チビ同士の喧嘩・男主
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言い争い
*アズール・アーシェングロット
はあ、と大きなため息が何度も無意識に出る。頭を抱える問題ばかり起こしやがって……!
「ね〜、この子だぁれ?」
「……」
僕の目の前にはエレンタリースクールの時くらいのフロイドと、ナマエさんが少し落ち着かない様子で座っている。下級生のユニーク魔法によって年齢操作をされてしまった2人は記憶も当時の頃に戻っている……らしく、フロイドは顔見知りだから良かったものの、ナマエさんは僕達を大変に警戒しており、今にも泣きそうな表情を浮かべている。
「フフ、まさか子守りをするハメになるとは思いませんでしたね」
「片割れだけでもどうにかしろ……煩くてたまったもんじゃない」
ジェイドにそう言うと元気でよろしいじゃありませんか、と言われる。暴れまわって既にモストロ・ラウンジの備品をいくつか破壊している癖によく言う……。ジェイドの給料から差し引いてやるからなと脅してナマエさんに向き合う。
「ユニーク魔法をかけた契約違反者によれば、かけられた際に受けた記憶は引き継がれないそうですが……年齢操作はできるものの、元に戻すには時間経過で戻るのを待つしかないとのことで」
「ハァァ………気が遠くなりそうだ」
「ぼく、いえに帰る……」
「おや、いけません。迷子になってしまいますよ」
「やだ……っう、やだぁ……!」
ぽろぽろと大きな目から泣きだしてしまうナマエさんに手を掴んで止めたジェイドも固まる始末。今のナマエさんしか知らないがあのフロイドに付き纏われ、挙句両想いになって番関係になったから振り回されるのに慣れてると思いきやこうも怖がりで怯えてよく泣くとなると扱いが難しい。
「なんで泣かせるわけぇ?ねー、名前なんてゆーの?」
「…っ、う、ナマエ…」
ゴシゴシと雑に目元を拭うフロイドを見やる。こいつ、こんな番になる前でも甲斐甲斐しい一面があるのか…。
「おや、フロイド…フフ、やはり番には優しいのですね」
「……は?つがい?……だれが?」
きょとん、とした顔に僕も続く。
「ナマエさんの、ですよ。お前がしつこく追いかけて追いかけて番にしたんです………え?」
素っ頓狂な声が出てしまった……見たことないくらいフロイドの顔が真っ赤だからだ。耳まで赤い……こんなに恥ずかしがる姿は見たことない。
「フロイド…っふ、っく……耳まで真っ赤で…っ」
しゃがんでいたジェイドは膝から崩れ落ちながら笑い崩れているが、睨むことしかできないくらい顔が赤いフロイドはこういうハプニングでもない限り見られない姿だろう。
「どうしたの?おねつ…?」
「……っ!!!べ、つに」
ナマエさんの真っ白な手が額に伸びてフロイドは首まで真っ赤にしている。……面白い、例えば同じエレメンタリースクールに通うことになっていたとしてもフロイドはこうやってナマエさんに一目惚れしていたのだと思うと運命というものが本当にあるような気さえしてくる。
「本当に一途なんですねぇ……フロイド、ナマエさんはお前と違って顔見知りが一人も居ない状態です。加えてここは通ってたエレメンタリースクールより……5倍ほど敷地があります。迷子になっては大変なので、二人で一緒にいてください……出来ますね?」
「はあ?なんでオレが…」
「何を仰います、一目惚れした未来の番なんでしょう?番の世話くらいしなさい」
「つがい…?」
ナマエさんはまだ分かっていないようで首を傾げている。ひとまずびっくりするくらい顔が赤いフロイドとそれに笑い転げるジェイドに涙も引っ込んだようで一安心だ。
