わんぱく・ちび主
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ラムリと雪ソリ
「やろ!」
ラムリの話した計画に同意した音は小さな拳を突き出しソリを作ろう!と計画した。裏山にある木を少し切って、設計図通りに組み立てて、ヤスリをかけてソリの完成。雪がたっぷり降り積もった晴天の日にラムリと丘の上まで移動して座り込む。
「じゃあ、主様!しっかり掴まっててくださいね」
「うん!」
「よーし…れっつらごー!」
ぐい、とソリが傾いたと思いきやどんどんスピードが上がる。びゅうびゅうと冷たい顔が音の顔を刺すように刺激する。耳が取れたのでは?と思うくらい冷たくて痛い風から逃れるように音は後ろを向いてラムリの体に抱きつく。
「う、わ!?」
がくん、と石にでも躓いたのかソリが傾いてラムリと音はソリから投げ出された。
「うう」
「主様!大丈夫ですか?どこか打ちました?」
「鼻いたい」
「見してくださいね……傷はなし、打撲痕もなし……」
ほっと一息ついたラムリが音を抱える。
「もお一回!」
「主様、今の失敗しちゃったやつなんで…‥毎回雪に突っ込むのが正解ではないですよ」
次こそは下まで滑るぞ!とラムリが気合を入れて立ち上がる。陽が傾くまでソリで遊び倒した二人はくたくただ。雪の上を歩くのも一苦労しながら屋敷に帰る。
「ラムリ……!探していたんですよ、貴方ずっとどこに……」
「うげ……ナック…主様とソリ乗ってた」
「……聞きますけど昼食は?」
「忘れてたぁ」
にぱ!と満面の笑みで笑う音を見てしまえばいくらナックでもラムリも、主のことも責められない。
「ナック、ぷんぷんしないで?ご飯一緒に食べよお?」
「そ、れはもちろんですが……って、主様…!随分体が冷えておいでです。急いで暖かい部屋へ…ラムリ!貴方もです!冷えに弱いくせに何をしてるんですか」
主はそっと抱え、ラムリは首根っこを掴みながら暖房のきいた主専用の部屋へ二人をかつぎ込むナックの勢いに二人は逆らえなかった。遊び呆けた自分たちが悪いとわかっていたからだ。二人とも手足の先が軽くしもやけになっており、ルカスも含めてナックと長時間の説教を食らったが言い訳一つせず反省した。何故なら自分たちが悪いとわかっていたからだ。
ソリを片付けてくると二人でようやく怒るナックの元から逃げ出し、暗い倉庫にソリをしまい込む。しかし風が吹いて手元のろうそくから火が消え真っ暗になってしまった。倉庫故足元が見えないと棚にぶつかったり、そこから物が落ちてきては危ないから下手に動けない。そこで音はふと思い出した。
『実はボク、暗くて狭いところが苦手なんです……』
ラムリの弱点。主である自分になら、と打ち明けてくれたものだ。思い出した音はすぐさま火が消える前の倉庫の様子を思い出し急いでラムリに近づく。
「ラムリ?」
「あ、主様」
「だっこ」
「はい!」
「ラムリ、よしよし。音がいるからねえ」
「!……ふふ、ありがとうございます、主様。一緒なら怖くないですね」
ふわふわの頭を音が優しく優しく撫でてくれる。以前自分が暗くて狭い場所が怖いと話したのを覚えていてくれた、主の優しさに胸を打たれつつ音を抱きしめる力を強める。なんとなくドアまでの距離は覚えているからぶつからないように注意をはらいつつ、物置のドアを開ける。
「あ、満月」
「ホントですね!きれ〜」
「お部屋戻ろう、ラムリ。ナック鬼になっちゃう」
「うげ〜……それは嫌ですね、部屋の窓から一緒に見ましょうか」
何故か消えたキャンドル片手に楽しそうに帰ってきた音たちにナックとルカスは首を傾げつつ治療を再開すると満月がきれいだ星がきれいだとはしゃぐ二人に薄着で外に出たくせに帰りが遅いと思えば…と小言を呟く他なかった。
「今日はラムリと寝るの」
「だめです、星を見ると夜ふかしするでしょう」
「ぎぃ〜!!!」
聞いたことない反発の声に一瞬ハウレスは笑いかけてしまったが、心を鬼にして。ナックとルカスから軽いしもやけになるまで二人で日中ソリで遊んでいたと聞いているし、お昼の時間にずっと主を探すロノを見ていたため今日は厳しくするしかないのだ。
「けち」
「主様」
「けちぃ〜!」
「お、と……こら、主様」
猫のようにぐにゃんぐにゃんに仰け反りながら駄々を捏ねる音に少し声を低くするとぴたりと動きが止まる。音も怒られるラインが分かっているのでこれ以上駄々を捏ねてると怒られると理解している。
「……音だって夜ふかししたくないもん」
「え?」
「夜にしか星が見えないのが悪いもん!」
「………ぶっ、くっ…はははっ!」
まさかそうくるとは思わずハウレスは膝から崩れ落ちるほど笑う。このやり取りを見守っていたベリアンとルカスも笑ってしまい、天井を見上げている。
「すみ、すみません……っベリアンさん、交代してください」
笑いすぎて涙さえ出ているハウレスが白旗を上げて降参した。
「ふふ、主様……ハウレスくんは何もずっと星を見るなと言っているのではないのですよ」
膝の上に音を乗せたベリアンが覗き込むように主を見やる。もう普段なら寝ている時間だからだろうか、既に眠そうな顔をしている。赤ん坊が眠いときにぐずるようだと思いながら笑顔を崩さず語りかける。
