お好きにどうぞ・トリップ・男主
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月に一度の息抜き
*ミョウジナマエ
「あ、雑渡さん!ミョウジさん!お久しぶりです、あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとう」
「あけましておめでとうございます!…こっちはそこまで雪ないんですね…ちょっと温かい」
着込みすぎて暑いくらいだ。先日は高坂さんから首を冷やすな、とマフラーをもらった。この時代では相当な高級品らしくて流石につけろと言われたらつけるようにしてる。毛羽立ってほしくないからケチケチしたいけど、そしたら意味ないって怒られたし。
「お元気そうでなによりです…あ、学園長はあちらですよ」
お散歩してるらしい。尊奈門くんから聞いたけど、忍者を引退している身らしい。でもあの日の目つきの鋭さなんかは相当凄い人だったんだろうなっていうのはなんとなくわかる。だから学園長の位置にいるんだろう。
「あ、だめだめこっち」
「?」
背中を押されて急な方向転換。雑渡さんを見上げると地面を指さされる。
「見ててご覧」
足をす、と置くと落とし穴。………待って流石に深くない??出てこれない深さじゃん。
「ぜんぽうじくんが…?」
「ち、違います!!僕じゃありません!…4年生の綾部喜八郎ですよ、彼は穴を掘ることに長けてますし悪戯好きですから」
「悪戯好きで済むんだ…」
オレなんかは鈍くさいから足捻りそう。そんな落とし穴がいっぱいあるから、雑渡さんの内側を歩くようにと言われた。貸してもらってる服を汚す意味でも、怪我の意味でも落ちたくないから頷く。
「おや…雑渡殿。それに…ミョウジさん、お久しぶりですね」
「土井殿、お久しぶりです」
少し困った顔の土井先生。今日はニコニコしてる。お久しぶりです、と返して頭を下げる。忍術学園ではぜんぽうじくんと土井先生、山田先生が看病してくれたって聞いた。あのときも熱出してたんだっけ……まあ雪の中野ざらしだったから熱も出るか。
「あ」
「伏木蔵くん」
「ちょっとこなもんさん!ナマエさんだ!」
か、可愛い。とてててと効果音がつきそうな走り方でこちらに駆け寄ってきた。ニコニコしてる……改めて、タソガレドキにいて大人に囲まれて暮らしてるとより小さく見える。
「久しぶり」
「お久しぶりです〜…怪我しちゃったんですか?伊作先輩と一緒にいるなんて」
「ううん、顔見に来たんだよ」
「ナマエくんの嘘つき。大変だったんだよ、伏木蔵くん。熱は出すわ雪の中裸足で出るわ、また凍傷になりかけるわで」
「わ……裸足でですか?すごいスリル〜」
ひょい、と抱っこされて雑渡さんの肩に乗せられた伏木蔵くんと目が合う。
「え!?凍傷に?その後、足は…?」
「経過観察中、寒さ暑さの感覚が鈍いんじゃないかってね」
「全然元気じゃないじゃないですか…」
土井先生にも言われて俯くしかない。学園長室に案内されて歩いていると干しているのか、苦無や手裏剣がズラっと並んでる。
「ほ、本物だ…」
「触っちゃだめだよ、怪我するから」
「オレもシュッてやりたいです」
「だめ、まずそしたら基礎の基礎からやらなきゃ」
「基礎の基礎?」
「忍び足、ですね」
何ヶ月かかるんだそれ……。やらせる気がサラサラない雑渡さんに気付いてしらっと見ていると、伏木蔵くんに慰められた。1年生のクラスにおいでよ、って……ありがたいけど、流石に浮いちゃうよ、29歳は。
そう談笑しながらふと目に入った武器が襲撃のものと同じで、思わず足が止まる。
「ナマエくん」
「!…すみません」
「ううん、大丈夫だよ…行こうか」
片方に伏木蔵くんがいるのに、もう片方の手を繋がれる。屋内よりは少し温かい室内に通され、あの日の二足歩行の犬がいる。
「あの子なんていうの?」
「ヘムヘムですよ〜、ね、ヘムヘム」
「ヘムヘム!」
おお、鳴き声まで特殊。
「ヘムヘムは……犬?」
「ヘム!」
なんてことだ、だとしたら犬がお茶出ししてる。なんなんだここ……?正直雑渡さん目線のスマホよりもヘムヘムのほうが凄いぞ。ギネス余裕で載ると思う。
「字もかけるの?」
「ヘム!」
「えぇ…???ホントに犬?」
「ヘム!ヘムヘムヘム!!」
たぶん「何を失礼な!」みたいなこと言ってるんだろうな。ちょっとムスッとしてる。同じ仁王立ちでもヘムヘムがやると可愛い。
「ふふ、タソガレドキでも犬飼おうか?」
「え、ヘムヘムみたいな天才が標準なんですか…??」
「流石にこの子はずば抜けてるよ、皆お茶出しできるわけじゃないよ」
ちょっと安心した、ヘムヘムが特別なのか……いや安心の意味がわからないな。じゃあなおさらヘムヘムの中に人がいるのでは?と思い込んでしまう。