常に手を繋ぐように指示し、また耳まで赤いフロイドを心配そうに見守るナマエさんにフロイドは怖くないか?と聞くと怖くはない、と返ってきた。ナマエさんもやはり大概にフロイドバカなんだな……普段のバカップルぶりを思い返しても納得しかない。
「ナマエちゃんはなんの人魚なの?」
「オニイトマキエイ」
「へえ、じゃあマンタちゃんね」
「?うん」
ひとまずナマエさんの所属寮長であるヴィルさんに説明しに行かなければとポムフィオーレ寮へ移動中、後ろからはしゃいだ声と静かな声が聞こえてくる。
「マンタちゃんも人魚なのになんで一緒じゃねえの?」
「……さぁ…?」
「鏡が魂の素質を見分けますからね、ほら着きました。ナマエさん、少し前に来てくれますか?」
「う、ん」
「オレも〜」
手を繋いだまま前に出て来たフロイドは機嫌が良いようで……。悪くなって暴れられるより遥かに良いので放っておく。
「なぁに?アズールとジェイドが揃いも揃っ……まさかナマエ!?」
「すみません……契約違反の方とお話する際にフロイドの機嫌を維持してもらおうと同席を頼んでいたらユニーク魔法に巻き込まれてしまいまして……」
「目元が腫れてるわね…泣かせたの?ウチの可愛いナマエのこと」
「人聞きの悪いこと言わないでください!……この当時の記憶に戻るようで、人見知りが凄すぎて泣いてしまったんです。決して泣かせようとしたわけでは……」
「へぇ……ってことは何、フロイドとのことも覚えてないの?」
「番の意味もご存じない様子で……まぁフロイドは別でしたけど」
「だから揶揄うのやめろっつーの!」
「アラ、おませさんね…?すぐそうやって大きな声出さないの、品がないしアンタの可愛い番予定者が脅えてるわよ」
ヴィルさんがそう言い視線の先を辿ると、おどおどと小さくなってるナマエさんがいる。
「あ……マンタちゃん、…ごめんねぇ?」
「記憶無くしても互いに惹かれ合ってんの?ほんと物好きね、ナマエって」
眉を下げて申し訳なさそうに謝罪するフロイドを見てヴィルさんがため息をついている。互いに……なのか?アレは…。
「ナマエは相当警戒心高いわよ、だからアンタら1年の時なんか話したことないんじゃないの?でもフロイドにはすぐ名前名乗ったりしてるんなら好きっていかなくても警戒心を解くくらいには何かを感じてるんでしょ」
「な、なるほど……確かに1年生のときはナマエさんと話したことがありませんでした」
目をつけていたし、たとえば魔法薬学のようなペアを組む授業で話したことはあるものの事務的な会話のみだ。大げさに言えば初対面に対する人の態度は少しイデアさんに似ている気がする。
「ぼくお家にかえる……ここいやだ…もう帰る!」
「あらら、泣いちゃいました」
「なんとかしなさいよフロイド、番が怖がってるじゃない」
全くとしてフロイドに手を貸すつもりはないジェイドとヴィルさんがそう野次を飛ばす。イデアさんのように初対面の人に囲まれるのが苦痛に感じるタイプなら、今この状況に相当ストレスを抱えているはず……。
「マ、マンタちゃん…泣きやめって」
「やだ、離して…っいた!いたい!」
「逃げようとするからじゃん!一旦座ってよ」
「いやだ!ヒレうまく動かないし、やだ!」
「へえ……ナマエって結構癇癪起こすタイプなのね」
「どうするんですかヴィルさん、彼爆発しそうですよ」
「どうしようもないでしょう、アタシが出たところでアタシも今は知らない人よ…余計泣かせるだけ。今一番距離感近いのはフロイドだからフロイドに八つ当たりしてるのよ……相変わらず甘ったれね」
一切止める気もなんとかする気もないヴィルさんに頭を抱えつつ二人を見やると手を繋ぎ……いやフロイドが引っ張りながら怒鳴り、ナマエさんは家に帰ると泣き叫んでいる。
「だから無理なんだって言ってるじゃん!帰れねえんだよ!」
「やだ、帰る!!帰る帰る帰る!!!」
