっくりして)
(合否判定待ちがんばろう)