里犬とクルーウェル
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問題児と遭遇
*ナマエ
エペルくんと過ごした学生初日はものすごく楽しかった。私としては昨日見かけた魔獣と異世界人が構内を駆け回っていたほうが気にはなる…。エペルくんとは別れ、校内をうろつく。植物園でも行こうかな…。
「……よし、いない」
見た感じ気配はしない。レオナ・キングスカラー…意地悪ばっかりしてくるのに優しい時もあるから、なんだかよく分からなくて距離の掴み方が難しい。デイヴィスと一緒に育てた植物を見てると後ろから話しかけられる。
「おお、本当に入学しておるとは……久しいのう」
「リリアくん…?だっけ」
この独特な話し方は覚えている。私の制服姿を見てどこか嬉しそうに笑っている。
「そうじゃ、リリアちゃんじゃ……植物の世話でもしに来たのか?」
「うん、この一帯はデイヴィスに教わりながら私がお世話してるやつだから…‥様子見に来た。リリアくんは?」
「マレウスを探しておってな…目を離すとすぐどこかへ行ってしまう。困ったやつじゃ」
「……マレウスくんってどんな人?私なら見えるかも」
実験的に試していることを告げる。夜でも完全に見えるようになったのをきっかけに、壁越しであったり距離がある程度離れていてもデイヴィスのことが見えたりするようになった。丸見えってわけじゃなくて、まだぼんやりそこにいるって特定できる程度だけど…。
「ほう、面白いのう…マレウスは身長が高くて頭上に二本の角が生えておる。この学園ではただ一人の見た目だからすぐ分かるじゃろ……見つけられそうか?」
「学園内にいるならたぶん…ちょっと待ってね」
目を閉じて校舎の方を向くと同時にけたたましい声量が耳をつんざく。
「うるさい……」
「なっ…何だ貴様は…!」
やたらと声のでかい子が睨みつけてくるのでリリアくんの後ろに隠れる。
「わしの友人じゃ、お主と同じ新入生なんじゃ…仲良くできそうか?」
「私は嫌、うるさいとびっくりするから。怒鳴り声嫌いなの」
きっぱり断ったせいで気分を悪くしたのか、もっと大きい声になる。……あれか、声を大きくしようと思ってしてるわけではないんだな…それは分かったけど怒鳴り声に聞こえるからやっぱり嫌だな。
「マレウスくんのこと探すから静かにして」
「若様をそのような…むぐっ!?」
「うるさいって言ってんの、静かにして」
口を閉じさせれば目を見開くその子とリリアくん。目を閉じて校舎に今度こそ向き直してツノが二本ある人影を探して行く。校舎の隅から隅まで見てどこにもおらず、グラウンドやコロシアム、鏡舎にもいない。
「あ……いた、すぐそこにいる」
「どの辺じゃ?」
「ここを出てすぐの……なんかボロボロな建物の前の道にいる」
夜目の時もそうだけど、この探すくらいの力は目が痛くならなくて済む。物を動かしたり、人を操るときはすぐに激痛になるけど…いずれこれも痛くなくなるといいけどな。
3人で向かうとぼーっとしているマレウスくんを発見。ほんとに角が生えてるし身長がすごく高い。声のうるさい子が話しかけると振り返る。
「……おやおや、最近では珍しい瞳だな」
「見えるの?」
「わしも見えると申したであろう……セベクにも見えるのではないか?」
セベクくんというのか。何を?と言う顔をしているがきちんと目が合えばじーっとこちらを見ている。
「……?瞳の色が……どうなっている?」
「存在までは知らぬか……ディアソムニアへ帰ったら伝えるがくれぐれも他言無用でな。クルーウェルから直々に頼まれているんじゃ」
今だと本当に珍しいんだな…高値でやり取りされたわけだ。そのことは流石に伏せておくけれど、実体験と歴史的文献があると信憑性も希少価値なんかもよく分かる。
お茶会に誘ってくれるリリアくんにデイヴィスと行く、と返事をして別れる。マレウスくんによるとボロボロな建物はオンボロ寮というらしく、ずっと無人だったのに急に人の気配がするようになってしまったとか…。間違いなく昨日の魔獣と異世界人だろう。伺ってみたけど誰もいなかった、まだ学園のどこかにいるんだろう。
図書室にでも行こうかな…そうして歩いているとクロウリーと出会う。なんか食堂に用があるらしい。一緒について行くと食堂にあった大きなシャンデリアが大きな釜のもとに落ちてる……。
「な…なんですこれは一体…!!」
流石のクロウリーもものすごい慌てている。大釜の中からは昨日の異世界人と赤い髪の人が出てくる。何かしらの理由で落ちてきたシャンデリアから避けるために大釜を出した…とか?
