飼い犬とクルーウェル
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ガイダンス
*デイヴィス・クルーウェル
「学園長、失礼します。」
「失礼しまーす………何この空気」
気の抜けたハーツラビュル寮一年の問題児二人とオンボロ寮のユウたちがやって来る。お手上げなので助かった……。
「ああ、トラッポラくん、スペードくんに監督生くん!
いいところに…あなた達をお待ちしておりました」
「チビの様子がなんか変なんだゾ……」
「単刀直入に言えば……正気を失っている」
説明役は俺が、と事前に打ち合わせしていたので仔犬たちの前に立ち顔を見ながら話す。
「オーバーブロッドについての説明が本題だったが…それについては後で行う。今は……ナマエに声をかけてやってくれないか?」
「……そもそも何したらあんな状態になるんスか?」
「…呪いの瞳を持ち、身寄りがないことまでは以前話したな……11になるまでナマエは転々と汚い奴らに売られ続けていた。呪いの瞳の伝説についてはどこまで知っている?」
「…種族や性別に関係なく突然生まれることとか……人を操る力があるとか……?」
「この間ユウと読んだ本には目がガラスみてえにキレーって書いてあったんだゾ」
「……生き血は不老になり、骨や指は魔法薬の調合の際に混ぜれば効果を最上級に底上げする素材になる。……グリムの言うとおり、目は特にコレクターに人気でな。アイテムとして扱われるんだ」
「………え、まって嫌な予感するんだけど」
「その予感どおりだ、トラッポラ……特に顔を触れられるのを嫌がるのはそのせいだ。無理やり目を取られそうになった経験があってな、過敏に反応する」
そう言うと4人は黙り込んでしまう。
「……取ろうとしたのか!?」
「口には気をつけろよ、グリム。するわけ無いだろう、実の家族として扱い受け入れてるんだぞ…包帯だ。陽の光が痛みになるらしくてしばらく様子を見ていたんだが……もう包帯を取りたくないと怖がっているんだ」
「……じゃあさ、せめてこの部屋真っ暗にしてやりゃいいじゃん。んで……ローソクからとか…そりゃ前痛かったなら怖いに決まってるじゃん」
「たしかに……暗くてもナマエは見えてるって言ってたし、僕たちが手元に気をつけさえすればいい話じゃないですか?」
「なるほど……それでやってみましょうか。……あ、私からも1言。今は威嚇している子猫のような状態なので少し攻撃的な彼女に気をつけてください」
そう言うと学園長が部屋を真っ暗にする。蝋燭を1人ずつ手に持ち、ナマエに近寄っていく。生徒に頼るしかないのは歯がゆいが、前回みたいに……制御できない状態までいくと謎の蛇のような生き物に近い何かを召喚するナマエに近寄ることもできないのだ。
「チビ、オレ様たちが来たんだゾ!聞こえるか?」
「………」
「すげー無反応……同じナマエとは思えねえな。おーい、今真っ暗にしたんだけど俺らのこと見える?」
「蝋燭に触れると危ないから少し距離を開けてるが……目の前に全員いるぞ」
「……ぅ…な…に?」
反応した。
「ナマエちゃん、今真っ暗だから包帯とってみない?…目を開けなくても怪我の治り具合が知りたい」
「ユウさん…?」
「うん、ユウだよ。こっちにグリムがいて、ナマエちゃんの右側にエースとデュースがいる」
やはり……異世界人のユウへの反応があるか。頷くナマエにエースが包帯を取り除いていく。
「仔犬、俺も見ていいか?」
「デイヴィス……?いついたの…?」
記憶はあやふや、覚えてないのか…。ずっと見てた、と告げユウの後ろに立つ。
「まずは蝋燭1本から試してみようか。じゃあエース以外は蝋燭を遠ざけて……」
「ん、オッケー……はい、右目からゆ〜っくり開けてみ?」
「………痛くない……」
久々に碧い目のナマエと目が合う。ほっと胸を撫で下ろす。あとは日中日光下で生活できるかどうかだ。
「じゃあ次2本、デュースこっち来て」
「おう……久しぶりに目が合うな」
「ふひ…そうだね…痛くない!皆のこと見えるよ」
嬉しそうにそう言うナマエに今度はユウとグリムが近寄っていく。ケラケラ笑う声が学園長室に響く。次は部屋の電気をつけていき、カーテンも開ける。
「ちょっと眩し……けど痛くない」
包帯をつけていた間は見えるものの、色味はなく基本白黒かセピアのような色合いで見えていたらしいナマエの視界に久々に色と光が入っているので慣れないのか目を瞑りながらそう答える。
「4人とも……ありがとうございました。貴女も一緒に聞いてくださいね。では、早速本題に入りますが……先日のハーツラビュル寮の一件が一段落ついたので、君たちにもきちんと話をしておこうと思いまして。
魔法士になるからには、ローズハートくんが陥った暴走状態については詳しく知っておく必要があります。」
*ナマエ
「オーバーブロット、でしたっけ。」
「オレも兄貴から話を聞いた事くらいはあったけど、ブロットが溜まりすぎるとまさかあんな風になるなんてなぁー…マジで闇堕ちバーサーカー状態ってカンジだったね」
デイヴィスからメガネを受け取りかけると部屋の眩しさも少しだけ楽になる。良く見える……また暴走しかけていたのか、ユウさんたちが来る前の記憶があやふやだ…。
クロウリーやデイヴィスの手や足を確認したけど怪我はさせてなさそうだった。
「なあなあ、まずブロットってなんなんだゾ?」
「そうでした。ユウくんとグリムくんはそこから説明が必要でしたね…では教えてさしあげましょう。私、優しいので。