「今日はずっと外で過ごされていたから、早く寝て体を休めてほしいのです。また高熱で苦しむ主様は見たくありませんから……ね?」
「ん〜……」
歯も磨かせてあるから後はもう眠るだけ。音の背をさすりトントンとリズムを刻むようにしているとすぐに瞼が落ち寝息が聞こえてくる。プールなんかの水中もそうだが、雪も雪で体力がものすごく削られる。そんな中1日はしゃいだ二人が疲れていないわけがない。
「……眠りました」
「ありがとう、ベリアン。……ハウレスくんも、もう笑い終わった?」
「すみません……ドツボにはまってしまって」
「ふふふ、ハウレスくんがあんなに笑う姿は初めて見ました。ラッキーですね」
「なんか……そう言われるとちょっと恥ずかしいんですが……」
そう言い合いながらもベリアンは予め湯たんぽで温めておいたベッドに音を寝かせる。明日はもっと笑顔で溢れますようにと願いを込めて。
その夜、音は不思議な夢を見た。自分と同じくらいの大きさのラムリが膝を抱えてこちらを見ている夢だ。
「ラムリ」
「…?なんでぼくの名前知ってるの…?」
「音、大きくなったラムリの家族だから」
「家族…?君が?」
信じられないと言いたげな表情に音はムッとしながらも頷く。
「今日は一緒にソリで雪遊びしたんだよ…やりすぎて怒られたけど」
「そうなんだ」
「ラムリ寒いの?音がぎゅってしてあげる」
臆することなく自分に抱きついてきた少女をラムリは信じられないと見やる。人懐っこいを遥かに越して信頼されている。幼い子ども同士の高い体温は暖かく、蹲っていた小さなラムリの心を溶かすには十分だった。
「お腹痛いの?大丈夫?」
擦るといいんだよと擦ってくれる見返りほしさに優しくしてくれるわけでもない純粋な優しさに次第に音が毎日見ているにっこりとした表情に変わっていく。
「……!」
夢から醒めた音が行く場所は1つ。ラムリの部屋だ。静かにドアノブを開け、ぐるぐると布団に巻き付いてるかのようなルカス、見回りをして不在のナックのベッドを抜けラムリの寝顔を盗み見る。
「むにゃ……」
子猫が布団に潜り込むようにラムリのベッドに潜り込んだ音は暖かさに目を瞑る。
「……ん…?ぇ……主様…?」
寝惚けたラムリが音に顔を擦り寄せる。擽ったくて音は笑うが、半分夢だと思っているラムリは止めない。そのまま抱きしめられてお互い温まりながら眠る。ラムリが朝に目覚めたときにびっくりして潰れたカエルのような声を出したのは本人の秘密だ。
「さ、主様、お着替えですよ」
フェネスの声に音は片目を開けるが、まだ眠いようでフラフラしている。
「フェネスだっこ〜」
「ふふ、はい…先にこのお洋服着ましょうか」
フェネスは主が可愛くて可愛くて仕方がない。最初は執事全員に対してあんなに怯えていたのに、今や信頼されていると自負できるほど打ち解けられた。執事は対話を繰り返して、音は観察を繰り返してお互いを知っていきながらようやく身の回りの世話を任せてもらえるほど信頼してもらえるようになったのだ。
「あぁ……嬉しいですけど、主様。髪型が崩れちゃいますよ」
クリスマスにもらったフルーレのピンがあらぬところに行ってしまっている。黒髪に映えるゴールドと黄色のビーズ刺繍のピンは音の一番のお気に入りのアクセサリーでよくつけてるのを見る。自分がつけないときはくまきちの耳に挟んでいるくらいだ。
「ほら、くまきちの毛並み整えてあげてください」
音にもし妹、弟がいたらこんな感じなのだろうと思うくらいくまきちの世話を良くしている。初めてのクリスマスプレゼントをここまで気に入ってもらえて、クリスマスに至るすべてを計画したベリアンは毎日嬉しそうにしているくらいだ。誕生日はどうなってしまうんだろうか?とフェネスは若干心配でもあるが……
「今朝はラムリのとこに行ってたんですか?」
「うん……音ラムリの夢見たんだよ!ちっちゃいラムリ」
「ちっちゃいラムリ?」
「音とおんなじくらいのラムリが座っててお腹痛そうにしてたからさすった」
「ふふ、主様は優しいですね……夢の中のラムリも、現実のラムリも喜びそうです」
「ずる〜いって怒ってたよ」
頬を膨らませて拗ねてる様子がありありと目に浮かぶ。昨日フェネスが自室でハウレスから聞いた「夜ふかししたくないけれど、星が夜にしか見えないのが悪い」と怒った話も相まって可愛らしいエピソードが止まらない。
(ラムリあれ何してるの?)
(ハウレスから逃げてますね……全く)
(鬼ごっこじゃないの?)
(……まぁ…ほぼ鬼ごっこに近しい…かもしれないですね)
(いいな〜音も鬼ごっこやりたい、フェネスやろ〜)
(え?!朝ごはんは…?)
(食べる!ムゥちゃんと食べるもん)
(あ、主様!おはようございます!今日のご飯はクロワッサンですって)
(クロワッサン?あのチョコ入ってるやつ?!)
(それはチョココロネです…おはよう、主様!今日髪型ばっちりじゃん)
(フェネスがやってくれたよ)
(フルーレさんのピンが目立って素敵ですね!)
(ふふん)
星座鑑賞って道具を使うとなるとなおさら大人の趣味ですよね。音ちゃんは何度もベリアン、ルカス、ハウレスの3大矜持に対して「ラムリやラトと星を見たい」とお願いするも、星が出る時間はだいたい寝る時間間際なので却下され続けています。
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