Alien
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「……なんにも思いつかない…もうだめだ…プロヒーローなんて程遠い…うゔ…」
「すぐ泣くなお前は。まだ考えてから4分しか経ってねーぞ」
「だって全然思いつかないんですもん!!!!やだ!!!!」
ホワイトボードを相澤さんに押し付けるとそのまま押し返ってくる。
「ヤダじゃねえ俺だって考えてるんだから、お前は俺より考えろ」
マーカーを渡されるので握る。
「分かりました!!!!!!」
『(単純なんだか素直なんだか…)』
「どうせなら相澤先生とおソロ感にしたい、イレイザーヘッド…イレイザー…」
「おソロってなんだ」
カタカナいいな。さっきミッドナイトには可愛いってべた褒めされたシロクマは、見た目とイメージと名前が定着しづらいってことで却下された。
「くま」
「動物から抜け出せ」
「シロ」
「……イメージが合わない」
「………イヌ」
「合ってるけど投げやりすぎだ」
「止める…治癒…」
「…ストップ、ブレイク、とかか」
「抹消ヒーローのところは静止ヒーローでよくないですか?」
「いいんじゃない!くましろちゃん、もう一息よ!」
ミッドナイトにも案としてまずオッケーもらった。
「15分経ったわね…じゃそろそろ出来た人から発表してね!」
「え、はっぴょう…!?」
聞いてない…
「五郎にしとくか?」
ニヤ、と相澤さんが笑ってくる。写真、あ、そうだ、没収されてるんだ、くそう…このかわいい悪戯スマイルは脳内に保存しておく。
「だからそれはダメって言ったでしょ!」
しっかりミッドナイトから釘刺された。
最初に発表するのは青山くん。
「いくよ…。輝きヒーロー"I can not stop twinkling."」
ま、まさかの短文…!!!
「そこはIを取ってCan'tに省略した方が呼びやすい」
しかも添削されるんだ…!色々衝撃が走る。
次は芦戸さん。
「じゃあ次アタシね!エイリアンクイーン!!」
おお、みんなえぐいな…。
やっぱ見た目とか個性をこう、表すような言葉をみんな使うよね。
静止ヒーロー…うーん、見た目…。
「じゃあ次、私いいかしら。」
蛙吹さんだ。
『ケロ、くましろちゃんって男の子にも女の子にもなれそうね』
『確かに~~!!!なんか中立というかどっちの良さも持ってる感じ!』
「小学生の時から決めてたの。フロッピー」
梅雨入りヒーロー FROPPY。カワイイ!蛙吹さんらしい。
みんなもフロッピー!!って盛り上がってる。
中立、中性ってことかな。それはよく言われるけど、
中性…neutral…ニュートラル…
あ、ニュートラルいいかも。
「相澤先生、これ良くない?」
「neutral…?」
「中性とか中立って意味」
「…たしかにくましろらしいが…確かそんなにいい意味で使われてなくないか?
確かはっきりしないとか、どちらにも偏らないって意味だろ」
詳しいな。
「……そこまでは考えてなかった…」
自分でも理解してはいる。ヒーローに対するオレの考えは憧れとかそんな綺麗な感情だけじゃないこと、
むしろ同じくらい、もしくは一回りくらいマイナスな感情を持ってること、世間ではそれを敵思想って呼ぶことも分かってる。
相澤さんはそれが言いたかったんだろう。
完全に蛙吹さんと芦戸さんからいわれた見た目のことでの中立とかしか考えてなかった…。
✳相澤消太
マズイ。完全にやらかした。明らかに意識してなかったのに俺の発言で引き金を引いてしまった。
教室は青山と芦戸の大喜利大会のような雰囲気から蛙吹の発表によってワイワイガヤガヤとした雰囲気になってて、少し騒がしいくらいなのに目の前のくましろは俺の発言以来、不気味なほど静かになっている。
完全にしくじった。
「…そこまでは考えてなかった…」とついさっきギリギリ聞こえる声量でそう言ったくましろの言葉が頭をよぎる。
俺だってそんなつもりで言ったんじゃない。まだ敵とこちら側をフラフラしてるような、しかもこちら側に来ようともしてないみたいなことを言いたかったわけじゃない。
日本語的にはニュートラルは中立や中性といった意味で使われるが本来としてはどっちつかず、どちらにも偏らない、はっきりしないって意味だ。
なんとなく、そのまま決めたら意地悪な人間から指摘されそうだと思って言った一言が、明らかにくましろを動揺させている。
しまったな…。
「ミッドナイトさん。…悪い、ちょっと抜ける」
「…ん?あぁ、オッケー!次の授業の準備ね!行ってらっしゃーい!
そうだ、くましろちゃんも行き詰まってるみたいだし、相澤先生のお手伝いしてきなさい!」
スラスラと嘘が出てくるミッドナイトは凄いと思う。
くましろを一目見て感づいたらしい。さすが仲がいいだけある。
教室を出て適当に普段は使われない教室を鍵を使って開けて鍵を閉めておく。
「くましろ、」
「…なんですか」
「…泣くな。悪かった、そういうつもりで言ったんじゃない」
振り返ったらすでに泣いていた。
頭をなでて落ち着かせると、ぼろぼろ泣いていたのが落ち着いてくる。
「…やっぱり、ニュートラルにする」
そう口にするくましろの目つきは、いつの日かと同じ母親とそっくりな目をしている。
「くましろ、」
「どっちつかずで生きてきたし、ぶっちゃけ今だって、そう、だし…」
「落ち着け、目を擦るな。腫れるから」
「敵の気持ちもヒーローの気持ちも分かるヒーローになりたい。…なる。」
まっすぐな目でそう言ってくるくましろ。頑固だから俺がもう何を言っても変えないだろう。
「…分かった。お前の意思は理解した。…ただ、な。
お前みたいにひねくれてるように見えても一途でまっすぐしかハンドルを切れないだけのやつもいれば、まっすぐ物事を見れない真のひねくれ者だっている。
お前がその名前でプロヒーローになった時、絶対にその名前について意地悪な事を聞いてくるやつがいるだろう。…分かるな?」
くましろの頭に手を置く。そういえばもう好きなだけ撫でられるのか。
「…はい」
「敵でもヒーローでもない立場のヒーローと嗤われるかもしれないってことを俺は言いたかったんだ。
それこそ、お前の母親みたいに。ヒーローでいていいのか、とまで言われるかもしれないってことだ。……平気か?泣き虫のくせに」
「…頑張れます」
「泣きながら言われてもな…」
わしゃわしゃ撫でるとタックルの如く抱きつかれた。くましろの頭が鳩尾付近に当たったが、…平気なふりをしておく。少し痛い。
「相澤さん大好きです、ありがとう」
「…ああ。…ってお前鼻水出てねえだろうな」
涙はいいが鼻水は服についてたら生徒に色々思惑され言われるだろう。
「…奇跡、出てない」
「どうせ出るだろ拭け」
チーン!と鼻を幼児のようにかむくましろの頭を撫でる。
「そろそろ戻るぞ」
「はーい!…そういえば職場体験って3日くらいですか?」
「バカ言ってんな1週間だ」
「、いっしゅ、」
石化したくましろを引きづる。
どうせ「相澤シックで死ぬ無理行きたくないイヤァァアァアアア」とか言い出すに違いない。
(嫌だ!行きたくないです!!!)
(嫌だで通るか馬鹿野郎)
(嫌すぎる…)
(んなことでめそめそ泣くな。…すみません、ミッドナイトさん。戻りました)
(なぜこんな大泣きして帰ってきたの…?)
(職場体験に行きたくねえと駄々こねてるだけです)