Alien
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「…くましろの父親って、今どうしてるんだ?」
朝食時にそう言われる。ん~連絡は定期的に取り合うけど何年も会ってないからなあ。
父さんは未だ母さんの事好きらしい、どこをどう好きになるんだろう?……顔?
「…さあ…?でも元気らしいですよ、この間は北海道の雪で遊んでる写真はきました」
仕事何してんだこのおっさんって本気で思った。仕事してんのか?
「お前の親父さんらしいな」
鼻で笑われてるよ、父さん。いい年した大人が雪で遊ぶから…。
「…父さん、メールとかで必ず言うんですけど母さんにゾッコンなんですよね。…どこがいいんだろう」
「…やっぱり似てるな」
「は?!相澤さんはカッコいいし優しいし変わってないです!!!」
確かにゾッコンですけども!そこは認めますけども!!
「ハイハイ。分かったからさっさと食え、遅刻するぞ」
この呆れ笑い何回目だろう、最初の頃はちょっと照れてたのに今はもう呆れ笑いするようになったんだ。ウブな相澤さんカムバック。
まあ世間一般の言葉を借りるなら人殺し(敵殺し?)ヒーローな母さんな訳だけど、一応へぇって感心した節もあったりする。
「相澤さんからしたら意外かもしれませんが、意外と上手くやってるんですよ。神代家の夫婦は」
ちょっと興味ありそうな相澤さんに、今も記憶に残ってるエピソードを話す。
昔、最初で最後の家族旅行に出かけた時があった。その当時母さんはデビューして間もないこと、そして間もないのに子供産んでるし、1年もあけずヒーロー職に舞い戻ってバンバンやってたこともあり注目の的すぎた時。
電車で移動していたら、敵がやってきた。
当時父さんからまだコントロールできないから個性は絶対に何があっても使っちゃダメ!とキツく言われてたし、子供だったから呆気にとられて父さんの腕の中にいた訳だけど、
父さんとオレが人質に取られかけて『無個性』ということにしてたオレは役に立たないということもあり解放された。
けど父さんは治癒だし人質に取られてどうしようか、って警察も頭抱えてた時に…
『ウチの旦那を離しな、このゴミが』
母さんに叱られた記憶はない、叱るのも褒めるのも父さんの役目。だから初めて聞いたドス効いた声に三度見したの覚えてる。
『指1本でも傷つけてみろ…死ぬより苦しい拷問してやっから』
いつもヘラヘラしてるのに、真面目な顔でとんでもないこと言う母さん。
そこだけ思い出すとヒーロー感満載。だけど、その後父さんを殴った敵にブチ切れた母さんがまあもう警察も真っ青になるくらいの拷問(オレは強制的にパトカーにつれられて目隠しと耳栓されてた)して父さんを奪い返した。
ちゃんとその後に安否確認されたけど子供より旦那優先する母親も珍しいだろう。しかも安否確認の仕方が雑。
『お、くましろ!なんだ生きとったのか!あーよかったよかった、本当に衛さんが無事でよかった~』
『水子さん、いくらなんでもやりすぎでは…』
この会話まだ覚えてる。
「……神代さんらしいよ…」
このエピソードを聞いた相澤さんは苦笑していた。
「良くも悪くも、お互いが一番なんですよね。オレはその次くらい?」
「…くましろ、そうやってあんまり自分を軽く扱うな」
「…受験のときも、入学のときも神代さんは気にかけてるよ。
分かりにくいけどな。」
そう…なのかな。分からない。親子だけど、あの人が何考えてるかよくわからない。
思えば、まあヒーロー業で忙しいからって一緒にご飯食べたの、いつが最後だろう。最後の会話は、進路の喧嘩?
「怪我して登校したとき、麗日や緑谷に泣かれたんだろ?俺だって包帯取って後遺症ないか確認するとき、柄にもなく緊張した。…お前はお前が思うほど、存在が軽い人間じゃないよ。A組にとっても、俺にとっても。」
ぽろ、と涙が出る。
「話をしたいと思ったならしてこい。今はまだいいなら今のままで…仮にも親子だろ。
ただ、お前自身をそうやってどうでもいいように軽く扱うようなら俺は口を挟むぞ。」
分かったな、と睨むように言われて頷く。
「……しみる…」
そう言うと面白かったのか、相澤さんお茶吹き出してた。
(なんだ、しみるって)
(からかわないでくださいよ)
(悪かった。泣き止め)
(好きが倍くらい加速しました)
(そうか、お前は随分愛情深い人間なんだな)
(…そうですか?)
(そうだろ)