Alien
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大層な施設の扉を抜けると、ベイマックスみたいなヒーロースーツに身を包んだスペースヒーロー13号がいる。
「13号だ…」
いや、まあ、当選っちゃ当然なんだけどテレビでしか見たことないヒーローが目の前にいるの、ほんとに慣れない。
そう思って13号の方へと向かっていたら一瞬足から力が抜けて、変な転び方した。
軽い擦り傷だったけど、ダメージ2倍のハンデをオレ以上に気にしている相澤さんがすっ飛んでくる。
「元気なんじゃないのか」
相澤さんに起こされる。いや、バスから降りたとき…なんていうのかな…乗り物酔いで胸やけしてふわふわしてた感じからしっかり地面に足つけて感覚を取り戻した、と思ってたから一瞬だけ電池切れたみたいな力の抜け方して転んだオレ自身もビックリしてる。
「元気、ではあります…?なんだったんだろ?」
「少しあっちで座ってなさい」
13号に言われ、広間の手すりへと歩く。手すりを背もたれにして座ると、隣に相澤さんがいることに気づく。
「気絶か?」
「いや、…足の力?が一瞬だけ抜けた感じです…寝起きに近いからかな…」
離れたところと言っても話は聞こえてくる。体育座りして13号の話を聞く。
「えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」
お小言どんどん増える…
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の"個性"は"ブラックホール"。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。」
ブラックホール、という現代科学でさえ解明できてない現象の個性が人に発現するの、めちゃくちゃ不思議だよなあ…
ブラックホールの個性があるなら、太陽とかの個性もあるのかな。セーラームーンみたいでかっこいい…!
「その"個性"でどんな災害からも人をすくい上げるんですよね!」
出久くんが言う隣、お茶子ちゃんが見えないくらいの勢いで首を振ってた。好きなんだなぁ、13号。
ふふ、と相づちをうっていた13号がオレに視線をよこす。
「しかし簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう"個性"がいるでしょう。
超人社会は"個性"の使用を資格制にし厳しく制限することで一見成り立っているようには見えます。
しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる"いきすぎた個性"を個々が持っていることを忘れないで下さい。」
いきすぎた、個性。自分のことを言われてるようだった。
いつの間にか相澤さんが肩に手を置いてくれてた。そういうところがカッコいいんだよこの人、分かってる?
「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。
この授業では…心機一転!人命のために"個性"をどう活用するのかを学んでいきましょう
君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」
あ、ちょっと無理かも。
「ちょっと泣きそう、今優しくしないでください」
「今優しくしないでいつするんだバカ」
泣きそうっていうか泣いてるぞ、と言われる。皆も感動してぱちぱちと拍手が起きる。相澤さんと出会ってから、お守りの言葉がちょっとずつ増えてる。
「以上!ご静聴…」
うやうやしくお辞儀する13号を見ていると、背後から気配がしてバッ!と振り返る。
「どうした?」
「………なにか、くる」
声にならない声で言ったけど、相澤さんには聞こえてなかったのかもしれない。
「…?そんじゃあ、まずは…」
「相澤さん!待って」
相澤さんの右手を掴んで引っ張る。
暗闇から、見えたその顔。明らかに狂気を帯びている。
見覚えのある髪色、少し猫背な姿勢…
「弔……?」
バチリ、と目が逢う。
「一かたまりになって動くな!!!」
弔を確認した相澤さんが叫ぶ。
おびただしい数の敵たちが、弔と同じように黒い霧から現れ続けている。
「13号!!生徒を守れ!」
考えなきゃ、今この場にいて何ができるのか。
人命救助に長けた13号と長期集団戦には不向きなハンデを持つ相澤さん。敵と戦ったことなんかない、オレたち。
ざっとみただけでA組よりも多い人数が敵にはいる。
「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな、あれは敵だ!!!!」
切島くんの問いかけに相澤先生が答える。
「敵、」
『お前それ、絶対敵だぞ』
ゾワッと鳥肌が立つ。聴力を上げてこちらを見ている弔の会話を盗み聞きする。
「13号に…イレイザーヘッドですか…先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここに居るハズなのですが…」
靄のような男が話す。弔や他の敵も靄の中から現れてるのを見るに、こいつが移動手段なんだろう。
「カリキュラム盗んで来たみたいです。狙いはオールマイト」
相澤さんに伝える。
「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」
「…相澤さん、」
行かないほうがいい、直感がそう言ってる。
「怖がんな、シャキッとしろ。…大丈夫だ」
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引きつれてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて…
子供を殺せば来るのかな?」
言い表すとしたら、途方もない悪意。
「13号避難開始!学校に電話試せ!センサーの対策も頭にある敵だ。電波系のやつが妨害している可能性もある。
上鳴お前も"個性"で連絡試せ」
聞こえてきた言葉でふと我に帰る。血の気が引いていたのか、手先が異様に冷たい。しっかりしろ、これが日常になるんだから。
「先生は!?1人で戦うんですか!?」
出久くんの言葉に相澤さんの方を見る。
「あの数じゃいくら"個性"を消すっていっても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は………」
「一発芸だけじゃヒーローは務まらん。
13号!任せたぞ」
「…、」
あの数を半ば囮になって戦うとなれば長期戦になるだろう、それだけは避けないと。
(黒霧…アイツだよ、ホラ)
(こちらに気付いているようですが)
(関係ないよ、連れて帰ろう。相手は子供とプロヒーロー2名だけだ。)
(ですが、もし抵抗されたら?)
(……無理やりでいい。けどあまり痛めつけるな)