Alien
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目が覚めて、まず医者からめっちゃ怒られた。
「君、無茶をしすぎだ!血をこんなに流して…クラクラした時点で下がりなさい!」
すみません…と答える。
傷自体はそこまで深くないし、臓器にも届いてない。ただ、傷口が横真一文字で広いせいでオレが思ってたよりも、結構な血が流れていたらしい。
あんなに大きな刀で斬られて、臓器にも届いてない。つまり明らかな手加減。
手加減されて、4人の子供が勝った…。4人がかりで、やっと。
警察への応対の関係も含めて、4人全員同じ病室だった。…だったのは良かったんだけど、隣の轟くんの目がすごい怖い。
今日一日はとにかく安静にしてろ、と言われ起き上がるだけで怒られる。
「うう、グミが食べたい…」
「お菓子ばっかり食べてはいけないぞ!」
もう嫌だこの病室…!相澤さんより細かいオカンが居るんだもの、ピーマン残すなってめっちゃ怒られたし、怒る人しかいない。
「冷静に考えると…凄いことしちゃったね」
「そうだな」
「あんな最後見せられたら、生きてるのが奇跡だって…思っちゃうね。
僕の脚、これ多分…殺そうと思えば殺せてたと思うんだ」
「ああ、俺らはあからさまに生かされた。…あんだけ殺意向けられて尚立ち向かったお前はすげえよ。救けに来たつもりが逆に救けられた、わりィな。」
やっぱり、思うよね。
「…なんかさ、漠然とヒーローになりたいって思ってた頃より、入学してずっと生きるか死ぬかのギリギリにいて、正直…いつか誰かを失いそうで怖くもあるんだ。
皆が生きててよかった」
そう言うと、皆思うところがあるみたいでぐ、と押し黙る。
「…飯田くん、実は場所を特定する為に、耳のその…限界値を止めずに…スピーカーみたいに周りの音拾ってたから、
聞こえちゃったんだけど…お兄さんのこと。」
「!」
「…あのとき、偉そうに知ったような口聞いてごめん…」
「泣き出したな」
「きっと長いね…」
風物詩みたいな扱いをされたので、轟くんと出久くんを睨んでおく。
「な、何を言うんだくましろくん…君は何も間違ってなどいない!俺の方こそ、すまなかった…。
君は再三忠告してくれていたのに、俺は目先のことに捉われてしまった。…でも、くましろくんや轟くん、緑谷くんの言葉が俺を動かしてくれたんだ、感謝している」
もし、相澤さんが亡くなってしまったら。個性を使えないほどの大怪我をして、二度とヒーロー活動できなくなってしまったら。昏睡状態に陥って、目を覚まさなかったら。
いろんなことを考えた。そんな状況に、彼はいたのだ。
「……なぜ更に泣くんだ!?」
「泣き虫なんだよ、こいつ」
轟くんが雑に顔をタオルで拭き回してくる。痛いって、!
「轟くん痛いし!!!」
「撤回する、情緒不安定だ」
「不安定じゃないよやめて!!!」
面白がってる轟くんのお腹に頭をドリルのように突っ込む。ゔ、て呻き声が聞こえた。
「おおォ、起きて早々煩わしいな怪我人共!」
「グラントリノ!」
「マニュアルさん…!」
プロヒーロー達だ。会釈する。上半身だけ轟くんに手伝って起こしてもらう。いてて…!縫ったところが痛い。
「すごい…ぐちぐち言いたい…が。その前に来客だぜ」
まさか、相澤さん…!?いつでも逃げれるように立とうとしたらお前は立つな、と言わんばかりに轟くんが肩に手を置く。
見上げるとすごい顔してた。立ちません、怖いから。
「保須警察署署長の面構犬嗣さんだ」
「面構!!署…署長!!?」
署長って、結構偉い人じゃないの…?ヤバ……。
「掛けたままで結構だワン」
「ワン…!!!!」
「共鳴するなよ」
「待って轟くん、どういうこと表出る?」
何ニヤついてんの!
「こらこら、喧嘩は良くないワン。」
そんなんありかよ…いや、その顔でニャーとか言われた際には常識という言葉はこの世から消え去るけども…
「君たちがヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒だワンね」
ダメだワンワン言われすぎて笑いそうになってしまう。無、無、無の心…修行を思い出せ…話に集中!
「ヒーロー殺しだが…火傷に骨折となかなかの重傷で現在治療中だワン」
「逆に火傷で済んだんだ…あんなに轟くんに直で燃やされてたのに…」
「当たり前だ、加減くらいする」
加減してたの!?あれで?!??
