Alien
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*相澤消太
最近そこそこ広くて何もない静かな俺の部屋に、犬や赤ん坊より煩わしいガキが転がり込んできた。拾ったのもあるが、住んでいいからと拾ったわけではない。
名前は神代くましろ。プロヒーローの神代さんのトコの息子だ。
まああの人も破茶滅茶な性格で善人とは……かなり程遠い。むしろ敵寄りの活躍の仕方をしている。聞けば父親は研究職で単身赴任中で滅多に会えないそうだ。あの人の教育のもと過ごしてきたらまあ…こんなクソひねくれたガキが育っても仕方ないとは思う。
クソひねくれ過ぎてるガキ、くましろは先日俺に会う前に敵(だと確信している)奴に声をかけられ、なんと多少は心を許しているらしい。
くましろ曰く、「オールマイトの話をしてる時マジ怖かったけどそれ以外はかなりいい奴。オレを初めて受け入れてくれた」とのこと。
個性を聞けば治癒に止めるとなると…まあそりゃ嫌悪されるわな、とため息。触れるだけで対象を『止めて』しまう彼の個性は幼くてちょっとしたことで表れてしまう幼児期から今に至るまで、随分毛嫌いされてきたようだ。
治癒に至っては利用までされたとのこと。
『初めて受け入れて』というのが引っかかったが軽く今までの学生時代を話せば理由はわかる。信頼し、関係を広めたようなやつが1人といない。
最初から毛嫌いされて近寄られないか、興味本位で近寄ってくるかのどちらかだったようだ。
そんなくましろも、小さい頃から密かにヒーローに憧れていたらしい。…が、周りと絶対的信頼(に本来ならなくてはいけない)あの母親に完全否定されてから、憧れつつも現状比べられる自分の立場との差異の大きさに対して、比較元のヒーローと…社会構図全体に憎しみを持っている部分もある。
至極簡単に言えば、【いつ敵に寝返るか分からない予備軍】…という存在だ。
幼さも含め、うまいこと言いくるめられる可能性が高い。
話を聞いてほんの僅かな情も沸いた訳だ、今度大きくなって会ったら敵でした。なんて俺もコイツも悲しいだろうという理由と、捨て犬を拾うような感情のもと同棲している。俺も教師の端くれだ、目をかけた奴が敵になって戦うなんて起こってほしくない。
くましろ、やはり…話してみるとヒーローへの憧れが強ければ強いほど、根本の憎い気持ちも大きい。
なかなか骨が折れそうだ。幸い、俺のことを大層好んでくれているみたいだからまだやりやすい。
会うたびにお菓子かなんかくれる近所に住んでるおじさん、みたいな立ち位置だろう。
くましろの個性なら充分にヒーローになれる、というかむしろ持て余すくらいだ。それに、この世は様々な個性で満ち溢れている。
お前のように素晴らしい個性を持ちながらもどこぞのバカどもの嘲笑のせいで『なりたくてもなれない、なってはいけない』と自己暗示をかけている奴などごまんと居るだろう。
お前だけじゃないから、大丈夫だ。思い詰めるな。と声をかけたのは記憶に新しい。
なるまでの道のり、なってからの苦労は誰しもあるが、『なれない理由』にはならない。
こいつの場合、どこぞのバカどもに母親が入ってくるからまた面倒なのだ。現役のプロヒーローに否定されればこうもなる。
まったく神代さん…親父の方に子供渡しとけばよかったのに。
あの人を一言で表すなら…『悪』、、だろうな。
敵を倒す(彼女の場合は殺すに等しい)に楽しさと生きがいを見出してるようなタイプだ。ちなみに、オールマイトとはかなり気が合わない。
あの人の個性は確か…液化だったかな。一方のくましろは親父の治癒を引き継ぎ、突然変異だかなんでか止める、になってる。
「相澤さん!!!!!」
ドン!という音(転んだか)の後にドアが開く。こいつにはノックという概念がないらしい。返事をする前に矢継ぎ早に言葉が飛んでくる。
「見てみて!!イレイザーヘッド!!!!」
思わずお茶を吹きそうになった。
「…お前、オールマイトが好きなんじゃなかったのか?」
「え?まあ…好きか嫌いかならそりゃ好きですけど…言ってませんでしたっけ?
オレ、1番好きなヒーローはイレイザーヘッドなんです!
部屋はイレイザーヘッドのフィギュアとポスターでいっぱいなんですよ!グッズ少ないから母さんに根回ししてもらったりして…そういうとこは恩恵ありますね。」
…マジか。
「…そりゃ派手なオールマイトと比べたらアングラだし正反対な感じですけど、オレはイレイザーヘッドの方が大好きです!!」
新聞の小さい写真をみてニコニコしているくましろ。
実は、まだヒーローであることも、雄英職員であることも、…イレイザーヘッドであることも言っていない。
(テレビ出るの嫌いってなんとなく相澤さんに似てますよね)
(…なぜだ?)
(相澤さんもそういうの苦手そう)
(……)
(マスコミに囲まれて慌てる相澤さんか……ぶっ、あっはっはっは!!!)
(本人目の前にしてよく笑えるなこのガキ)
(いっだぁ!?!?!?)