13 With …?
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With 数珠丸
異世界に行けるという鏡をゲットしたっていう学園長に呼び出された。お試しで使ってみてほしい、と先生方の前で使用。グリムを頼むためにエースたちと、念の為で事故にならなように寮長たちもいるからなんだか大事だ。
「では、息を吸って……」
「主、手を」
小夜ちゃんが手を差し出してくれる。頼もしい。
「では、行きますよ」
パキンと鏡が割れる音と一緒に重力が増す感覚に押しつぶされそうになる。立ってられない……小夜ちゃんの手は絶対離さないようにしていると、雀の声。
「あ、主!??!小夜も…二人とも平気?」
「小夜と主が帰ってきたって?!」
「僕、薬研呼んでくるね!」
「侵入者がいるようです……大典太、ソハヤ。頼みます」
「あぁ、分かった」
次々と懐かしい声が聞こえる。ドタバタと走り回る足音や本体を手にする金属音、添えられた手の暖かさに本丸に帰ってきたんだと直感的に理解した。
「……僕、なんか気分が……」
「私も……気持ちわる、い……」
「わっ、二人ともしっかり……数珠丸、主のことお願い」
ジャラジャラと数珠が擦れ合う音が聞こえたあと、ふわりとお香の臭いがする。私が数珠丸にあげた白檀のお香の香り。
「数珠丸……?」
「えぇ……よくぞ戻られました。突然姿を眩ませたあの日からずっと、貴方の無事を祈り待ち侘びておりました」
見上げると少し窶れつつも安心したような数珠丸と目が合う。そうだ……ツイステッドワンダーランドの世界に行ってから、もう半年くらい経ってたから忘れかけてたけど…いきなり世界が変わった日の近似は数珠丸だったんだ。
「……また痩せてる」
「何を仰いますか……少し横にしますよ」
いつの間に敷かれていた布団に横になっていると、これまたドタバタとした足音が近づいて来て、勢い良く障子が開けられる。
「大将ッ!………本当に帰ってきたんだな……小夜、無事に大将を連れ帰ってきてくれてありがとうな。気分が優れないって聞いたんだが…様子を見させてくれ」
「うん……」
これまでいた世界のこと、帰ってこれたきっかけを話していると数珠丸が立ち上がり部屋を出ていく。
「そういえば、侵入者が…って光世たちは平気?」
「あぁ、3人だったか、変な格好した……主と同じくらいの幼子だな……言葉は通じるし敵意もそこまで感じないから水なんか与えながら見張りもつけてはある。大将と小夜はまず体調の回復を優先だぜ…今歌仙が張り切って夕餉作ってる」
起き上がろうとしたら有無を言わさない笑顔で押し戻される。こういうときは薬研の言うことを聞いておかないと、薬研の後ろに何人も座りながらお説教を受けることになる。
大人しく横になる前に、小夜ちゃんと布団を並べてほしいとだけお願いする。
「小夜ちゃん、手…繋いでてくれる?」
「うん」
あったかくて小さい小夜ちゃんの手を握ると眠気がやってくる。乗り物酔いのような気持ち悪さがだんだん小さく気にならなくなって眠気がやってくる。
再び目を開けると、陽が傾いてへやがオレンジ色に染まっている。
「おはよう、主……体調はどう?小夜は良くなったって聞いたけど……」
「清光……おはよ……うん、気持ち悪さなくなったかも。どれくらい寝ちゃってた?」
「ほんの数刻……これ、飲んで」
「ありが……小夜ちゃんは?!」
「はい、立ち上がらない。お腹空いた〜って歌仙におにぎり強請ってるよ」
もぬけの殻の布団を見て立ち上がりかけた私を清光が肩を押して止める。よかった、お腹が空くほど回復したならよかった……白湯を飲んで熱を図り、平熱であることとフラつきがなくなったことを清光に何度も説いて部屋から出してもらう。
「数珠丸はどこ?」
「あっち、連れてくよ……主はお腹空いてないの?」
「ちょっと空いたけど、侵入者っていう人たちに心当たりがあって……確認だけ先にしておきたいの」
