Alien
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今思い返せば、このひねくれた性格に拍車かかったもの弔のせいだと思うんだよね。
責任転換じゃないよ、まじで。
2人でコンビニに入って、あったかい飲み物と肉まんとかからあげ棒とか買って外へ出る。
耳が取れそうなくらい寒い。
「…なんで、こんな時間にだっけ?」
「あぁ、聞いたねそんなこと…」
聞いといて忘れるってなかなかだよね。
「母さんとケンカして家出」
「……………ガキ」
「うるさいよ。」
気にしてるよ。オレだってまじ自分でもガキだなぁと思うよ。笑うわ。
でも今回はさ、進路かかってる話だからこっちも譲れなかったワケで怒鳴り合いした。
「ん〜、まあいつもなんか言われても大抵のことは流せるんだ、経験積んでるから。
でも……俺が『ヒーローになりたい』って言ったら、…大笑いしながら『人殺しの間違いだろ?』って…、冗談でもすげぇ腹立ったんだよ。
普段から冗談言わないしさ。」
ましてや、親、自分はプロヒーローの存在で。
仮にも我が子の夢を笑うなんて、オレの知ってるヒーローはそんなことしない。
私が来た!って笑顔で安心感を与えて、カッケーって思わせてくれる、メディアにバンバン出てなくたって、粛々と一般人を救う、そんなヒーローたちなのに…
「じゃあさ、暗闇のヒーローになればいいよ」
「くらやみ…?」
見上げると弔とばっちり目線が絡む。
「…オールマイトが居るからだ、こうして1人の夢が崩されていくのも。あいつがヒーローとしてこの世にいる限り、その価値観は消えない…だろう?
いつまでもあいつと比べられておしまいだ」
急にしゃべるし結構早口な弔。ビビる。
恨みとかそんな類のオーラがひしひし出ている。
据えた目をする弔を見てあ、関わっちゃいけない奴に関わってしまった。本能的にそう感じたし、関わってしまったからもう遅いとも感じた。
「…なぁ、くましろ?お前もおかしいと思うだろう?」
あれから幾日か経った。あの後どうしたか?
いやもうかなり必死で帰ったよ。顔引きつってたと思う。走ったらあからさまかなって思って競歩した。
もう寒いし帰るわ!とかすごいあからさまに適当な理由つけたけど、走りはしなかった。
なんか去り際に「今度迎えに行く」とか言われた気がして、最近気が気じゃない。怖すぎ、学校ごと爆破とかしてきそう。
母さんのヒーローポリシー的にも打ち明けられないから、あの日は黙って帰宅して今日また大喧嘩した。
3年生だし進路のね、続きの話をしてたらね…。まあ正直…、オレひねくれてはいるしヒーローになれるかって言ったら…うーんって感じだとは思う。
でも、毎度人殺しの個性だ、とかバカ笑いするのは…耐えられない。制御するもなにも、使ったことすらない。
ずっと犯罪者予備軍の個性持ち:会社員として生きてかなきゃムリなの?
人殺しのために生まれたみたいな言い方しやがって。母さんの個性引き継いでないからこんなこと言われるのかよ。母さんにも、周りにも。
仮にも人殺しの個性がヒーロー目指して何が悪い。
…べつに人殺しがヒーロー目指してる訳じゃないからいいよね?
悶々とブランコをゆるく漕ぎながら考えてたら声をかけられる。
「…こんな時間に、学生が何をしてる」
これまた怪しい風貌だな…何このひと。
黒い。服も何もかもがまっくろ。状況が状況なら百貨店の防災訓練の不審者役の人だよ。
「自分の進路について考えてるところです」
「はあ、家で考えなさいよ」
「…無理っす」
「…合理性に欠けるね、時間が無駄だよ」
今は季節も春なのでまだ暖かい。
「…人殺しの個性と言われてるんです」
「…」
「何なんすかね、小さい頃はあんなに皆気持ち悪いとか、危ないから隔離してほしいとか言うくせに、大きくなると掌返して「逆に個性を活かすべき!」とか好き勝手言う奴らは居るし……
人殺しの個性だからヒーローなんてなれないなんていう奴もいるし」
学校の担任ですらまともに聞いてくれない、俺の進路。
「人殺しのために生まれたみたいな言い方するんですよ、母さんまで」
キャパオーバーで、少し声が震える。
逆に、何になれば人に認められる人生を歩めるのだろう。
この分だともし普通のリーマンになったとしても学校での反応のように訝しげに見る奴もいれば、人殺しなんて言う奴らもいるだろう。
小さな社会がそうなのだ、大きな社会でもあり得ることだろう。
この呪縛は生きてる限り振り切れない。
少し冷静になって後悔する。何をペラペラと…見知らぬこの…お兄さんとは言えないオジさんに。
まただ、また後悔する。繰り返しすぎて嫌になる。
「…ヒーローなんかになりたいって、思ったのが間違いだった」
自分でも思ったより声が弱々しくて、余計に惨めになった。
「…よくわかった。」
おに、…オジさん?は言う。
「お前…随っ分ひねくれてるな。…まぁ小さい頃から否定されてれば仕方のないこと…。オマケに親からも否定されてるみたいだな。
…つまり承認欲求の塊か」
「承認…」
なんかそう言われると、余計に哀れなんですけど…ヤメテクダサイ。合ってるけども。
除外されるたびに、認めてほしい気持ちは大きくなる。
いち人間として、いち個性として。
小さい頃からロクな扱いされてない。
正直ヒーローなんて嫌いでもある。
でもカッコいいんだよね。畜生しかいえないよ、、畜生。
「ヒーローなんか居るから…オールマイトがいるから、オールマイトが無駄にかっこいいから…
オールマイト…階段で脛打って転べばいい…」
「…一度俺の家に来い。」