Alien
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オレは見てしまった…。カレーを持ってこっそり歩く出久くんの姿を。まさか…おかわりしづらくてみんなに隠れて食べるのかな?とかこの短期間にできたペットにあげるのかな?とか色々考えた。
でもどこにも座る様子ないし、ペットの線濃厚。
「出久くんっ」
「うわっ!?」
「コソコソしてどこ行くの?」
持ってあげる、とカレーの皿を取る。
「べっ、別にコソコソはしてないけど…あの…くましろくんが妖精って言った子…僕たちのこと…たぶん、ヒーローのこともよく思ってないみたいでさ…。
ご飯も食べに来てる様子なかったから、お腹空いてるかなあって」
なるほど。
「…よく思ってない、か~。昔を思い出すなぁ」
「くましろくんも…?」
「うん、身近にいるヒーロー…まあ、母さんのことなんだけど。そこそこ最低でね……植えつけられて育ったって言うのかな。
寂しかったんだと思う、いろいろなことで。優先順位は世界と父さんが上だし、敵なんて全員悪いに決まってる、温情の余地なしって感じで…。」
出久くんが息を呑むのが見なくても分かる。重い話だよね。
「それは分かるんだよ、母さんなりの正義。でもさ、なりたくなくても立場をふるい分けたらヒーローでもなく、市民でもなく、敵になっちゃう人って少なからずいると思うのね。
綺麗事かもしれないけど…ヒーローの仕事って悪人と判定して捌くことでも、悪いことしたらこうなるんだぞ!って見せしめすることでもないと思う。
あくまで定められた法を破った人を、いかに被害少なく影響小さく捕まえることが第一だと思うんだ。その後に罪名がつくわけで………そこまで偉くないでしょう?って思うの」
「っ!」
少し怯えたような顔をする出久くん。やばい、凄むなって言われたときの顔してたかな…。
「相澤さんと会って、その思いは強くなった。この先もきっと、ずっと誤解されるだろうけどオレは敵に肩入れしてるわけでも、真ん中って言ってどっちにもいい顔したいわけじゃない。
あなたはあなたの正義、君は君の正義、でもオレはオレの正義で動いていきたいから中立を名乗ろうって決めたんだ。」
「すごい、立派なんだね…くましろくんは。しっかり自分の未来と、立ち位置が見えてるなんて…
僕、正直ヒーローを全面的に肯定しかしてないから…そういう意見があるってことも考えたことなかったよ…」
少し落ち込んだような声で言う出久くん。
「うーん、でも今知れたからいいんじゃない?だって俺の母さん、オレらの倍は生きてるのにまだそれに気づいてないんだよ?
聞き入れて、その意見を受け入れられる出久くんは本当に凄いよ!皆出来ることじゃないよ…それこそ、この世の皆がそれで来てたら敵なんて居なくなるだろうし!」
そうかな、と地面を眺める出久くんの顎を上に向けて目を合わせる。
「そーなの!出久くんが嫌いって言われたわけじゃないんだから、落ち込まないの!