「?…知り合いってこと?」
「かも、しれない……かな」
「マジか……主が変なとこ行っちゃっただけでも大問題なのに、もしかしたらそっちの人間たちが来たらそれもそれで………はい、ここ。数珠丸〜、主連れてきたよ。入ってもいい?」
「えぇ」
「失礼しま……「監督生〜!!!!」おうふ……」
「静かになさい、主が怖がっているでしょう」
数珠丸が私を隠すように頭を抱きしめてくる。光世とソハヤも睨みつけるように座っていて、この3振りに囲まれていたらそりゃ泣きつきたくもなるよな…と同情すら湧いてくる。過保護な男士が多いから……ぽんぽんとあやすように叩くと数珠丸に顔を覗き込まれる。
「光世、ソハヤ……ちょっと表情和らげて。数珠丸も。清光もここ座って」
「いいの?分かった」
「まず、こちらの3人は私の知り合いです。私が居た世界の人間…左から、ヴィル・シェーンハイトさん、カリム・アルアジームさん、アズール・アーシェングロットさん……すみません、来るのが遅れてしまって」
「全くです、どれだけ弁明しても聞く耳持たずで……何をなさってたんです?」
「なんか気持ち悪くて……先輩たちは平気でした?」
「魔法慣れしてないから酔ったんでしょう…アタシたちはそこの二人にいきなりシバかれた意外は平気」
「………光世、何したの」
「誰だと尋ねたら武器を構えてきたから、戦う意志があると判断して大人しくさせたまでだ」
「主と同じくらい幼子だからなぁ、もちろん加減したぜ?時間遡行軍じゃなさそうだったしよ」
「過信は禁物です、禁術など使用してくる相手だったらどうするのです」
「う、うん分かった。数珠丸の考えもソハヤの考えも理解した!けど!こちらの3人は間違いなく人間で、お世話になってた先輩たちだから!……学園長とかは居ないんですかね」
「いたらアタシたちより先に捕まってるわよ、一番見た目だけなら胡散臭いもの」
そ、れは……同意しづらいけど確かに。仮面つけてるし男士たちが警戒しそうな見目だ。
「清光、夕餉って…」
「歌仙は世話焼きだから、そのガキンチョ共の分ももちろん作ってるよ」
よかった、さすが歌仙。
「じゃあ夕餉の前に皆に集まるように伝えておいてくれるかな?これまでと、これからの話をしよう」
「ん。お前ら、主に迷惑かけんなよな」
「こら、余計なこと言わない!迷惑かけてた側なんだから……すみません、本当に」
「なぜあんたが謝る、無理やり連れてきたわけじゃないんだろ」
「それはそうなんだけどさ……」
「にしても……ここって監督生の言ってた『ホンマル』ってとこか!?見たことねぇ内装でキレーだな!」
「確かに……屋内で履物を脱ぐなんて落ち着かないわ」
「これはなんです?干し草?」
わあ、異世界文化に興味が止まらない様子の先輩たちはちょっと珍しい。
「これは床材で一般的な『畳』といいます。いぐさという草を編んでるものなので……たまに乾燥でささくれちゃったりするので、靴下を……カリム先輩、こちら履いてください」
「タタミ……」
夕餉ができたと包丁くんが伝達しに来たので、広間へ移動する。あまりの男士たちの多さに先輩たちはびっくりして立ち尽くしていた。
本丸とはなにか、小夜ちゃんは何なのか、私は何をしていたのかはざっくりとしか話していないし、半信半疑だったと思う。けどこれだけの男士に囲まれてその男士が全員刀を持っていたら、信じざるを得ないんだろう。
「あ、あるじさま…!」
「おお、虎くんも元気だね……はい、お座りして。ごこちゃんも泣かないよ」
短刀たちは何振りか泣いちゃう子も居たので、頭を撫でてなんとかあやして上座に座る。
「よし……皆、揃ってるね。まず、ただいま。長いこと留守にしてごめんなさい……小夜ちゃんと不思議な世界に言ってました。そこでは半年お世話になってて、今日帰ってこれたのは偶然で。