「おま……バッッカじゃねえの!!!??グリムは捕まえたけど、学園長にシャンデリア壊したこと知れたら…!」
赤い髪の子が青い髪の子に対して怒鳴っている。その手には魔獣…グリムって言うんだ。まだ4人ともコチラには気づいてないみたい。
「知れたら……なんですって?」
「クロウリー…あんまり凄まないほうが…」
そういうと人差し指を口に当てられる…黙っていたほうが良さそう。見たことないくらい怒った顔をしてるクロウリーを前に押し黙る。
「あなたたちは……一体何をしているんですかッ!??!石像を傷つけただけでは飽き足らずシャンデリアまで破壊するなんて……!」
余罪があったのか……それはこんなに怒られても仕方ないだろう。シャンデリアに近づいてみるときれいな色をした魔法石が割れているのに気付く。なるほど、魔法を動力にしたシャンデリアなんだ。
「もう許せません、全員即刻退学です!!!」
入学初日に退学を言い渡されることがあるんだ……異世界人は入学措置ではない?のか2人ほど慌ててはいないけど、赤と青の髪の毛の二人は大慌てで弁明しているが、クロウリーは聞く耳持たず。
「このシャンデリアはただのシャンデリアではありません。魔法を動力源とし永遠に尽きない蝋燭に炎が灯る魔法のシャンデリア。伝説の魔法道具マイスターに作らせた逸品です。学園設立当時からずっと大切に受け継がれてきたというのに……
歴史的価値を考えれば10億マドルは下らない品物ですよ。それを弁償できるとでも?」
10億……私の全身を売り捌いてたらいくだろうけど、そうでもしないと稼げない金額だ。ローン式の返済にしても生きてるうちに返せるかどうか怪しい金額に全員の顔が青褪める。
「魔法は万能ではありません。しかも、魔法道具の心臓とも呼べる魔法石が割れてしまった。魔法石に2つと同じものはない。
もう二度とこのシャンデリアに光が灯ることはないでしょう。」
つまり相当な魔力や技術があっても直せない、と告げるクロウリーに二人は今度こそ肩を落とす。
「……………そうだ。1つだけ。1つだけ、シャンデリアを直す方法があるかもしれません」
クロウリーによれば使われていた魔法石は学校の裏山にあるドワーフ鉱山から採掘されたものらしい。閉山してからしばらく経つから魔法石が見つかるかは不明なものの、同じ素質の魔法石を見つけてくれば退学を取り消す、というもの。4人は大慌てで鏡の間へ向かい鉱山へと向かっていった。
「クロウリー……本当にあの4人平気?……裏山に良くないものがいるんだけど」
「このくらいの難題を言い渡さないとあの問題児たちは反省しないでしょう?グレート7の石像に傷をつけた時点でとんでもありません」
「魔法石……私直せたりしないかな」
「気持ちはありがたいですが……君の力は痛みが伴うでしょう?負担や苦しみは負わせたくありません」
シャンデリア自体は修復し、天井へと戻っていく。光はないけどやっぱり綺麗。
「9時になっても戻ってなかったら様子見に行くね、いい?」
「手助けはしてはいけませんよ、あとクルーウェル先生にきちんと報告なさい」
「はーい」
デイヴィスには反対されたけど、手助けしに行くのではなく最悪の事態を避けに行くだけと伝える。鉱山だから生き埋めもあり得る、あの子達の魔力は一年生の中ではそこそこだろうけど例えば……ヴィルさんやマレウスくんと比べたらパワーもないだろう。
そうやって説けば渋々納得したようで、必ず連れて帰ってこいと頭を撫でられる。
「過保護ね……デイヴィスやクロウリーたちがこれでもかって防御魔法かけてくれてるんだから私は絶対大丈夫よ」
「…それもそうか」
あらゆる場面を想定して防御魔法をかけてくれてるから私がもし生き埋めになってもなんとかなるだろう。9時をまわり、クロウリーに確認して帰ってきてない4人を探しに行くと、森でものすごい言い争ってた。
