Alien
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
✳相澤消太
一日を通して行われたオリンピックの代わりとまで言われる雄英の体育祭。
もちろん月曜は振替休日だ。
が、くましろは頭からすっ飛んでるようで、現在朝の8時半。普段ならもう授業が始まっている時間に起きたので、大慌てで着替えて、遅刻してるなら作らなくていいのにお弁当作ってる。
慌てている様子が面白いので、俺も寝たふりして遅刻ということにしている。
「わ、ど、え、相澤さん、相澤さん!寝過ごしちゃったどうしよ…」
ゆさゆさと控え目に揺すられる。そろそろネタばらしするか…
「…まあ落ち着け、こっち来い」
「でも、」
「平日に体育祭あったんだから、今日は振替だよ…お前はもう少し休め」
「……あ!!!」
そうだった…と安心するのが小声で聞こえる。
火消したか確認してくましろの頭に顎を乗せる。
「…分かってて意地悪したんですね」
「ロケットみてぇに飛び起きていったからな…面白くて」
そんなに拗ねるなよ、と続ける。
「…あ、そうだ。爆睡しちゃって聞けてなかったんですけど、お昼のやつ…どうでした?」
くましろが見上げてくる。そうだ、話そうと思ってたのにすっかり頭から消えていた。
「……第一の感想は、お前は本当に俺のことが好きなんだなって実感したよ」
歌の意味も込めたんだろ?と尋ねると頷くくましろ。
「…結構曲も振りも悩んで悩み抜いたんですけど…もっとないんですか」
不満そうだ。これ以上もこれ以下もまずはないだろうが。
「第一はっつったろが…。第二はお前のダンスがきれいだと思った」
「!!!ホントですか!!!」
キラッキラの目で見上げてくるくましろ。犬みてえだ、揺れる尻尾が見えてくる。
「ウソ言うか。…素人だし、何がどう良くてそう感じたのかはうまく言えねぇけど…きれいだったよ。たいととやつきもきっと相当上手い部類なんだろうとは思うが、俺個人の好みはくましろの方だな」
「え、超嬉しい…!!!自伝本の帯に書きますね」
本出すつもりなのかよ。帯に書く内容ではないと思う、と伝える。
「…ただ、光なんてキャラじゃねえと思うが」
「光なんです!!!」
じたばたするくましろをギプスで上から抑えつける。埃が舞うだろうが。
「だって、たとえば俺の母さんに恩があるとか、遠い親戚だとかなら
ここまで良くしてくれるのまだ分かりますけど…。始めましてで出会ってからここまでやってくれるの、地球の歴史上でも相澤さんだけだと思いますもん。光の具現化みたいな人だと思います。」
規模がでかいな。地球の歴史か…。
「まあ、これでも一応教師の端くれだからな。…一度目にかけたやつが次会ったら敵連合にいました、とか嫌だろ。
…あと、目。」
「…目?」
「あの日のお前の目、…今だから言うがまるで死柄木みてぇでな。ただ、それにしては服装も綺麗だし体に傷もない。
スラム育ちとか半グレの敵じゃねえことはすぐ分かったから声かけたんだ」
「…そんなやばかったんですか?オレ」
あの日はな、と付け加える。あいつがくましろに執着するのもそれだろう。
あの時期のくましろはストレスが限界に近かったのか、目が異様に据わっていた。USJの襲撃のあとや、たまに仄暗さはあるものの、あの日までではない。
「…あのときに比べたら今は随分イイコちゃんだな。そこまでの成長を含めると俺が光と例えられるのも少しは頷ける」
「少しじゃなくてしっかり自覚してくださいよ…」
ギプスをパシパシと叩いてくるくましろ。
「光かどうかはさておき、お前のクソ重い愛は伝わってるよ」
「……」
「なに顔真っ赤にして照れてんだ、常日頃結婚してくださいとか言っといて」
「いま言わないで…」
耳や首まで真っ赤だ。いつもバカデケェ声で職員室でも教室でもどこでも好きだの結婚してほしいだの騒いでるくせに、
突然こうやって照れる時がある。
「俺より強くなって、迎えに来たら養ってくれるんだろ?」
ウブな反応が面白くてついくましろが以前放ったフレーズたちを使って更に追い詰める。
俯いて顔見えないようにしてるが、真っ赤な耳とうなじが丸見えだ。
「うう…オレの本気をからかわないでください!!」
「失礼だな、からかってんじゃなくて確認してんだよ」
「〜〜〜っっっ!!!!も〜!!ほんと無自覚天然人たらしのモテ男…っ!!!!」
どの顔が言うんだよ。お前に言われたくない、と返すとオレはモテません!と信じられない回答が返ってきた。
「マイクだって美人だって褒めてたじゃねえか。ミッドナイトも、ばあさんも。
あと知らなそうだから言うが、普通科にくましろのファンクラブあるからな」
「………ファンクラブ…???」
やっぱり知らなかったか。
「どっちが自分の顔の良さに無自覚で無頓着なんだかな?」
ニヤ、と口角をあげる。
また顔真っ赤にして照れたくましろが俯いたので、声を上げて笑うと背中を向けて丸まってしまった。
「おい、拗ねるなよ」
「相澤さんのほうがかっこいいですもん…」
どこにいじけてんだよお前は。
「そりゃどうも。…俺の意見は受け止めねえのか?」
ギプスで背中をつつくと、また無自覚モテ男が!と謎の罵倒を喰らう。
「ミッドナイトもばあさんも、たいやきの2人も…お前の野次について心底キレてたぞ…立ち直ったか?」
そう尋ねると、言いにくそうに目線が下がっていく。
「なんでオレだけ…とは思います、親がヒーローなのは轟くんも同じなのに…」
「No.2だし、あの場にいたからだろ。その程度の野郎の言葉だよ。もしあの場に神代さんがいたら野次ってなかっただろうからな」
「…えぇなんか…そんな……そんな人の言葉にイラついて口車に乗せられたの、すごい…恥ずかしいというか情けないというか…」
まあ、気持ちはわかるがな。
「初めてなんだから仕方ない、うまい対処法を覚えていけばいい。想定して麗日と飯田に先に根回ししてたんだろ?今回はそれで100点だと捉えればいい」
「……オレ以上に相澤さんが気にしてません?」
「まあどこの事務所のやつが放ったかを調べたくらいだ、そこまでじゃない」
「めっちゃ怒ってる……いいですよ、反応したオレが言うのもなんですけど言わせておきましょう。オレも流すようにするから」
くましろが頭を撫でてくる。犬じゃねえんだぞ、と伝えても撫でるのをやめなかった。
「相澤さん、怒ってくれてありがとうございます。大好きです」
「そうか。大好きな弟子に先に言っておくが、オレに関する野次を見かけたりしても手を出したりするなよ」
そう言うとぐっ!!!と呻き声を上げて胸の辺りを抑えるくましろに、無自覚モテ男…!とまた怒られた。お前がだろうが、先に言ってきたくせに。
(なんでだよ、俺も思ったこと言っただけだろ)
(恥ずかしいからやめて!)
(人前で事あるごとに求婚されるのも注目されるし、割と恥ずかしいんだが)
(じゃあ2人のときにいいます!!!)
(そうか、じゃあ俺も2人のときに言おう)
(………ダメ…)
(フッ、くっくっ……悪い、可愛くてからかいすぎた)
(そうやって…!)