お試しでって試したら戻ってこれたんだけど、その不思議な世界の人も巻き込んでしまいました……こちらの人たちは私のお客人です。
こちらから、ヴィル・シェーンハイトさん、カリム・アルアジームさんアズール・アーシェングロットさん」
「………では貴方がお試しでこちらに戻れたように、そちらの子たちも戻る可能性があり、貴方もまた巻き込まれる可能性があると?」
流石は宗三。伝えようとしていたことを先に口にしてきた。
「うん……でもまた帰ってこれるから」
「ふむ……確かにそちらの子らから不思議な気を感じるな」
三日月がそう呟くと光世が続く。
「光る斬撃のようなものだったり、火を出してきた」
「なんていえば通じるかな、それは魔法っていってね……超能力、みたいな?先輩たちは魔力を持っているからこのペンを通じて魔法を使えるの。帰ってきたのも魔法の鏡を使って帰ってきたんだ」
「ほう、魔法…!面白いなあ、俺も見てみたい」
「三日月、困らせるのはだめだからね」
また急にフラッと4人が消えても帰ってくる術はあるから、と伝えてそのまま大広間で夕餉を食べる。みんなで食べるなんて久しぶりだ。意外と先輩たちと皆が打ち解けるのが早くてよかった。問題は……数珠丸が私のことを全く手放さなくなった。
「どちらへ?」
「ほっほっ………まるで雛鳥のように主の跡を追いかけて……」
小烏丸に揶揄われても数珠丸は私の後ろにぴったり付いてくる。さすがにお手洗いやお風呂のときは来ないけど……。
「数珠丸、いる?」
「えぇ…もちろん」
「寝てほしいな」
「……」
寝ずに番をする必要はない。他の男士たちがやってくれてるから。その気持ちで告げると部屋に入ってきた。
「できれば手を繋いで寝てほしい」
「……しかし…」
「先輩たちは太郎太刀が見てくれてるし、本丸周辺は髭切たちが見てくれてるでしょう……だめかな」
「仕方のないお方ですね…」
差し出された左手を掴んでぐいぐいと布団に引き寄せる。数珠丸はこのままだと朝まで座って寝るだろうから。
「貴方が狭いでしょう」
「いいの」
いい香り。ふんわりとお香の香りがしてくる。白檀の香りに包まれて眠る。数珠丸も安心して眠れるといいな。
少し肌寒く薄暗い時間に目が覚める。あれ、本丸から見える花は彼岸花だったっけ。……いや、夏の景趣ではなかったような?ぐるりと上も下も左右も見渡してみれば、住んだ青空と1面の彼岸花。綺麗な景色ではある……いやに静かなのが不気味だけど。
「主」
「?」
数珠丸の声が聞こえたのに居ない。おかしいな…?
「主、こちらです…主」
夢を見ていたのだと理解した。汗だくで起きた私を心配そうに覗き込む数珠丸の表情を見てさっきの不気味な景色が一切ない本丸に帰ってきたのだと。
「魘されていました、平気ですか……?」
「…うん…なんか…ちょっとだけ不気味な夢見た」
隣りに居てくれてよかった。
「帰ってきたばかりで霊力が乱れているのでしょう……もう少し眠ったほうが良いです」
「まだそんな朝方?」
ほんの数時間しか経ってないと返された。確かにまだ外は暗い。顔の汗を拭いて再び横になる。
「……数珠丸いい匂いするね」
「ええ、毎日焚いているので」
「気に入ってくれたんだ」
「とても…他の刀剣には与えぬよう我儘を言いたいくらいには」
珍しい、数珠丸がそんなこと言うなんて。見上げると早く寝なさいって怒られた。理不尽だ。
(じゅ、数珠丸、過保護すぎるよ……)
(彼らのいる異世界に戻ると限らないでしょう)
(数珠丸赤ちゃん返りしてるじゃん、主の手間取らせないの)
(赤子返りなどしておりません)
(抱きついてよく言う……主、あのガキンチョ共起きたよ)
(ありがと清光……じゃあ労働しに行こうか)
(少し休んではいかがです?帰ってきたばかりというのに)
(怠けちゃだめだし、いつも通り過ごす方が落ち着くから)
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