「ふなっ!??!……お前学園長と一緒にいたやつ!」
「覚えててくれたんだ…なんか良くないもの見えて心配で来たんだけど…もしかしてもう遭遇したあと?」
「良くないものって…?さっきすげえゴーストみたいなのはいたけど」
「つーかお前誰?学園長のお気に?」
「ちゃんと答えるからわざと刺々しくしないで…私はポムフィオーレ寮のナマエ。クルーウェルの姪、色んな訳があってここに入学してる」
「……は?姪……ってじゃあ女子!??!」
「しーっ!!そのゴーストやってきちゃうから…」
赤髪はエースくん、青髪はデュースくんというらしい。私が来たことで落ち着いたのか、きちんと話し合いができている。
「貴方は?昨日入学式で大変だった子よね」
「ユウです…」
ユウさんというのか。二人はユウさんが私と同じ女性って気付いてない…のかな?すぐ分かるけどな。自分から私もと言ってないってことは彼女なりに隠してるのかもしれないから私からは言わないでおこう。
「うん……そのゴーストが魔法石を隠し持ってるのね」
「透視か何かか?すごい能力だな…」
「ありがと。あのゴースト、魔法石から引き離さないとパワーが増幅しそうだけど……ユウさんの作戦もそんな感じ?」
そう尋ねるとうん、と返ってくる。
「私はユウさんのサポートに回る、ゴーストを直接攻撃退治するのはエースくん、デュースくん、グリムくんに任せるからね」
「ふな、お前何もしてくれねえのか?」
「それぞれに事の顛末の責任があるからこんなことになったんでしょ?私は部外者だから手助けしに来たわけじゃない……あの良くないゴーストとか、閉山した鉱山で最悪の事態を避けるために様子を見に来ただけ。手助けするなら魔力がないユウさんの護衛に回るのが妥当でしょう」
そう告げると納得した3人にユウさんが立てた作戦に補足を加える。グリムくんと私達が囮になって鉱山から引き剥がし、デュースくんの魔法で足止めして魔法石を取りに行くというもの。鉱山の中ではあまり魔法を放つと落石の危機もあることを言い聞かせる、集中力とかが切れてると雑になりがちだから。
鉱山の入り口に戻ると、なんとも形容しがたい……ドロドロした怨念が形になったかのようなゴーストがウロウロしている。これ教師の引率必要なレベルのゴーストだと思うけど……作戦通り私とグリムくんたちでなるべく引き剥がす。大振りなパンチをしながら走り寄ってくるから木々が倒れて森がぐちゃぐちゃだ。
グリムくんとエースくんで炎の竜巻を作り上げ怯んだ隙にデュースくんが大釜を当てて足止め成功。鉱山内部へ急いで向かう。ゴーストも足止め程度のダメージだったみたいですごい勢いで追いかけてくる。
「ユウさん、手繋いで!」
「え…っ…!?うん…」
体力で乗り切ることしかできないユウさんに魔力を与えてせめて走る時の体力回復を手伝う。
「わ…楽になった」
「ならよかった、あともう少し頑張って!」
すぐ後ろではないもののゴーストが迫っている。最悪私も参戦するつもりでいないと……これは手助けじゃなくて必要な戦いのはず。
(あったぞ!魔法石だ!)
(やっば!アイツもう重しを押しのけそうじゃん!)
(オイ、デュース!もっとなんか乗せるんだゾ!)
(えぇっと、重たいもの!?い、いでよ!大釜!あとは、えーとえーっと、大釜!?それから、大釜っ!)
(ヌグゥアア!!)
(お前、大釜以外に召喚レパートリーないわけ!?)
(うるせえな!テンパッてんだよ俺だって!)
(こんな時まで喧嘩しないで!デュースくんも一旦大釜ストップ、魔力なるべく温存して)
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