Alien
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✳相澤消太
くましろが目覚めた。帰ってきたら血の気引いた青ざめた顔でぶっ倒れてるから、今度こそ俺の心臓が止まりそうだった。
意図せずガスを吸い込んだB組生徒の足を治してやろうとして全体を治癒し、ガスを請け負ってしまったらしい。
複数の怪我の治癒なんぞやってるようで今回が初めてだったので責めきれないが、心臓に悪かったと再三伝えてはいる。
「…また見てんのか」
爆豪と轟とぴったりくっついて寝ぼけてる写真。爆豪とも基本馬は合うようで、当人なりに仲良くしていたのを思い出す。
「なんか…信じられなくて」
「…アイツは大丈夫だ」
「……爆豪くんに、借りたジャージ返さないと」
「ヘイヘイ、俄然やる気になってるところ申し訳ねえがお前は隔離だぜ。狙われすぎてるからな」
マイクに言われて驚いた顔をするくましろ。
「賛成だな」
「え、オレだけ指くわえて見てろって言うんですか!?待って苦しい苦し、ギブギブギブ!!!」
生意気な事言いだしたので胸ぐらを掴む。
「雄英に忍び込むってだけで大事だった敵が、勢力つけて事ある度に俺ら…というよりお前ら生徒を奇襲し続けている。
今回は内通者の疑いもある、そんで1人誘拐されたし行方不明者もいる。……事の重大さがまだ分からねえか?」
「……」
「たまたま、誘拐されなかっただけでお前も名指しで指名されてたんだぞ
俺があの時止めなきゃ爆豪を探しに行くつもりだっただろ」
そう言うと押し黙るくましろ。
「相澤くん、あんまり追い詰めないであげて…でも僕も相澤くんに同意だよ。
最初から今回まで君はずっと狙われてる、向こうからしたらまるで悲劇のロミオとジュリエットのようさ。だから控えることも大事、…それは分かるだろ?」
根津さんが言えば頷きはするものの、不服そうな表情は変わらずだ。
「泣くなよ…別に戦力外通告じゃねえんだ、いい加減ネガティブやめろ」
そういうと子どものように声を上げて大泣きしだした。
「ああ、泣かせたね相澤くん…」
オールマイトさんにジト目で見られるが、痛くも痒くもない。無自覚なバカに現実を突きつけただけだ。
「1回誘拐未遂あるし、今回は相澤の言う事聞いておけよ〜お前のこと心配してんだからよォ」
マイクがそう言うとポロポロ涙を零しながらくましろが俯く。
「なんで全部お前だけでやろうとすんだよ」
「…え…?」
「他にもヒーローは居るだろ、頼れよ。全部お前じゃなきゃダメな理由あんのか?」
目をまん丸にしてるくましろを見て察する。この様子、「確かに…忘れてた」とか思ってんだろうな。
「……忘れてました…」
「だろうと思った」
泣きすぎて少し腫れてる目元を指で拭う。
「俺らじゃ影薄いってよォ根津さん、どうする?」
「困るなあ、皆もっと認知度上昇頑張らないとね」
「あ、そういうことじゃなくて…!」
マイクや根津さんに慌てて弁明しているくましろを後ろからニヤニヤと見守る。プロヒーロー3人の前で他のヒーローのこと忘れてた、と言い放てるのはコイツくらいだろう。
「おら、泣いた分ゼリー食え。また倒れんぞ」
「…学校行きたくない…」
「うわ〜珍しいこともあるもんだねぇ…。神代くんが登校拒否するなんて…」
「行けば行くほど狙われてる気がします…」
そう言うとまた思い詰めた表情のくましろ。誰もお前の責任なんて言ってねえのにな…。
「だけど、ここで辞めたらヒーローの名折れじゃないかな?……君が怖気づいてしまう気持ちもわかる、連続でいろんなことが起きてるし…必ず誰かが大きい怪我をしてる。
本部でも捜査チームを作って動こうって話が出てきてる、もう見て見ぬふりができないくらい大きくなってきたからね」
塚内さんがそう言うと、俺にもたれかかってくる。
「…相澤さんは、オレが守るから…オレのことは相澤さんが守ってください」
「そう言うなら師匠の言うことは素直に聞けよ」
なんとか飲み込んだようだ、近くにいる人間が顔見知りに誘拐されたなんて今すぐ駆けつけたい気持ちは大きいだろう。
だがコイツは子ども、向こうの誘拐犯も同じくらい子どもではあるがバックには頭の良い奴がいるんだろう。
子ども単身で投げ入れるほど、俺らは冷酷じゃない。
待っているしかないのは大変にもどかしいだろうが、これ以上混乱と被害を拡大させないために、大人が頭を悩ませて考えた結論だ。不服だろうがなんだろうが従ってもらわないと困る。
「なんです、反抗期みたいな言い方…」
「素直に言う事聞くまでは聞かないだろうが」
覚えがないとは言わせねえぞ、と軽く左の頰を抓りあげる。
「いひゃい…」
「大人に心配かけた罰だ」
「……じゃあオレもUSJでの分今やりますよ!?」
「いいぞ、ただ倍返ししてやる」
そう言うとやめておきます。と懸命な答えが聞こえてくる。
「根津さん…ほんとに相澤さんクビにならない?」
「何回聞くんだよ…」
根津さんが答える前につい笑ってしまう。眉尻が下がり、今にも泣きそうな表情のくましろの頭を撫でる。
根津さんも笑ってるし、オールマイトもマイクも…この場にいる大人全員の口元が緩んでるのには気付いてないんだろう。
「うん、そんなつもりないよ…責任の所在は僕ら教師陣にあるけど…相澤くんだけじゃないからね。だから安心しておいで」
「うう…」
「また泣くのか……少し寝ろ、疲れて情緒おかしくなってんだろ」
そう言い体を横に倒させると子供扱いするな、と文句が飛んでくるが立派に子どもだからな。個性の反動であんなにボロボロになる緑谷の腕を2回も治癒した上で、その後もいろんな生徒の怪我を治してたんだから体力の限界が来ていてもおかしくない。
そもそも日中はガッチガチに訓練していたしな…。心身ともに限界なのだろう。少し目を閉じて落ち着かせていれば寝息が聞こえてくる。
「マジで寝た…」
「ほらな、子どもだから」
「扱いが流石だね、相澤くん…でも君も寝てないだろう?」
根津さんにそう言われるが、とりあえずあとで寝ますと答える。入院しているくましろの意識が確認できたし、と根津さんたち3人は帰っていった。
静かになった病室で時たま定期的に看護師が様子を見に来る。経過観察も良好と教えてもらい、椅子をベッドの横に置き上半身のみ添い寝するように寝そべる。
動かしにくい、と言っていた左腕のリハビリメニューも考えないとな…。
傷跡がついた右腕を掴んで眺める。治るんだろうか…?腹に傷もあンのに…。
(……?あれ…寝ちゃってた…)
(相澤さん、相澤さん……止めずに浮かせて…隣に寝かせちゃお…)
(…ん…くましろ、起きたのか…)
(あ、ごめんなさい…相澤さんも寝ますよね?)
(……そうする…)
(うぐ……苦しいです相澤さん…)
(黙って抱き枕しろ…)
(手あったか…眠いんですね…)
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