カレーの甘口が好きな人もいれば、辛口じゃないと無理って人もいるしそもそもカレーなんぞ好きじゃないって人もいるんだよ?」
「ははっ、かっちゃんのこと…?」
バレたか。足跡をたどって二人で歩いて、ゴール地点。ここで足跡が途切れてる。
「よっ、妖精くん!カレーだよ〜」
「くましろくん、妖精ではないよ…」
もう妖精ポジなの。と言うと多分怒るよ…と言われる。
「てめェ、何故ここが…!?」
うわ、爆豪くんみたい。目つきといい口調といい。
「ご、ごめん…足跡を追って…!ご飯たべないのかなって…」
「置いとくね、妖精さん」
少し近くに寄って置く。カレーの匂いってお腹空かせるから、食べてくれるといいけどな…。
「いいよ、いらねぇよ。言ったろ、つるむ気などねぇ。俺のひみつきちから出てけ」
ひみつきち、ねえ。多分ラグドールさんの個性でバレバレだと思うけど…それは言わないでおこう。
「てめェ、何笑ってんだよ」
「いや…あのさ、おれらの中にさ髪ツンツンで金髪みたいな男の子居るじゃん?爆豪って言うんだけど…そ、そっくりで…もしかして弟?」
「くましろくん…それ両方が聞いたら怒ると思うよ…!」
確かに妖精さん超怒ってる。それが更に似てる。
「"個性"を伸ばすとか張り切っちゃってさ…気味悪い。そんなにひけらかしたいかよ、"力"を。」
いつか、同級生に言われた言葉と似ていた。
「…大人になにか言われたの?」
「は…?」
「それとも、学校の同級生?」
「……」
どっちもかなあ、この反応は。
「君の両親さ…ひょっとして水の"個性"の「ウォーターホース」…?」
明らかな反応、子供ってわかりやすいな。ウォーターホース…なんか1回くらいニュースで見たことある気がするなくらい。
出久くんはすべてのヒーローのいいところを吸収しようと小さい頃からノートをまとめていたから知っているらしい。彼の努力の深さはいつも目を見張る。
ウォーターホース…いつか殉職したニュース見た気がするけど…。
「…マンダレイか!?」
「あ、いや、えっと…あー…ごめん!うん…何か流れで聞いちゃって…情報的にそうかなって…」
「残念な事件だった、おぼえてる」
「……うるせえよ。頭イカレてるよみーんな…。馬鹿みたいにヒーローとか敵とか言っちゃって、殺し合って…"個性"とか言っちゃって……ひけらかしてるからそうなるんだバーーーカ」
「ひけらかすかぁ…そうかもね」
「くましろくん…?」
「力と力のひけらかし合いだもんね所詮。…でもさ、隠したくたって隠せないこともあるんだよ、妖精さん。オレみたいにね…」
個性に対してもヒーローに対しても敵に対しても、この子はオレや今まで居た子たちとは似つかない考えを持っている。当たり前だけど色々な人がいるってことを目の当たりにする。
「なんだよ、もう用ないんだったら出てけよ!」
出久くん、なんとも言えない辛そうな顔をしている。
「いや…あの……えー、友だち…僕の友達さ!…親から"個性"が引き継がれなくてね」
「……………は?」
「先天的なもので稀にあるらしいんだけど…でもそいつはヒーローに憧れちゃって、…でも今って"個性"がないとヒーローにはなれなくて、そいつさ、しばらくは受け入れられずに練習してたんだ。
物を引き寄せようとしたり、火を吹こうとしたり…"個性"に対して色々な考えがあって一概には言えないけど、そこまで否定しちゃうと君が辛くなるだけだよ」
えと…だから、と続けようとした出久くんの言葉を妖精さんが遮る。
「うるせぇズケズケと!!出てけよ!!」
「……………ごめん…とりとめのないことしか言えなくて…、くましろくん、行こっか」
「そだね。…なんか嫌な予感するからさ…もうしばらくここには来ない方がいいよ」
「はぁ…?」
「ニュースとかでめちゃくちゃ報道されたから見たかもしれないけど…前に学校の授業で敵が襲撃したことがあってね…なんか…その時と似てる。
怖がらせたいんじゃなくて、用心してねってこと。冷めちゃうから食べな。」
こんなに何かイベントごとに襲撃なんてあり得ないけど…ヒーロー殺しの影響でそういう思想家たちが敵連合に集まったっておかしくない。現実になっているかもしれない。
「くましろくん…手、震えてるよ」
帰り道無言で帰ってると出久くんに手を掴まれる。
「…怖い…ヒーロー殺しのときと…USJの時と似てる…」
「何とかしようね、僕らで。大丈夫、大丈夫だよ」
ぎゅ、と迷子防止も含めて強く手を握ってくれる出久くん。手があったかくなる。
(帰ったらお風呂入ろうか)
(うん…あ!反省ノート書かないと)
(…反省ノート…?)
(出久くんの分析ノートを真似して、自分の反省するとこ書いてんの!職場体験から始めたんだ)
(へえ、すごい!)
(まあ、ステインのせいでほとんど書けずに終わっちゃったんだけど…)