Alien
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個性把握テスト、終了後。
職員室を訪ねてきたくましろが見えたので、没収してたケータイを引き出しから戻していると
マイクの野郎が意地の悪いやりとりをしているのが聞こえた。
入学シーズンともなれば、新入生についていろいろ噂したくなる上級生の気持ちもわからんでもない。
ましてや今年はエンデヴァーさんとこの息子もいる。そして、くましろだ。
芸能人の子供みたいなもんだ、噂でひっきりなしだろう。
たまたまその噂話が聞こえたようでマイクでさえ気付くくらい様子がおかしかったようだ。
マイクとのやりとりに耳をすませてみれば、泣きそうな少し震えた声で返答している。何聞いたんだか…
敵とこちらをフラフラしてるとマイクに漏らしたのは俺だ。そしてもちろんそのことはくましろは知らない。俺とマイクが同僚なのももしかしたら知らないだろう。
マイクがいやに自分の弱みを無自覚で突いてくる、という印象を抱くであろうその立場を利用してマイクが確実に心を揺さぶる発言をする。
「はぁん?そんで入学初日から傷ついちまったのか?
……神代、そんなんで大丈夫か?この先いくらでも言われんだぞ?」
世間との向き合い方はヒーローによってさまざまだ。あんまりメディアに出てない俺が口を出すのも、と思ってオールマイトさんにクラス含めて話してもらうようにと考えていたのに、マイクの野郎…。
くましろが以前バカみたいに食べて没収したチョコとケータイを持ってマイクを制する。
…今にも泣きそうなくましろにケータイを渡し、話題を逸らして職員室から追いやる。
マイクにいうとはぐらかされたが、面倒な問題を作るなとだけ言っておく。
15歳なんぞまだまだ子供、14歳の時から見ているがすこぶる気持ちがブレやすく、少しのことでキャパオーバーになりやすいくましろは喜怒哀楽がとてもハッキリしている。
無感情よりマシかもしれないが、特に母親絡みのことになると感情がブレやすい。
注目を浴びるし廊下で大泣きしてないといいが…。
若干の心配を抱えつつ帰宅。
今日のマイクのことについて話さないと、とは思っていたがまさか玄関を開けて第一声に「今日はすみませんでした!」と謝罪が飛んでくるとは予想してなかった。
てっきりぴーぴー泣いてるもんかと…
泣かないように口を一文字に結んだくましろの手を引き、リビングへ移動する。
「……で、さっきの謝罪はなんのことだ?」
「……職員室での、ことです。あと、その前?」
「…何聞いたんだよ」
「エンデヴァーと死神の子供がヒーロー科にいるらしいっていうやつと、二世は苦労してなさそうだよな〜って言ってました。」
まあ…よくありがちな。苦労してない奴なんかいない。
「でも、プレゼント・マイクの言う通りです。
特に悪口でもなかったし、隣のクラスの転校生どんな子なんだろみたいなやつですし…
嫌な注目なされ方だなって思って…勝手に自分で考えたんで。」
「……俺が何故、イレイザーヘッドであることをお前に今日まで隠していたか、分かるか?」
「…厄介オタクだから?」
なんだ「厄介オタク」て。真面目に答えろバカ。
「…なんだそれ…」
「グッズとか非公式で自分で作ったりとか…母さんに頼んで活動中の写真もらったりしてたんで…ストーカーみたいじゃないですか、ちょっと。」
…自覚あったんだな、意外にも。
「…それはまあ…個人の自由だ。第一俺に張り付いてプライバシー覗いてるとかじゃねえだろ。
…俺は、A組のアイツらのいう通りアングラな方だ。メディアに好き勝手言われたり、週刊誌に撮られてみたりする経験はあるが、それでもマイクやオールマイト…ひいては神代さんの比にはならない。
そんな俺が、人に見られるっつーのを俺以上に見られるのが確定してるお前に説くのは筋違いと思ったからだ」
「…筋違いなんて…」
「現に俺は入学した時、お前ほど噂の的になんかなってねーからな。
エンデヴァーさんとこも、お前もプロヒーローである教師たちからは注目の的だ。推薦入学と入試トップだから、なおさらな。……平気か?」
思ったより泣いてないし、マイクに言われたことを素直に受け止められているくましろを見やる。
「…はい。ネガティブなんで、多分ご迷惑かけます。でも!気にしないくらいになれるようになります、絶対」
そうか、と頭に手を置く。
「相澤さん、チョコありがとうございました。
泣くほど嬉しかったです」
「結局泣いたのかよ…まあ、よかったよ。マイクのことは悪く思ってやるな。あいつなりにお前のこと心配してンだ。あいつは俺なんかよりも、メディアに色々言われ慣れてるからな。良いことも悪いことも。」
「はい、分かってます。…分かってるんですけどね、頭では。心が追いつくのにちょっと時間かかります」
「…あんまり焦るなよ」
「焦るっていうか…再認識しました。母さんってやっぱ目立つんだなーって。…なんていうんですかね、なんか…身内なんでいつもあんな感じだし…
変な人だなとか、やりすぎだよなとはもちろん思ってましたけど。…それ思ってたの、俺だけじゃないんだなとか」
「……あの人は、あの人なりの正義というか…倫理観で動いているからな。悪く言われがちだし、お前もいい感情は抱いてないかもしれないが…
あの人は、自身の個性で市民を巻き込んだことは一度もない。そして必ず敵が攻撃を開始してから報復を始める。」
「…そうなんですか?」
やはり、知らなかったか。
「メディアにどうのこうの言われて、悪いイメージが付き纏っているが…
自分が大怪我しても必ず盾となって市民を救い上げてるぞ。…その代わり敵には倍返しだがな」
「ふっ、いいんだか悪いんだか…。昔、母さんに言われたことあるんですよ。
お前は父さん譲りで優しすぎる、アタシみたいになんなきゃ無理って」
優しすぎる、か…確かにな。
(まあ、確かに。お前には厳しさはないな)
(そうですか?)
(そうだろ、今までいろんな奴らに好き勝手言われてきた割に、反発して暴れた経験ないだろ)
(そんな……ゴジラじゃないんですから…)
(どんな規模で暴れる想定してんだよ)
(でも、制御…できるように今も訓練中なのに、全然できないときに個性使ったらゴジラ並みの災害になりません?)
(よかったよ、お前が優しい性格なのとあの日拾っといて)