Alien
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意を決して登校。マスコミがわんさかいる。目当てはステイン殺しの被害者生徒の4人のうち、ひとりのオレ。
すごい遠くからでも「来たぞ!」「神代さんトコの息子だ!」って聞こえた。なんか指名手配犯の気分だよ。
「神代くんよね?!ちょっとお話いいかしら!?」
すごい圧だ…。ずっとここで出待ちしてるのか…マスコミも大変なんだな。
「遅れない程度であれば…」
「えぇ勿論!今回、職場体験先でヒーロー殺しと対峙したって聞いたけど、どうでした?!」
生徒だけで無茶をしたっていうのは一部の間での暗黙の事実。公表してるのはエンデヴァーが倒して、居合わせて助力してたオレらが怪我したってこと。
「……強かった、です」
言葉を選んで言うとフラッシュが焚かれる。眩しくてびっくりした。
「何か言ってた?!」
「……オレらは贋物で、ステインを殺していいのはオールマイトだけだ、って言ってました。」
次、次こっち!と呼びかけられる。
「君、神代さんのとこの息子さんだよね!?お母さんについて聞いてもいいかな?」
狐のような顔の人が前に出てくる。
「…分かる範囲であれば、答えます。」
釘刺しておく。嫌な目をしてるな…。
「ありがとう。では早速…!13年前、かな?君が2、3歳の頃、列車の立て篭もり事件があってね。
その時の被害者がなんと君と、君のお父さんだったそうじゃないか。だけど"死神"が最後まで救けようと声を呼んでいたのは父親の方で…。
…どうして君の名前は呼ばれなかったの?」
ヒュ、と喉が締まる。なんで知ってるの、警察やマスコミが来たのも母さんがボッコボコにしたあとだ。
そのやり取りは、間近に乗り合わせてた人しか知らないはず…
「…おぼ、えてないです、」
「…そんな顔を青くして、いかにも心当たりありますって顔で?冗談よしてよ〜!
…で?家ではどんなお母さんなの?」
何、この人…。
「いや、あの…時間ないんでしつれ、「待って、まだ授業開始まで20分以上あるよね?」…」
逃げようとしても手を掴まれる。さっきインタビューしてた人を始めとして周りのマスコミがざわざわしだす。
「…良くも悪くも、外で見せてるあの感じですよ」
「ふぅ〜ん……俺ずっとあの人のこと追ってるから分かるんたけど、
あの人なかなか家帰らないよね!で、研究職のお父さんは単身赴任。いつも家には君だけだ。」
目を見る。全部見透かされてるような、目をしている。
もしかして、やたらとすれ違うなと思ってた近所に住んでる人この人だった…?顔を思い出そうとするけど、ぼやけている。
「それが去年…くらいから全く灯りがつかなくなってね。人気がないんだ、あの家。
……君さあ、今誰のとこに暮らしてるの?」
鳥肌がすごい立つ、目つきがマジだ。
「ちょっと、それは個人情報に反するんじゃ…?」
他のマスコミの人が制しても聞く耳を持たないその人。後ずさろうとすると右手を引っ張られる。
「教えてよ、くましろくん。」
この人がずっと追ってるの、母さんじゃない。オレだ。
「……今、…母さんとは住んでません。理由はお話できません。個人的なことなので。
どこに住んでるかもお話できません。厚意でお世話になっているので。
母さんにも、お世話になってる先にも、学校にもこのことは話して了承をもらっています。」
思った反応と答えがもらえなかった狐顔の人の表情が明らかに歪んでいく。
「……俺さあ、ずっと待ってる訳。なんで帰ってこないの?って聞いてんの。」
あ、やばいかも。近くにいるマスコミの人の肩をそーっと押して避難を促す。
マスコミに扮したストーカー、でいいよね?
「なんで俺のとこに来てくんねえの!??!」
学校の目の前であっても、個性の発動は原則禁止。ヒーロー科の生徒であっても。
スライムのようにドロドロになったその人から皆が一斉に逃げてく。早っ!逃げ慣れているなと感心してると、腰抜かしたカメラマンの人がいる。
ええ、抱えられるかな…。米俵を持つイメージで抱えてなるべく入口に向かって逃げる。
「…っ先生、助けて!」
コンクリートを溶かしている毒性のあるスライム個性を持つ彼がオレ目掛けて凄いスピードで来る。
「…止まれ!敵として対処すんぞ!」
相澤さんとセメントス先生が間に立ってくれる。
体格大きくて抱えきれなかったせいで、つま先がズルズルしてたカメラマンの人に謝る。
「すみません、パワーなくて…つま先大丈夫ですか?」
「い、いい!平気!助かったよ…ありがとう、あいつ知り合い?」
このことはお礼として記事に書くから!と言われた。別にいいけどな…。抱えて逃げただけだし…
「…ん〜……でも見覚えあるような…あ、セメントス先生!そいつコンクリ溶かします!」
「相澤先生、せめて足場に!」
相澤さんとセメントス先生のお陰であっという間に捕まる。
個性発動しないように特製の手錠かけられたあともずっとオレを見て暴れてた。
「…なんで呼ばねえんだ」
相澤さんがずっと怒ってる。
「タイミング分からなくて、ミスりました…すみません、穏便に済めばと思って答えた質問で逆上させたし…」
「無自覚天然人たらしのモテ男、自覚したか?…完全にお前を狙ってたぞ」
ぐうの音も出ない。
「……怖かったです、最初で最後の旅行のことも知ってて…」
「典型的なストーカーだな…塚内さんに絞るように言っておく。…泣くな、平気だったろ。」
家まで知られてる、というと黙る相澤さん。
「…神代さんにもこの件は伝えておく。盗聴器とか仕掛けてるだろうし父親の方にまで被害いくかもしれねえしな…。
セメントスさん、甘やかさないでくださいよ」
そっと大福を差し出してたセメントス先生を見つけて相澤さんがため息ついてる。
「…しばらくの間、登下校はたいとに言って見た目変えてもらえ。んで…家は引っ越す、念の為な。」
しょげる前にしょげんなよと釘を差された。
「…どこまで知られてるんだろう、って思うよね」
セメントス先生に言われるので頷く。
「居場所が知られても相澤先生の提案通り、変えればいい。
ここにはプロヒーローがいるから、危なかったら最終的にはここに帰ってくればいい。
家庭内のことは、君がうんと言わなければ裏付けされないただの噂だ。君の考えてることも、表に出さなきゃ奴らには分からない。」
だから、大丈夫だよと言われる。
クラスに向かうと、皆それぞれ自分の職場体験先の話で盛り上がってた。
「へえ~~敵退治までやったんだ!うらやましいなあ!
