春のたのしみ・トリップ・男主
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
風情
*ミョウジナマエ
温かくなってようやく炊事以外の雑用も任されるようになった。雑渡さん…というより高坂さんからキツく禁止を言い渡されていたようで、廊下の雑巾がけとか、洗濯とか。見てるだけで心苦しかったし、かといって心配してくれる高坂さんの気持ちも無下にできず冬はやきもきしていたので、いざ!と声をかけたら恐る恐るだけどまずは雑巾がけから…と布をもらった。洗濯はもちろん手動だから、そっちの方が手が荒れてしまうらしい。凍傷になったことがある、という事実は女中の皆に知れ渡っているので洗濯は当分先になるかも。
「お〜!」
「(なぜ感嘆の声を…??)屋敷が広いゆえ、堪えるかと思いますが…」
「いえ!なんかこんなに長い廊下を雑巾がけするの、子どものとき以来なんで楽しいですね」
「そ、そうでしょうか…?」
「せっかくならレース形式にしませんか?よくやってたんですよ」
「れぇす…?」
列に並んで誰が一番最初に向こうまでつくかの競争、と話すと女中の晴風さんはあぁ!と合点がいった様子だった。
「もちろんオレは新参者なのでハンデをください」
「ふふふ、勝負を持ちかけた側ですのに…?でもそうですね、慣れているものばかりですから……では2歩分先から始めるのはいかがでしょう?」
2歩………ハンデなのかなそれ……あっという間に覆される気もする。とりあえず了承し、晴風さんが呼びかけた他の女中や下男の人々も集まり、金銭はないけど賭けも発生した。
「ちょっと、一人くらいはオレが勝つと予想してくれても良いでしょう」
「う〜ん……」
う〜んじゃないよ、全く!頑なに誰もオレを予想しない……くそ、こうなったら勝ってやる!!!小学生の頃は1位が当たり前だったんだぞ。
晴風さんに教わった方法でたすきがけして袖が落ちないようにし、パンツの裾も足袋の中にしまう。引っ掛けちゃうと危ないからね。
「用意はよろしいですか?ではまず1区画目……用意、始め!」
始めの声にあわせて足を踏み込む。
─────────────────────────────────
*雑渡昆奈門
今日はなんだか屋敷が随分騒がしい。胸騒ぎがする方ではなく、笑い声がよく聞こえる………原因も理由も心当たりはある。ナマエくん関連だろう。あの子がいると女中も下男も皆よく笑う。たまに陣左のように怒られてるけど。
こっそり伺い見ると、床にへばりつくようにして潰れてるナマエくんとけらけらお腹を抱えて笑う女中たち……手には雑巾。全員息が上がってる様子から廊下の雑巾がけをしてたんだろう……すごい勢いでずっこけたとか?それだったら心配する奴が1人くらい居そうなものだけど。
「ぐ、くそ〜!!!もう一回!!!!」
「もう雑巾をかける廊下がございませんよ、ミョウジさま」
「やはり1勝もなかったな」
「そこ!聞こえてます!!!往復しましょう」
「後半は始めからへばっていたではないですか、ミョウジさま」
あぁ、皆で競争していたのか。あの様子だとナマエくん惨敗だったんだろうな……悔しがってて可愛い、ちょっと泣いちゃいそうだ。味方しにいってあげようか。
「楽しそうだね」
「雑渡さま!」
すすす、と頭を下げてくるからいいよと声をかける。
「ナマエく……ふは、打っちゃったの?」
「雑渡さんには関係ありません」
そんなに額真っ赤にしてよく言う……悔しがって少し拗ねてる可愛いナマエくんの頬をつつく。
「皆で競争していたんです、ふふ。ミョウジさま、最後の方は少しバテてらしたけど」
「晴風さん、言わないでくださいってば」
