Alien
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「…ハッ!」
体が水面に向かって急浮上する感覚で起きる。…寝てた…?
「起きたか」
起き上がろうとして轟くんが肩を支えてくれる。
「え!?…待って今何時?」
「5時だ」
2時間も寝てた…?
「……もしかして、もう訓練終わっちゃった?」
「いや、まだやってる。けどくましろと俺は体を休めろって言われた」
「そんなあぁ~…」
ちょっとしかやれてないのに、、、
「ストレッチしとけだとよ。…あと、お前。すごい魘されてたぞ。親父も引くくらい」
情報が多すぎて脳が追いつかない。
「…な、なんか言ってたり…してない…?」
「……母親呼んでた、…言いづれえなら無理に聞かねえが、昔手ェあげられたりしたのか?」
…もしかして、心配してくれてる?そんなに酷く魘されていたんだろうか。いや、家でも相澤さんが有無を言わさず一緒に寝て監視するようになったくらいだしな…
家でも、酷かったのかもしれない。
「……なんて、言えばいいのかな…あ!虐待とかじゃないよ!?それは断じて受けてない。
父さんはともかく、…オレと母さんって親子感薄いんだ。血は繋がってるけど、遠い親戚みたいな距離感って言えば伝わる…かな」
「あぁ」
「父さんと母さんはすごく仲が良い。喧嘩してるのなんか見たことない。
父さんはやりたいことやらしてくれたほうだし、母さんも茶々入れては来なかった。…将来ヒーローになりたいって言うまでは」
「プレゼント・マイクとか、オールマイトとか…相澤先生とか…母さんを知ってる人は皆、あの人はあの人なりに子であるオレのことを考えてはいるよって言うんだけど
オレは……感じたことないっていうか…近づこうとすれば離れてくみたいな距離感で、」
「…くましろ、無理すんな」
ティッシュを渡される。
「ごめん、…大丈夫」
「嘘下手だな」
バッサリと言い放つ轟くん。
「……どうしたらいいか分からない、顔見て話し合ったほうがいいとか今更何を話すの?」
「誰に、言われたんだよそれ」
「………相澤先生」
「…くましろ、相澤先生の忠犬だからって何でも言うこと聞いてんなよ。いつか潰れるぞ」
忠犬…と呟くと忠犬以外の表現ないぞと言われた。
「先生のことだ、良かれと思ってのアドバイスだと思うがお前にはお前のペースがある
お前の母親にもお前の母親なりのペースが、たぶんある。
……顔見たとき、頭の中がざわつかなくなるまで離れていいと思う。…俺はな」
「…轟くん、」
「考えが鈍って動けなくなるくらいなら今は頭から捨て置けとけ、命取りになる。
別にプロヒーローになってからわだかまりを消したっていいだろ。なんなら死ぬ間際でもいい……そのタイミングだけは、誰にも決めさせるな。くましろが決めろ」
頷く。
「…ごめんね、ありがと」
「いい。謝るようなことねえだろ」
優しさが沁みる。
「俺の…持論だが」
轟くんが言いにくそうに口を開く。なんだろ、?
「家庭や親子関係がうまくいかねえ原因って、大抵俺ら側の問題じゃなくて大人側の何かしらの理由で起きてると思ってる。
だからお前も俺も、悪くない。何かしてやる必要はない。尻拭いはテメェでやれって思っていい」
お前も俺も、が耳に残る。
「…うん、お節介すぎたね」
ありがとう、と言うと轟くんがきょとんとしてた。
エンデヴァーさんと轟くんの不和の原因は、1から10までは分からない。
轟くんも、オレと母さんの仲違いの原因までは分からないだろう。
それでも、同じような苦しみを抱えているものとして共有してくれたんだと思う。
自分の心を開示するって、簡単なようで難しい。
気持ち切り替えて受け身の練習だけでも、と轟くんに頼み込んでるところをエンデヴァーさんに見つかり
ガチでこっぴどく怒られた。(休む重要性を軽んじるな!てひたすら…)
しょんぼりしながら風呂入って、ご飯食べてストレッチ。
エンデヴァーさんに伸ばされるまえの記憶を必死に手繰り寄せて、反省ノートを書いていると着信。
画面を見るとダーリン。轟くんに会話を聞かれるわけにいかないので廊下を出てとりあえず左に曲がって部屋から離れる。
「も、もしもし…?どうしました?」
『エンデヴァーさんから、電話もらってな』
え、受け身の練習轟くんに頼み込んだから!?!相澤さんにまでチクったの!??そんなやらかしレベルなの??!
「…時間もったいないって思って、せめて受け身だけでもって思って…」
『…ソレじゃねえ。…魘されてるとき、お前…なんて言ってたか聞いたか?』
「いや…轟くんからは母さんのこと呼んでたとしか…」
『…そうか。…殺してやるって言ってたと連絡受けた』
驚きすぎて何も言えなかった。
「そ、んなこと思ったこと、」
『分かってるよ、誰もそれを責めるつもりなんかない。』
「そんなのまるで敵み、『それ以上言うな』…っ、」
『自分に向かってそんな事言うな、天地がひっくり返ってもだ』
ポロ、と涙がこぼれる。情緒が不安定すぎて嫌になる。
「……なんで、あんなのがオレの母親なんですか」
『くましろ、』
「血だけ繋がってる他所の子みたいな扱いするくせに、なんで子どもなんて産んだんですか、あの人は…!」
『おい、くましろっ』
焦ったような相澤さんの声が聞こえる。
エンデヴァーさんにも、相澤さんにも、轟くんにも。皆に気を遣わせて迷惑かけて、バカみたい。
「こんな、思いするなら…「くましろ」…轟く、」
電話を取り上げられ、切られる。それを呆然と見てると、轟くんが両手を握ってくる。
「……気の利いた言葉かけてやれねえ、…悪い。」
「いい、気…遣わないで」
「…?遣ってねえが…」
…遣ってないんだ。あまりにも当たり前ですが?みたいな顔してるので、思わず吹き出してしまう。
「……周りに八つ当たりとかほんと最悪…しょげる…」
「しょげんな。八つ当たりする相手もいなかったんだろ」
まあ、そうだけど…される側はたまったもんじゃないでしょ。
「それに、こんくらいで根を上げるような人じゃねえだろ、相澤先生は」
「……えっ??!」
びっくりしすぎて涙が止まる。
「電話、相澤先生だろ」
バレてる、
「なんで知ってるの…?」
びっくりしすぎたのと、この先の相澤さんの雇用問題が怖すぎて声が震えてしまった。轟くんは声震えすぎだろお前、と笑いながらくましろの顔つきだよと答える。
(かお…?)
(あぁ、あんな安心した表情クラスで見たことないからな。
さっきの話じゃ父親とも疎遠ぽかったし、お前が敬語を使ってあんなに安心した表情見せるの先生くらいしかいねえだろ)
(……皆には言わないで)
(言うつもりねえよ…大方どっちも機能してねえから保護とかだろ)
(…すごいね、そんなとこまで分かるんだ…)
(分かりやすいんだよ、お前)