あ、おはよ〜くましろちゃん!」
結構な勢いで抱きついてくる芦戸ちゃん。ゲフッとか言っちゃったよ。
「お、おはよう…」
なんか元気ないね〜?と言われるので元気だよ、と返す。
「避難誘導とか後方支援で実際交戦はしなかったけどね、おはよう、くましろ。
怪我大丈夫?腹切られたって聞いたけど…」
耳郎ちゃんも心配してくれた。
「それでもすごいよー!」
「うん大丈夫、ありがとう」
芦戸さんとオレの返事が被る。
「私もトレーニングとパトロールばかりだったわ、一度隣国からの密航者を捕らえたくらい。
ケロ、意識不明って聞いてとても心配だったわ」
「ありがと、蛙吹さん。」
峰田くんが凄まじい視線を浴びせてきてるけど芦戸さんに抱きつかれてる側だからな、オレは。
「お茶子ちゃんはどうだったの?この1週間」
梅雨ちゃんがお茶子ちゃんに話を振る。
「とても…有意義だったよ」
なんかカンフーの型みたいなポーズを取っているお茶子ちゃん。何があったんだろう…。
コオォォォォとか聞こえる気がする。
「目覚めたのね、お茶子ちゃん。」
何に???
「バトルヒーローのとこ行ったんだっけ」
「よかった、エンデヴァーさんのとこで…」
同じく訓練とかばっかりだったけど、目覚めるカンフーとか叩き込まれなくてよかった。
バトルヒーロー候補に入れてたから…。
「ま、1番変化というか大変だったのは…お前ら四人だな!」
「そうそう、ヒーロー殺し!!」
「…心配しましたわ、お腹の怪我はもう大丈夫ですの?」
「ヤオモモ~、ありがとう!!もう塞がったよ」
「命あって何よりだぜ、マジでさ、エンデヴァーが救けてくれたんだってな!さすがNo.2だぜ!」
「そうだな…救けられた」
そう轟くんがいうと出久くんもうん、と頷く。
四人とそれぞれ担当のプロヒーローとか相澤さんしか知らない事実だ。
「俺ニュースとか見たけどさ、ヒーロー殺し、敵連合ともつながってたんだろ?
もしあんな恐ろしい奴がUSJ来てたらと思うとゾッとするよ」
オレが恐れていた連鎖が始まりつつある。やっぱりそう見るよね、あの2つの繋がりは…
敵連合もこれから厄介になりそうだ。
「でもさぁー確かに怖えけどさ、尾白動画見た?アレ見ると一本気っつーか執念っつーか、かっこよくね?とか思っちゃわね?」
悪気はないだろうけど家族が被害にあった飯田くんの前でそれは、不謹慎ではないか。
「上鳴くん、」
「上鳴くん…!」
出久くんとほぼタイミングが被る。
「え?あっ、飯…ワリ!」
悪気はないのは皆、分かってるだろうけど。
「いや…いいさ。確かに信念の男ではあった…。クールだと思う人がいるのも分かる。」
時計を見ながらそう答える飯田くん。
「ただ奴は信念の果てに"粛清"という手段を選んだ。どんな考えを持とうとも、そこだけは間違いなんだ。
俺のような者をもうこれ以上出さぬ為にも!!改めてヒーローの道を俺は歩む!!!」
ビシィ!!と右手を振り下ろす飯田くん。かっこいいなあ。
弱っていた姿を知ってるからこそ、今の姿を見て安心する。
「さァそろそろ始業だ、席につきたまえ!!!」
あ、その確認してたんだ。抜かりない。
「五月蝿い…」
常闇くんがそう言うものだからつい笑ってしまう。
「なんか…すいませんでした」
しょんぼりしてる上鳴くんをみてやっぱりいい子なんだなと思う。肩をさすっておく。
チャイムと共にさっきより険しい顔の相澤さんが入ってきた。
「お早う、さっさと席に着け。臨時の知らせがある。…今朝神代がマスコミに乗じた敵に襲撃された」
「襲撃!???!」
ヒーロー殺しの直後なのもあってか、皆オレを見る。
「敵連合とは関連ない。個人への想いをこじらせたストーカーだ。しかも10年以上も近所に住んでたみたいでな…」
「10年!?オイお前狙われすぎだろ…大丈夫かよ?!」
切島くんに言われるので頷く。
「相澤先生が守ってくれたよ、超かっこよかった」
(体育祭といい、職場体験といいお前らは確実に人目とメディアに晒されてる)
(次は自分だと思って学外でも気を抜くなよ)
(ただし…USJやヒーロー殺しの時は特例だ、原則個性の使用は禁止。資格がない今、プロヒーローに頼るしかないのが現状だ。そこ忘れんなよ)