もう11時か…朝からバタバタだったけど、移動時間を差し引いても訓練の時間のほうが多かった。


雄英にいるときは座学も勿論あるから、1日訓練漬けなんてそれこそ受験前の特訓の1年間以来だった。
やっぱり実技楽しい、実演は難しくて面白い。自分の体が思うように動くの楽しい。


轟くんと同じ部屋なので、敷布団を横にぴったりつける。


「こんな広い部屋なのに、そんなくっついて寝るのか？」
あ…やべ。いつも相澤さんとなんだかんだひっついて寝てるからクセで…。
入学前、ダブルサイズのベッドを思い切って購入してた相澤さん。寝袋をオレに強奪されすぎて、嫌気が差したのかと思いきやベッドの上で寝袋に入って寝てるときもある。
最近になって教えてくれたんだけどまだ中学生の特訓漬けの時、オレは度々魘されていたらしい。
最初相澤さんはリビングで離れて寝てたんだけど、それでも聞こえてくるくらい魘されてる日が多すぎて心配させてしまったらしく、ほぼ監視の域で当たり前に一緒に寝てた。
後半は個性強化による、と断定している神経作用の影響で自律神経がちょっとイカれて起きれなくなってしまって、朝起こしてくれるためっていうのもある。


そうか…当たり前過ぎて今気づいたけど、普通は一人で寝るのか…。なんかめちゃくちゃ恥ずかしいな…。


「ごめん、几帳面でさ。なんか揃えたくなっちゃって」
まさか誰かと一緒に寝るの当たり前だから、とか言えなくてよく分かんない理由を並べる。
轟くんの天然でスルーされますように。


「そうか…変わってんなお前」
よし！！！もう変わってる判定でもなんでもいい！！！切り抜けられればもうなんだっていい！ヤケクソだ！
適当にごまかし、布団に寝転ぶ。あ、またクロッシーロードやってる。


「…あんま見られると集中できねえ」
じー、と画面を見てると轟くんにそう言われる。


「プレッシャーを与えてんの、オレの凄まじい記録を越さないように」


「…ちなみにスコアいくつだよ」


「ふっふっふっ、聞いて驚け10000点だ！！！！」


「………くましろ、お前絶対ズルしただろ。誰にやってもらったんだ」
ちょっと、失礼すぎない？まあ確かに相澤さんにやってもらったけど…


「轟くんて、オレに当たり強いよね。泣いちゃお」


「勝手にしとけ」


「……」
ムカついたのでうつ伏せになってゲームしてる轟くんの背中に顎を乗せる。ちょっとグリグリしながら。


「いて…背中に顎乗せんな。入学早々から泣いてばっかりのお前の嘘泣きとマジ泣きくらい、見分けがつく」
そんな2ヶ月弱で見分けつくほど皆の前で泣いてなくない！？？！


「…ちなみに何が違うの？」


「…………顔？」
ほんとに分かってる？てくらい間があったけど直感で判断してるんだな、きっと。分かってないじゃん、とツッコんだらおでこにデコピンされた。


「〜〜もぉおお、地味に痛いのやめてよ…！」
悪い。と全く悪いと思ってなさそうな顔で言われる。
フン。もういい、もう夜遅くなるし皆にLINEしよ。


「轟くんのせいで爆豪くんがイキイキし始めたじゃん」


「白目の写真よりマシだろ」
だからオレも白目にするって言ったじゃん！！！


「ごめんて。ツーショット撮ろうよ、キメキメの」


「……寝る直前の今キメれるのか？」


「でも昼間にキメてたらエンデヴァーさんに怒られるじゃん」
…確かに、って顔をする轟くん。


「……轟くん、ポーズも表情もその『無』って感じでいくの？？」


「……どんなポーズがいいんだ」
ピースとか、なんかあるじゃん…。


「え〜？じゃあ…片手でハートの半分つくって？……ハート分かる？」


「分かる」
分かってないよ何その手、丸に近い難解なハート作らないでよ。粘土をこねるように轟くんの右手を形成していく。


「その右手、右のほっぺにつけて？…そうそう、でなるべくカワイイ顔してね！」


「かわいい顔…？」
そんな難しいこと注文してないからね！！！
オレは対になるように左手で同じポーズをし、右手でスマホを持ち上げる。


「と、轟くん、顔、顔怖いって…ンフッ」
真顔でそのポーズしないでよ笑うから！！！！


「何笑ってんだ」
アンタの顔のせいです。


「ふっふっ、はは！！…は〜おもしろ、ほら撮るよ。」
少し表情が柔らかくなったのでキメキメにして撮る。お！いい感じじゃん！


「ねえ結構良くない？轟くんにも写真あげる」
さんきゅ、と返ってきたと思ったらこの写真さえクラスLINEに貼られる。なんで？？？？


「なんでそんなすぐ晒し上げみたいなことするの」


「イイもんだからつい…」
つい？？？見せびらかしたかったってこと？？
芦戸さんやお茶子ちゃんが「かわいい〜！」て返信くれた。


「相澤先生、嫉妬したりしてな」


「写真に？……え〜ないよ、こんな可愛いことやりたくないと思うよ」


「……いや、お前のお願いなら聞くと思う」
でも前速攻で却下されたんだよな…。


(さ、寝よ寝よ！あ、轟くん大事な質問なんだけど…)
(？)
(寝るとき電気つける派？真っ暗派？)
(どっちでもいい)
(よかった〜、オレ真っ暗じゃないと寝つき悪くて…消すね！)
(暗くしていいのか？…ここ結構出るぞ)
(無理死ぬ帰る)
(早…嘘に決まってんだろ)
(轟くんの嘘や冗談信じないから！！大人しくオレの抱き枕になって無理なんで離れるの)
(あちい…つーか力つよ…)
(観念して！)
(脅さなきゃよかった…寝るぞ)
(…そんな震えんなよ、冗談だって)