Alien
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あのあと、機嫌が悪く落ち込んでいた相澤さんもすっかり回復。結局何に機嫌を損ねていたのかは教えてくれなかったけど、相澤さんの優しさだと思うから追求はしてない。
オレも生徒や先生から何か言われるかもしれないって構えてたんだけど、相澤さんが根回ししてくれたのか、運が良かったのか一度も耳にしなかった。
あの日、肉じゃが食べたあとに『相澤さんって、本当にほんとーにカッコよくて優しくて可愛くて素敵ですよねぇ』って言ったら目をまん丸にしてた。
『そんなこと言う物好き、世界中探してもお前くらいだよ』
『それってオレがいちばん最初に相澤さんの良さに気づいたってことですか!?見る目ありすぎ…』
『フッ、自分で言うか?それ』
『事実じゃないですか!顔もハンサムだし、言動までハンサム。こんなにも愛に溢れててとっっても優しい。こんなにカッコいい人間、見たことない』
『はいはい、もういい。終わり』
『一生オレ以外に見つからないでくださいね!』
『分かった分かった』
一生かけて説いても自覚しなそうだなぁ、と感じた。
雄英体育祭まで2週間ちょい。
目立ちたいことには変わりないし、何よりこの間の襲撃での課題はたくさんあるわけで。
オレも鍛えようと思い直して最近疲れない程度に走り込みに筋トレ増量して、瞑想も初めてみた。体力の増加と集中力二繋がればいいなと思って。
「…で、何してんだ」
「あ、見てくださいよ!!小さくなりました!」
「…アホか」
はあ、とため息つかれる。酷い!ミニマム化したんだぞ!
ちょうど幼稚園児とか小学生くらいの身長。さっきは逆に大きくなることもできた。
顔も変えられれば便利だけどどうなんだろう、元に戻れる自信がないからやってない。
「いろいろ実験してるんですよ、更に追加で無重力化とかできないかな~」
ふわ、と浮く。おぉ、できた。普段の体での無重力化は割と簡単にできるようになってきたけど、体を小さくしながらっていう並行作業は割と難しい。
しかもこれ意図せぬ方に回るから酔う。三半規管の弱さを呪った。
コントロールできるようになれば対人戦でも使えるかも。
「…はあ、疲れた」
よいしょ、と相澤さん抱き上げられる。ミニマムだからアゴ置くのにちょうどいいらしい。
肘置きみたいな使われ方してる。
「アゴささってる。痛いっスよ」
「うるせえ。もっと縮ませるぞ」
アゴで頭ゴリゴリしてきた。ツボ押し的な感じで痛い。ツボ押しって気持ちいいのかね?痛そうにしか見えない。
✳相澤消太
最近くましろが目に見えて体が締まってる。雄英体育祭に向けてといえばそれまでだが…それだけじゃあねぇな。
何企んでやがんだか。
公開プロポーズとかされないか不安で夜も眠れない、とボヤいたらマイクが「あり得そうだな!」と爆笑していたが、本当にあり得そうで頭を抱えるしかない。
風呂から上がると床に突っ伏して寝てるくましろを軽く蹴って揺する。
「コラ、ここで寝るな。」
スー、という寝息が聞こえる。爆睡してやがる。
くましろは暑がりだからパンイチで暑い暑いとウロウロしてることも珍しくない。(夏なんかパンツすら履いてない時もある。神代さんの教育が行き届いてなさすぎて頭を抱えた)床がひんやりしてつい眠くなったんだろう。
「ぁ、…あれ朝?」
「全然夜だ、ベッドで寝ろ」
頭をギプスで撫でてやる。…まだ濡れてんじゃねえか。タオル持ってきてガシガシと拭く。どうしてこう無頓着なんだ。
「ね、む……」
まるで電池が切れたおもちゃのようにカクン、と眠りに落ちるくましろ。
体力がないし、個性を使用する際の集中力をもっと増加させたい!とさらに筋トレや走り込みを増やしている。
あんまり焦りすぎるなよ、と声をかけたのはいいものの…。
追い込み過ぎな気もする…が、どこで止めたらいいのかも悩む。
タオルドライで8割乾いたからもういいだろ、とベッドへ運ぶ。
筋肉はたしかについてきたが、まだいかんせん体が細い。体重も女子のように軽い。食わせてるつもりなんだがな…
「…あいざわさん、」
「なんだ…まだ起きてたのか」
ぽんぽん、と背中を叩くと少し開いた目がゆっくり閉じていく。
「オレ、…た、いいくさ…」
寝ぼけて呂律がヘロヘロなくましろ。でかい赤ん坊みてえだ。
「あぁ」
とりあえず相槌を打つ。
「母さ、に…」
ピタ、と手が止まる。が完全に寝てしまったらしい。
神代さん。
極悪非道と言われているし、世間からは『あの人がヒーローでいいのか』と議論されている。…がまあ、実力はあるし厄介な敵を倒したり(命を亡くす事もある)その際には必ず一般人を無傷で助けているから許されてるようなもの。
いくら敵でも殺すのは、という世論。まああの人の場合痛ぶって楽しそうにしてるからそんな世論が出るんだが…。
『ヒーローになった理由?…そりゃあ悪い奴らを殺しても正当化されるからね!アタシには天職だよ!!』
聞いた俺がバカだった、と即後悔した。
神代さんの息子であるくましろを見る。
神代さん曰く『私に全然似てないね!!でも個性の能力的には嫌でも私と同じ道歩むんじゃないか?』と入学内定の際に言われたのを思い出す。
小さい頃から危険視されて、誤って個性を使い人を殺めかけて…母親のそういう姿を見てきたくましろは、殺すなんてことはできないだろう、と踏んでいたがこの間のUSJの時には3人も瞬時に殺していたらしい。
母親がなんだろう。気にはなるが、病室でのやりとりを思い出すと言及しないほうがいい気もする。
まるでアレルギーのような嫌い方をするくましろ。
メンタルがブレる原因になるし、あまりつつかないほうが良い、のは良いがずっとこのままの距離感もな…。
和解はしなくても、互いの理解ができる距離感にさえなればだいぶ安定するだろうとは思うが…人生の全ての年数分不和のある親子だ、簡単にはいかないだろう。
口には出さないし、本人はおそらくつゆ程も気づいてないがくましろは恐らく寂しいんだろう。
同い年の子供達からも個性のせいで嫌われ孤立し、唯一の母親もヒーロー業でロクに家にいない。(父親も単身赴任だし)
性格の不一致で頼りになって甘えることができる人間が今まで全然いなかったんだろう、と予測している。
本当に小さい子供のような言動をするときが度々ある。俺の前でだけだから、おそらく見捨てないかテストしてるんだろう。
テストの方法がたとえば自死を匂わせたり、誰かを傷つけるようなら考えものだが、いじらしく近い距離に踏み込んでくるくらいだ。
いきなり近づいても逃げないか、嫌がらないかを無意識で確認している時がある。
父親の代わりをしてもいいが、くましろにはきちんと父親が健在だ。仕事柄なかなか会えないみたいだが…
(ハァ…なんだかな)
(お互いもう少し素直になればすんなり行きそうなモンだが…)
(襲撃の連絡もいってるだろうに、音沙汰なしか…)
(少しは気にかけてやればいいものを…)