Alien
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今日も、昨日と同じように個性を伸ばすための訓練を地道にこなしていく。
昨日より少し曇りがちで日差しがないのと、そのおかげで気温がぐんと上がらないからまだ楽。
「…ちょっと待ってろ」
「…?」
「補習組、動き止まってるぞ」
みんな寝不足で辛そう。
「だから言ったろキツイって。…砂藤・上鳴は容量が直接死活に関わる。容量を増やすには反復して使い続けるのが基本。
瀬呂は様子はに加えテープの強度、射出速度の強化。芦戸も溶解液の長時間使用によって皮フに限度がある、その耐久度を強化。切島は筋肉と硬度を上げることで相乗効果を狙う。」
いいな~~相澤さんのアドバイス。ずるいなぁ。指でのの字を書く。羨ましい。
「そして何より期末で露呈した立ち回りの脆弱さ!!おまえらが何故他より疲れているかその意味をしっかり考えて動け。
…麗日!青山!おまえらもだ、赤点こそ流れたがギリギリだったぞ。30点がラインだとして35点くらいだ。」
お腹が痛くてうずくまってる青山くんはすんごい顔で「心外☆」って言ってた。そんな状況でもきらめきを忘れない彼に拍手を送りたい。
「気を抜くなよ、皆もダラダラやるな。何をするにも原点を常に意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。何の為に汗かいて何の為にこうしてグチグチ言われるか、常に頭に置いておけ。」
原点…。
『お前にヒーローなんか務まるわけないよ、人殺しの間違いだろ?』
『触れるだけで止まらせちゃうんだって、危ないわ』
『ウチの子とクラス離してください!』
『みてー!またイレイザーヘッドのにゅーす!』
『頑張ってるのにあいつの新聞欄ちっちゃ。そんな小さいのでよくそんなに喜べるな』
『だってだいすきだもん、おかあさんとはちがうし。』
『んだとこの…』
『おおきくなったらイレイザーヘッドのサイドキックになるの、』
「なに拗ねてんだよ」
なんだこの「の」の量は、と言われる。確かに円をかくようにのが大量生産されている。
「…」
「…くましろ?…おい、何考えてる」
オレの顔を見た途端、みるみる相澤さんの顔つきが変わる。般若みたいですごい怖い。こんな怖い顔、見たことない。
「…不純だなって思っただけです…原点が」
見たことないくらい怒った顔されてちょっと足が震える。
「…全部言え。全部だ」
母さんにあんたとは違うってことを示す、人殺しじゃないと示す、自分の個性が役に立つことを周知させる、憧れだったイレイザーヘッドのサイドキックになる、認知度も人気度もあげて自分みたいな扱いの子を減らすような言動をする、それが主な原点だと伝える。
顔つきはずっと怖いまま。
「いいかバカ……最初から人を助けるためにヒーローになる!なんて奴はごく稀だ…。
オールマイトみたいにかっこよくなりたいとか、そういう憧れで大体雄英に入ってくる。そして月日を重ねるごとに憧れだけでは済まないことに気づき、明確な目標を立てていく…13号と同じように災害救助専門で人を救いたいとかな」
右手を握りしめられる。
「ほんとお前はくそまじめすぎてバカだな…動機なんてなんでもいいんだよ……ここまでキツイ練習や訓練をこなすのはこの原点があるから、くらいでいいんだ。それがあるからこんな地獄みたいな合宿耐えられるんだろ」
はい、と返事をする。
「お前の中立の考え方は一理あるが、お前が反面教師にしてる母親と同じように暴走しかねない。誰とも交わらない自分だけの正義はたしかに大事だが、止める人物がいないと尖りきった思考になる。
…だから、お前の正義の中に俺も入れろ。お前が偏りそうな時は俺が止めてやる。」
「……なんで、そこまで良くしてくれるんですか?相澤さんが望んでるように変われないかもしれないのに…」
声が震える。
「愛弟子なんだろ?」
「……」
「違うのか?」
唇を噛み締めて俯くオレの顔を覗き込んでくる相澤さん。ズルいなあ…。
「ほんとズルいですね、相澤さん…」
「泣くなよ」
「なんでそこまでオレのこと手放しで信じてくれるんですか」
「…随分疑心暗鬼だな、今日は…。」
「…昨日、出久くんと話してたから…。できれば相手に自分が思うように変わってほしいけど、そう願うのも誘導するのもワガママで烏滸がましいよね、って。」
「悪かったな、ワガママで烏滸がましくて」
「ちが、相澤さんがとかじゃなくて…!」
おでこを人差し指でズイ、と押される。
「なんで信じる、だったか…?答えてやってもいいが…納得するかどうか。お前にも聞くが、オレは入試前お前に正体明かしてなかった怪しい男だったろ。1年、なんで信じてついてきたんだ?」
どっこらせ、と相澤さんが座るのでオレも横に座る。
「……そう言われると難しいですね……。相澤さんが目を見てヒーローになれるって言ってくれたから…は…きっかけで…。
……オレを信じて、本気で訓練してくれてるんだって実感してマジなんだ、って思った…から…?」
最初から100%信じてたか、と言われるとちょっと自信ない。けど、知らない子供に毎日こんなに親身になってくれるのってマジだからでは?って確信に近いもので信用していくようになった…んだと思う。
「フ、そうか。……最初、据えた目をしてたこと、半グレや敵ではなく一般家庭の子供だと思って声をかけたことも前に話したろ。」
頷く。
「あのあと、訓練をし始めたのは引き止める意図もあった。
だが、お前一度だって面倒だとかこんなことやったって意味ないとか弱音も文句も吐かなかったろ。
俺は名前聞いてすぐに神代さんの息子だと分かっていたが、正体を明かさない俺の言うことを素直に聞いて、文句も言わない。その様子を見てこんな知らないやつに言われた無責任な言葉にしがみつくくらい、本気なんだなと感じたよ。」
「無責任では…」
「俺が雄英の教師じゃなかったら、好き勝手言う野次に近いだろ?
…そんでもって個性は禁止されてて宝の持ち腐れみたいな状態だ、磨き上げたくなってな。
お前が俺を信じたように、俺もお前を信じただけだ。日々のお前の言動を見て……な。」
昨日、出久くんと話していた「生き様」という言葉を思い出す。
「……」
「納得したか?」
しましたと答えると、意外だなと鼻で笑う相澤さんをちょっと睨む。
「そりゃ嫌味の一つも言いたくなるだろ、突然なんでなんでって問い詰められたら」
ぐうの音も出ない…。
「それはすみません、色々考えちゃって…時間も…無駄にして…」
「分かったならいい。体ほぐせ」
再開すんぞ、と言われる。
「…結論づけると、やっぱり相澤さん大好きです。」
「残念な結論付けの仕方すんなよ」
全てパーにするつもりか、と言われる。
「パーとはなんです、パーとは。嬉しかったんですもん、愛弟子発言…」
「口が緩んでるぞ…紛れもない事実だろうが。よし、再開するぞ。疑心暗鬼は終わりでいいんだな?」
頷く。そんでもう一回時間無駄にしてすみませんって謝る。もう迷いたくない。
(昨日も言ったろ、連続で個性が使えない時・逆に使えてるときの次が疎かだ)
(う、わ!)
(明け方雨降ったからぬかるんでるぞ、気をつけろ)
(次、着地からの体制改善が遅い)
(いた〜!ド派手にコケた…も〜!!!!)
(動きが単調になりすぎだ、パターンを増やせ。爆豪みたいな頭いいやつにはすぐバレるぞ)