Alien
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✳相澤消太
あのくましろが、昔大喧嘩をしたらしい。にわかに想像つかないが、思い出すだけで顔がしわしわになっているたいとの様子をみる限り、嘘ではなさそうだ。
「気にしてたやん〜、やっちゃんは。ばりしつこく聞いてケンカになったん覚えとらんの?」
はあ、とため息をつきながらたいとがそう言う。
「そやったっけ…?」
「そや。やっちゃんが『隠すってことはなんやすごい個性に違いない!』って意地になって聞きまくってくましろキレたんを仲裁するんばちくそ大変やったんやからな。
ほんま一生もんの貸しや。」
ジロリ、といった視線を送るたいと。この2人に挟まれたら堪ったもんじゃないな…同情する。
「あの温厚な神代が、ケンカねぇ…全く想像つかねえわ俺。」
マイクが言う通り、俺にも想像できない。
たいとが当時の状況を1人3役で演じ出す。
『ええやん、教えてや!』
『だから、…嫌だって前に言ったじゃん。怖いって』
『やっちゃん別にバカにせえへんで?』
『やっちゃんとたいとがそういう人じゃないって、分かってるけど…それとこれとは違うんだよ、』
『やっちゃん、もうやめとき。くましろ可哀想やろ。』
『なんで隠すん?もしかしてこの世から木をなくすとか?』
『恐ろしすぎやろそれ空気なくなるわ』
『な〜くましろ、教えてや!!』
『…しつこい、』
あ、ヤバい。そう思った時は遅かった。
『やつき、しつこい。うざい。…帰る』
ここでやつきが黙ってれば拗れずにすんだけど、やつきはすごく負けず嫌いだから言い返したんやで。
『…は!?うざいって何?!聞いただけやん!分からんから聞いとっただけやん!!』
くましろは振り返りもせずに、ドアが閉まる。
『やっちゃん、やめや。』
『なんでやっちゃんやねん!たいとだって気になる言うてたやん!』
『気にはなるけど無理やり聞き出せばええってもんじゃないやろ、やっちゃん。』
「…そんなマジなケンカしたのか、お前ら」
出会った頃より恐らくトゲトゲしていたであろうくましろの様子を想像する。よくここまで仲良くなれたもんだ。
「大変やったんで、次のレッスンから無視しまくるくましろにめげて泣きじゃくるやっちゃん励ましたり、そのことくましろに逐一言ったり…!!」
「えへへ、今思い出したわぁ」
このポンコツ脳みそ、とたいとがやつきの頭を叩く。
「やっちゃんもやっちゃんで変に負けず嫌いで面倒やからくましろの前ではツンケンしてるねんな、
けどそれを上回るくましろの無視の決め込みように俺とかの前で泣きじゃくるねん。ごめんの一言が言えんねん、このアホ。」
「苦労人だな…」
少し共感してしまう。
「どうやって今に至ったんだよそっから…」
マイクがそう言う。
「簡単やで、やっちゃんが早々に折れてん。『言うの今じゃなくていいし死ぬ間際でもええから、今すぐ仲良くしてや~』って大泣き。しかもレッスンの最中やねん。
先生も他のみんなも目まーーんまるにしてやっちゃんのこと見てたわ。」
やつきの泣いてるモノマネをしながらケラケラと笑うたいとにやつきが猛抗議し始める。
「なんで笑うん!?やっちゃん必死やってんで!!!悲しくて辛くて夜も眠れんかったのたいと知ってるやろ!!!」
キレ方、言葉の言い回しといいやっぱくましろに似てるな。
「個性知ってから、なんか変わったか?」
「ぜーんぜん!カッコいい個性やしなんで隠すん?思ったけど、くましろてちょっと根暗やん?
どうせ陰キャとかに陰口叩かれてたんやろ思ってな、やっちゃんはそんなん気にしないで~ずっとくましろ大好きやで言うたらくましろ泣いちゃってん」
「つられ泣きでくましろより大泣きしてたよなぁ、やっちゃん」
たいとがクスクス笑う。
「言わんでええのそれは!!」
光景がすぐに思い浮かぶ。マイクと共に笑う。
「俺もオネエ製造機とか変なあだ名つけられたことあるし、いびられる気持ちよう分かるねん。
言いたない気持ちもよう分かんねん。やっちゃんはくましろ大好き人間やしそれで仲良くできてるん思うわ。」
たいとがそう言うとうんうん、と頷くやつき。
「何より、くましろ優しいねん。宇宙より深い優しさの塊やねん」
「フッ、なんだそりゃ」
「「え、相澤さんそんなことも知らんの?」」
「…マイク、このガキどもここから吊るしていいか」
きゃー!と言いながらマイクの後ろ側に逃げた2人を追い詰める。
「やめろ相澤、報道陣がわんさか居るぞ」
「「そんなんしたらくましろに嫌われんで〜」」
ハモる上に自信満々なこの2人にイラっとする。
個性のことを知っても、尚気にせずひたむきに応援してくれる友達が居ると知り、ホッとしたような感情になる。
今年の4月頃に言ったのか。その時に俺の事も話し始めたらしい。
『今一緒に住んでる人が、オレにヒーローになれるって言ってくれた人なんだ』
「くましろなら絶対ええヒーローなれる言うてん、優しいから」
「ひたむきやし努力家やしな。」
それには同意する。
「そうか…聞いた話だとまともに友人関係を築けてないと思ってたが、妙に愛情深い一面があるのはお前らの影響なのかもしれねえな」
「愛情深い…?どういうこと?」
「アイツの家庭環境は知ってるか?」
「まあ、ほんのり程度なら…なんていうか希薄やなあって」
頷く。
「加えてあの個性で毛嫌いされてきて、お前らにもここ最近ようやく打ち明けられるようになったんだろ。
誰にも甘えられねえで、頼ってこれない人生を歩んできてる割に、人に無条件で愛をあげる節がある。
環境的に見返り求めてもおかしくねぇほど愛に飢えてるだろうに、妙だと考えてたんだ」
「…せやね、確かに…」
「個性のことを隠してでも、せっかくできた友達のお前らには甘えたかったし、結果少しでも甘えられたからいい方向にいったんだと解釈した」
「…よぉ見とるんやね…」
「人様の子どもを預かって育ててるからな、気にはかけてる」
「愛情深い、か…もともとの気質な気ぃもするけど…やっちゃんたちのおかげなら、ばり嬉しいなぁ」
「今は?大丈夫なん?」
「まあ…俺のクラスも中々くせ者揃いでな。それなりにやってる。
敵に襲撃にあって…あいつが大怪我したとき、もっと今より顔の傷跡が酷くてな。それを見てクラスメートが泣いて出迎えた」
「そうなんや…そっか、…どの子やろねやっちゃん」
「どの子であっても、やっちゃんが1番や」
なんだそれ。一丁前にヤキモチ妬いてんのか。
(まあ、変わらず仲良くしてやってくれ)
(言われんでもするし)
(ほんま、何やと思ってるん?)
(横取りにも程あるよなあ)
(…なんだお前ら、恋愛感情はないんだろ)
(そやけど??1番の座取られたん腹立つねん)
(あっはっはっは!!!最高だお前ら!)
(ほんま、くましろ泣かせたら誰であってもしばくで)
(相澤のほうが泣かされてるよなあ?)
(おい、マイク。やめろバカ)