ゴホン。ブロットというのは、魔法の使用に伴う廃棄物のようなものです。例えば、自動車は燃料を消費して走り同時に排気ガスを吐き出しますよね。魔法は魔力を消費して発現し、同時にブロットが吐き出される……と考えるとわかりやすいでしょうか」
「身体に良くはなさそう」
「その通りです。有史以来、現在に至るまでブロットについてはさまざまな研究が進められていますがその存在にはいまだ謎が多い…1つだけハッキリわかっているのは非常に毒素が強く、溜めすぎると魔法士の心身を害するということだけ」
「そういや、昔ばーちゃんから「ブロットが溜まるから気軽に魔法を使うな」って口酸っぱく言われたっけ…」
私もデイヴィスに言われたことあるな…。
「大きな力にはリスクが伴う。どんなに優れた魔法士も、無尽蔵に魔法を使えるわけではないんです」
「つまり魔法を使えば使うほど不健康になるってことなんだゾ!?」
「いいえ、そうとも限りません…ふぅむ。こればかりは説明するより見せたほうが話が早そうですね。ゴーストのみなさん、お仕事ですよ!」
パンパン、と手を叩いたクロウリーのもとにゴーストたちがやってくる。
「やあやあ。お呼びかね、学園長。…おや、珍しい子もいるんだねえ、この目の持ち主は久々に見るよ」
「さあ、君たち。マジカルペンを構えなさい、学園長の特別授業はまだまだ続きますよ」
クロウリーがそう言うのでペンを構えるとゴーストたちとの決闘の模擬試合のようなものが行われる。攻撃魔法をいくつか使用し、合図がなされる。
各々のマジカルペンを見るとたしかに魔法石の部分が黒く淀んだような色になってる。
「充分な休息を取れば、時間経過と共にブロットは消えていきます。魔法石は魔法の発現を助けてくれるだけでなくブロットが直接術者の身体に蓄積されないよう、ある程度肩代わりもしてくれる素敵なアイテムなのです」
「なるほど。つまり魔法石が曇ってきたら身体を休めろ、ってことですね」
「正解です。よく食べ、よく眠ることで大抵のブロットは解消されますから。」
クロウリーがデュースくんの言葉にそう返すと、グリムくんはいつもよく食べてよく寝てるから安心だ!と笑っていた。その姿が簡単に想像できて可愛い。
「魔力量は人によって千差万別ですが、ごく一部の例外を除いてブロットと許容量にそれほど大きな差はありません。…つまりローズハートくんのように魔力量が多い人ほどブロット蓄積には細心の注意をはらわなければならない、ということです。……ちなみに貴女もですよ、ナマエ」
突然名指しされで顔を上げればマジカルペンを取られる。
「でも私、そんな高度な魔法使えないよ」
「夜目と呼んでいる真っ暗な中でも今と変わらずものが見える状態もそうですが、人を探すときの透視のような力含め、貴女は常に魔法を使っているものだと覚えておいてください。
そこに攻撃呪文や防御魔法などを組み合わせれば人より早くオーバーブロッドの可能性がある……貴女の魔力は相当なものです、まだ使いこなせないだけで」
「ふうん……分かった」
「まあその点、君たち程度の魔力量ならそれほど気を遣わずとも大丈夫だと思いますが。良かったですね!」
「なんか素直に喜びづらいんスけど!?そのセリフ!」
「魔法の使い過ぎで魔法石が真っ黒になるとみんなこないだのリドルみたいに闇堕ちバーサーカーになっちまうのか?でっけー魔神みたいのも出てて怖かったんだゾ」
「ブロットの蓄積量は魔法士自身の精神状態に大きく影響を受けます。怒り、哀しみ、恐怖、混乱……そういった負のエネルギーを抱えているとブロットが非常に溜まりやすく、オーバーブロットを引き起こしやすくなります。先程貴方たち4人にナマエの相手を頼んだのもこの理由からです」
「そうなの…?デイヴィスは?」
「潜在的にお前は大人が嫌いなんだろう、俺であろうと学園長であろうと攻撃してきたから刺激するのを控えるために離れていた……ちなみに仔犬に傷を負わせられるほど弱くはないから気にするなよ」
腕を確認しようとしたら先に言われた。クロウリーも頷いているので、怪我はさせてないんだろう。良かった……。
「暴走状態のローズハートくんの背後に現れた巨大な影。あれは負のエネルギーとブロットが融合して現れる化身だと言われていますが……実際のところ、詳しいことはわかっていません。貴女の目が痛み、まるで苗床のように捕らわれていたのも関連性は不明です。
オーバーブロットについては未知数なことが多い。なにせ事例がそう多くはありませんから」
「事例が多くてたまるかっつーの。あんなの二度とゴメンだわ。」
「ローズハートくんは幸いにもその場で正気に戻すことができましたし、その後すぐに治療ができましたが、もしあのままだったら……あぁーーっ!考えたくない!恐ろしい!」
いきなり大声を出すクロウリーに私とグリムくんは飛び上がるほど驚いてしまった。
「ゴホン。失礼……つい取り乱してしまいました。長々と話しましたが、魔法の使用には常に危険が伴う、ということです。
みなさんゆめゆめお忘れなきように」
マジカルペンを見ると、淀んでいた魔法石がもうクリアな色に戻りかけている……もしかして回復が早い?クロウリーたちがかけてくれた防御魔法のどれかのおかげかな…?
(マジカルシフト…?去年もやってたやつ?)
(えぇ、たしかクルーウェル先生の財布を泣かせていましたね)
(そんなに食べてないもん)
(嘘をつくな、ひとくち食べて合わないとすべて俺に寄越してきただろう)
(だってあんまり美味しくなかったんだもん、デイヴィスのご飯のほうが美味しい)
(好みに出会えてないだけだろう…今年はユウたちと回るといい)
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