「あまり拗ねさせないでよ?……楽しかった?」
「楽しかったのに悔しいです」
素直にそう零すもんだからまた女中たちは微笑ましい顔でナマエくんを見つめる。
「初勝利あげるまで頑張らないとねぇ……ナマエくんには言ってなかったけど、ここにいる女中も下男も、皆炊事の他にも訓練しててね」
「訓練?」
「うん、この間見たく侵入者がきたり襲撃がないわけじゃないから。いざというとき自分の身を守る訓練を幼子の頃からしててね……だから走らせたりすると足腰強いんだよ」
「……ズルじゃないですか」
「いいえ、ズルではありません!ハンデもつけたでしょう!」
ハンデつけたんだ。それで負けたなら確かにナマエくんは悔しいだろう。
「より2歩分じゃ足りなかった気しかしませんが……」
「お互い全力で挑んでこそですよ、ミョウジさま!」
うまく言いくるめられてる。額の治療をしよう、と廊下を歩く。すごいピカピカだ。
「すごい、綺麗じゃない。磨きたてのようだよ」
「品質は落とさずやりました……ビリでしたけど」
「ふふ、素敵だね……ほら、ついた。髪よけて」
「雑渡さん、あの…」
言いにくそうに口篭っているナマエくんを覗き込むと、さっきはすみませんと謝罪された。さっき…?何かあったかな。
「ごめん、心当たりないや…なんのこと?」
「雑渡さんに関係ありませんって八つ当たりしたから」
あれが八つ当たり……??あんな可愛いのが八つ当たり?混乱したけど、眉を下げて落ち込むナマエくんを抱きしめて気にしてないよと投げる。
「八つ当たりだったの、あれ……可愛かったからなんにも気を留めてないよ」
「雑渡さんはオレに甘すぎるんです」
「えぇ?……恋人を甘やかして何が悪いの…?あの女中たちには妬いたけど」
「…なんでですか?」
「ナマエくんの悔しい顔なんてなかなか引き出せないからね……あとそれに、名前。あの小娘たちは名前で呼ぶのに私のことは呼んでくれないよね」
顔を優しく包んで上を向かせる。鼻先をくっつけ合えば、ナマエくんの視界は私しか居なくなる。右往左往する目で慌てているのが丸わかりだ。
「そ、れは…」
「それは?」
「……恥ずかしいというか…」
「恋人の名前を呼ぶのが?」
矢継ぎ早に質問を投げかけると、違うと言われる。
「変えるとなると、気恥ずかしいんです…雑渡さんが、とかじゃなくて…慣れないから」
「慣れていけばいいでしょ……ほら、呼んで。いますぐ。口吸いしちゃうよ」
かぷ、とナマエくんの上唇を歯で挟む。一気に頬に熱が集まったナマエくんが目をきゅっと瞑り小さな声で私を呼ぶ。
「こ、昆奈門、さん……」
「……ね、もう一回。私しかいないから」
ナマエくんの口から私の名前が呼ばれるのは気分がいい。
「…昆奈門さん」
「うん……ナマエくん」
「え、ちょっ…ぁ」
ぢゅうと音を立ててナマエくんの舌を吸い込む。我慢できなかった。あとで怒られあげるから今は許してほしい。
「んっ、ちょっ…誰か来ちゃ……!んむっ」
「見てるから平気…もっとこちらへ甘えてきて、ナマエくん」
ナマエくんの舌にずりずりと絡ませて巻き付くように舐め回す。がちりと歯が当たっても構わず奥に奥に舌を伸ばす。そうしてナマエくんを心いっぱい堪能していると背中に回っていたナマエくんの腕がくたり、と落ちる。
「……え、あ、ナマエくん!?ごめん、まさか気を飛ばすとは」
顔を真っ赤にして気を飛ばしてしまっていた。やばい、やりすぎた。陣内にも怒られる……。とりあえず、お互いの唾液まみれになってしまった口元を拭って乱れた髪を整える。額にはガーゼを貼って…と。
しっかり陣内と陣左に怒られた。
*ミョウジナマエ
そうだ!と思い立っていつもより早めに起きた。