「加減してあの火力ってもう、、、加減って言葉知ってる?」
炙るとかじゃないレベル。なんかもう、普通に焼いてたよ。こんがり焼けました~とか言えそうなくらいボッ…ていうかゴォッて。
「超常黎明期…警察は統率と規格を重要視し、"個性"を"武"に用いない事とした。そしてヒーローはその"穴"を埋める形で台頭してきた職だワン。
個人の武力行使…容易に人を殺められる力。本来なら、糾弾されて然るべきこれらが公に認められているのは、先人たちがモラルやルールをしっかり遵守してきたからなんだワン。」
鋭い目で見られてゾクゾク、と背筋が凍る。
容易に人を殺められる力、ヒーローである限りこれは言われること、大丈夫、オレだけじゃないから、落ち着け。ふう…と静かに息を吐く。
「資格未取得者が保護管理者の指示なく"個性"で危害を加えたこと、たとえ相手がヒーロー殺しであろうとも、これは立派な規則違反だワン。
君たち三名及びプロヒーロー、エンデヴァー、マニュアル、グラントリノ、この六名には厳正な処分が下されなければならない。」
「……は?何それ…」
「くましろくん、」
「…じゃあその規則通りに言葉を並べるなら…ネイティヴさんも、友だちの飯田くんも…資格ないから動かずに目の前で見殺すべきだった、…てこと?」
出久くんの顔がひきつるのが見えた。もしかして怖い顔してただろうか。
「そん通りだ、飯田が動いてなきゃネイティヴさんが殺されてた。緑谷とくましろが来なけりゃ二人は殺されてた。
くましろ以外、ヒーロー殺しの出現に気付いてなかったんですよ」
立場的に、規則を厳重に守らなくてはいけない・取りしまらなくてはならないのは勿論分かるけど…
「結果オーライであれば規則などウヤムヤで良いと?」
「マニュアル通りじゃ対処できない事態もあるでしょう」
「人をっ……救けるのがヒーローの仕事だろ」
掴みかかりそうな轟くんをちょちょちょ、と出久くんが必死に止めている。
「だから…君らは"卵"だ、まったく…」
カチン。
「…何です、ヒヨッコだったら大人の話に口挟むなって?」
「くましろくん!怖い顔しないで!!」
「…くましろくん。君等が来てくれて俺は…命を助けてもらったが、ルール違反はルール違反だ。それは…その結果は、変えられないだろう。残ったものだけを見れば、俺たちが違反者だ」
「……なに、飯田くんまで規則を守って見殺しにしてればよかった、って言いたいの!?悪いのはどう考えたって通り魔で何人も殺して怪我させたステインじゃん!」
「おい、そうカッカすんな!傷口開くだろ」
マニュアルさんに止められる。
「良い教育をしてるワンね…雄英も…エンデヴァーも…」
「この犬…」
犬!!!!犬呼ばわりした!!!轟くんが犬呼ばわりしてびっくりして振り返る。
「轟もカッカするな…。話は最後まで聞け」
「もう目の前で見てるだけなんて嫌だから…」
「!な、泣かないでくれくましろくん!!俺はこうして生きているぞ!」
飯田くんがハンカチをくれるのでもらう。最後まで、とは…
「以上がーー…警察としての意見。で、処分云々はあくまで公表すればの話だワン。
公表すれば世論は君らを褒め称えるだろうが処罰はまぬがれない。
一方で…汚い話、公表しない場合。ヒーロー殺しの火傷跡から、エンデヴァーを功労者として擁立してしまえるワン。
幸い目撃者は極めて限られている。この違反はここで握り潰せるんだワン。
だが君たちの英断と功績も誰にも知られることはない。
どっちがいい!?一人の人間としては…、前途ある若者の"偉大なる過ち"にケチをつけさせたくないんだワン!?」
「……事件とかもみ消すの、マジであるんだ…」
ドラマの中だけかと思ってた。
「まァ、どの道監督不行届きで俺らは責任取らないとだしな…」
マニュアルさんが泣いている。
「申し訳ございません…」
深々と45度に頭をさげる飯田くん。
「よし!他人に迷惑かかる!わかったら二度とするなよ!!」
みんなで頭をさげる。
「よろしく…お願いします」
「大人のズルで君たちが受けていたであろう称賛の声はなくなってしまうが…、せめて共に平和を守る人間として…ありがとう!」
面構さんも深々と頭を下げる。
(それと、君。)
(??)
(泣かせてしまい申し訳ない、友人が無事でよかったワン)
(いえ……すみません、生意気で)
(!…ふっ、あっはっはっ!…確かに久々にこんな生意気な生徒を見たワン)
(なんか複雑だな…)