ブワ、と魔力が高まるのを感じた瞬間に強い水流で体を押されたような衝撃とポムフィオーレの壁に切り傷ができる。
「いった……何すんだよ泣き虫!」
「…泣いてない!」
「嘘つけ大泣きしてるじゃん!」
「してないったら!」
「ストップ!取っ組み合いは禁止、するなら中庭かグラウンドでやりなさい……ナマエ、この壁は何?アンタの仕業でしょ」
「ぅ…あ、の…」
「知らない人に囲まれてパニックになるのは理解してあげるけど……それにしては魔法のコントロールが上手なのね?わざと目の前のフロイドを避けて壁に向けたでしょう?……つまりこの壁を傷つけていいって思ったのね?」
「ちが、」
「嘘おっしゃい、アンタが嘘つくときの癖くらい認識してるのよ……戻ったらきっちり説教してやるから少し頭冷やしなさいこの馬鹿」
「いだっ」
「アンタも痛がるのに無理やり力込めるから状況悪化すんのよ、番には優しくしろって教わんなかったの?」
「いっで!!!何すんだよ!!」
フロイドには2倍くらい強めのデコピンをして喧嘩を収めた?ヴィルさんにジェイドと二人で目を丸くしてるとこれ以上壊される前に早く戻せ、と寮を追い出された。
「……さっきのホント?」
「…なにが?」
「わざと外したって」
「……当たったら痛いから…」
「ナマエさん、あんな感情的に放った魔法をよく反らせましたね」
「全く……ナマエさん、君は正しくはここナイトレイブンカレッジに入学し2学年になる年齢です。一時的に今のその年齢に魔法のせいで戻ってしまっているだけ…僕もジェイドも、そして同じく戻ってしまったフロイドもあなたの事を学友として迎えています。だから警戒心を解いてはくれませんか?」
「そうですね……フロイドは貴方の番として甲斐甲斐しく過ごしています。少し乱暴ですが…一途に」
僕のあとにジェイドも続いてそう言えば、分かったと返ってくる。
「ん」
「……いて」
「そんな力込めてねえもん…マンタちゃんが手離そうとするほうが力バカ強かった」
「バカじゃないもん」
なんの言い争いをしてるんだこいつらは……まあまた大人しく手を繋いでるから良しとするか…。
「いだ」
「マンタちゃんさぁ……目ぇ合わねえけど見えねえの?」
「弱視、でしょう。ぼんやり輪郭でしか見えないんですよね」
「なんで分かるの?」
「お友達ですから…フロイド、メガネをつけてたアズールのように矯正しようがありませんので壁や椅子…テーブルなどにナマエさんがぶつからないよう、エスコートをお願いします」
「はぁい……じゃあオレのことも見えねーの?」
「色はわかる」
片手から両手へ、まるでダンスを踊るように手を繋いでフロイドがラウンジ内を進んでいく。やはりフロイドに対しての警戒心は薄れているようで、フロイドが手を差し伸べると自然にナマエさんも手を取る。
「ラブラブですね」
「バカップルの間違いでは?……これが数日続くと思うと頭が痛いな」
「フフ、いいじゃありませんか。僕らが子供の頃見られなかったフロイドがたくさん見れて……今のうちに記録にでも残しておきましょうか、実はさっきの顔を真っ赤にしてるフロイドは撮影してました」
「お前…………なんと趣味の悪い」
ドン引きしながら言うも思い出ですよとニコニコしてるジェイドに巻き込まれたナマエさんを憐れみつつ、程々にしろと釘を刺しておく。
(マンタちゃん、こーこっ!イス登ってきて)
(よ……いしょ、おわ)
(危ない……少し椅子が高かったでしょうか?)
(頭ごっつんこした?へーき?)
(だいじょぶ……?)
(なぁに?)
(ここでも手つなぐの?)
(うん、つがいだからね)
(?…つがいって何?)
(なかよしってこと)
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