そう、清少納言の「春はあけぼの」あれ。確かに夏は夜で秋が夕暮れ。冬は朝が早くて…って詩のはず。
夜があけてだんだんグラデーションになる景色が風情だって意味だった…って授業で習った。見てみたい。
「……昆奈門さん」
「うん?」
当たり前に起きてるこの人にはもう驚かない。寝息聞こえなかったから起きてるだろうと思ったけど。
「高台登って空見てきてもいいですか?」
「空…?今日何かあるの?」
清少納言の名前は伏せて、枕草子の話をする。見てみたい、それだけ。
「付き合うよ」
「え、でも」
「ひとりにさせるわけないでしょ……二人で居よう?嫌?」
「嫌じゃないですけど……ちょっと眠そうですよ」
「まあ寝起きだから……甘えていい?」
「また気絶するまでちゅーは禁止です」
「手厳しい……待って、冷えるよ。陣左のマフラーと…あと手袋。」
上着も羽織って二人で高台へ。高台の下にいる下男にも声をかけていたから二人していない、と朝から騒動にはならないはず。まだ少しくらい中、はしごを登っていく。
「あでっ」
「っぶな………ほっ、ゆっくり登ってね」
オレにつられて昆奈門さんも落ちちゃうところだった。危ない…一定区間に開けた空間があり、そこには周りをぐるりと見渡せる部屋見たくなってるからろうそくの明かりがあるけど、その合間は何もなくてとにかく真っ暗だ。
なんとか上まで登って、日の出に間に合った。まだ暗い中腰を下ろすと後ろから抱きしめられる。昆奈門さん、珍しく手袋してたな…と思えば、手袋の中にオレの手を突っ込んで握ってきた。
「こんな冷やして」
「……昆奈門さんあったかい」
「……ねえ、誘ってる?」
「誘ってません」
「……痕つけていい?」
「だめです。そういうのはお部屋で」
「ちぇ……あ、登ってきたね」
「お〜…山があるからより綺麗ですね」
本当にだんだんと明るくなる山あいと、紫色にグラデーションしていく空は言われたとおり風情がある。だんだん青くなって、完全にいつも起きる時間の空の色になった。
「……おお…!」
「楽しかったね」
「昆奈門さんはずっとオレ見てませんでした?」
「うん、可愛いからね。あ、ちょっと待って」
ぐい、と腕を引っ張られる。
「うお」
「ごめんね?あの……降りれる?途中で降りれなくなったらと思って」
確かに。そう言われて覗き込もうとすると目元に手がやってきた。
「こら、危ないし余計怖くなるでしょ。……抱えて降りてっちゃおうかなと思うんだけど、どう?」
「………お願いします」
わざと暗いのには意味があるのかも。そう思った。結局初めてタソガレドキに来たときと同じように昆奈門さんに抱きかかえられ、首元に抱きつきながら降りてもらった。途中、人目を盗んでわざと逃げられないのにちゅーしてくるから、降り始めてから地上に中々つかなくて大変だった。
「っ、痕、だめ…っ!」
「良くなってるのに?……ここもつけようか」
胸元まではだけさせてるから寒くて鳥肌が立つ。次々にキスマを残していく昆奈門さんのされるがままだ。
「今日は休暇日なんだよ、ナマエくん」
「へ…?」
「おやすみ。朝から自由にしていいの……ね、抱いていい?10日も君に触れてない、限界」
「………加減してくださいよ」
「善処する」
「あと、立てなくなるまでは禁止です」
「………それは、頷けないな」
(なんでおやすみって教えてくれなかったんですか、あんな夜明け前に起こさなかったのに)
(そう言うと思って……明日もお休みだよ、気にしすぎないで。夜明けの空綺麗だったじゃない)
(そうですけど……)
(それに今からナマエくんのこと頂くし)
(それに関してはまだ了承してない点がいくつもあるんですが)
(あ~聞こえな〜い)