「やあやあ、待たせてしまいすまない……おや、1年ろ組の伏木蔵もおるのか?あとで時間を設けるから、部屋に戻ってなさい」
「は〜い…こなもんさん、ナマエさん、あとで来てくださいね」
「必ず寄るよ」
「またあとでね」
手を振って伏木蔵くんを見送り、山田先生と土井先生も揃った。白い忍装束を着てる人もいる。十字架があるからお医者さん?だろうか。
「ミョウジさん、タソガレドキはどうじゃ?息災しておるか?」
「雪遊びしたら春になるまで禁止になりました」
「手のしもやけに足の凍傷だからね」
「字など教えてもらって読み書きできるようになってきました」
「ほっほっほ、そうかそうか……まあ少々気になる部分はあるものの元気なら何よりじゃ。…新野先生」
「はい、ではあとで足の様子を見ましょうか…私は新野洋一、校医です。伊作くんがミョウジさんを発見したとき、別の場所にいまして……直接看病できず、山田先生たちにはご迷惑をかけました」
あ、保健室の先生みたいな…?やっぱり居るのか…確かに手裏剣とかでも怪我しそうだし必要な先生だ。
「ありがとうございます」
忍術学園でも、学園長を狙って襲撃はたまにあるそうでタソガレドキでも襲撃があった話は誰も不思議そうにしていなかった。やっぱり、忍者や侍がそれぞれの領土にいて、さらにその領土を収める長が各国にいる今、誰が天下一になるかという前触れの時代だ。治安が悪くて当然なんだ。
春になったら、尊奈門くんの言うとおり自衛の術だけでも習おうかな……気配消されて近寄られたときでも対処できるように。ぜんぽうじくんと新野先生と共に保健室に向かう途中、何か視線を感じた。
「…ミョウジさん?」
「あれ…雑渡さんは?」
「厠に行くと仰ってましたよ、さ。雪がないとはいえまだまだ冬です、体が冷える前に」
オレが気付くなら、この二人も気付くか。気のせいだったら手間をかけさせるし、と保健室へ急ぐ。
*雑渡昆奈門
「なんの用?……今日は楽しいお出かけなんだ、台無しにしないでいただこう」
この付近の忍びではないな。国を越えたどこかの忍か……忍術学園の学園長を狙っていると正直に吐いたので腕で気道を締めて落とす。残りは土井殿たちが対処してるだろう。
それにしても………ナマエくんが一瞬こちらを覗いた。その後ようやくだけど、私の不在に気付いたみたいだ。伊作くんたちがうまく気を逸してくれたようで保健室へと入っていった……ナマエくんも陣内たちの気配のおかげで少し勘が良くなってるのか?
「終わりました」
「数が多い……ミョウジさんがいるのに侵入させたくなかったので助かりました」
土井殿にそう言われる。
「いえ……でも誰かから見られてるということには気付いたみたいで」
「それは……鋭くなっていると?」
「ふふ、そうかもしれない」
「英才教育を受けているようなものですからな」
山田殿にそう言われて頷く。縛り上げてあとはお二人に任せよう。ナマエくんの足の経過は私も気になっているから。
「あ、雑渡さん」
「おかえりなさい、ちょうど具合を見ていたところですよ」
伊作くんに頷き、ナマエくんの隣に座る。
「見た目は元通りになってきたね」
「確かに。心なしか感覚も前に診てもらったときよりいい気がします」
新野殿の見立てでは特に冷えの感覚に鈍いと。痛みやしびれも多少鈍いものの、日常生活を送る上では特に問題ない程度。
「やっぱり雪遊びは禁止だよ」
「ミョウジさんの故郷はあまり雪が降らないんでしたっけ?」
「うん、積もってもこのくらいでね……だから背丈より積もってる雪はオレには珍しいんだ」
その結果はしゃいで凍傷になりかけてるんだから困ったものだ。
「お取り込み中失礼します。新野先生、雑渡殿、よろしいですか?」
土井殿と目が合う。何か新情報を吐いたんだろうか?伊作くんにナマエくんを頼み、保健室を後にする。
*ミョウジナマエ
「ミョウジさん、御髪は伸ばされるんですか?」
「あ〜……このままきれいに伸びるのかな?伸ばしたほうが手入れ楽になるよって教えてもらったから、悩んでるんだ」
「そうですね…僕達は忍びだから、頭巾を被るためにもまとまりやすい長髪が基本ですが…そうでないなら今のままでも素敵だと思いますけど…気になるようなら、4年に髪結いが得意なタカ丸くんという子がいて……」
へえ、美容師みたいなことしてるのかな?伸びてきて髪型としては崩れてきたから切ってもらえるなら切ってほしい。
「では、行きましょう!逸れてはいけないのでお手を」
「あ、ありがとう?」
そんなに広いのかな、この学園。ぜんぽうじくんと手を繋いで学園内を歩く。
「4年生の部屋は……ここだ。失礼、6年の善法寺伊作だよ。タカ丸くんは在室かな?」
そう尋ねると、すっと障子が開いて知らない顔が3つ。随分目が大きくてハンサムな子がいる。少し背が低いし顔も幼い……ホントに子どもなんだな。
「タカ丸はいま不在でして……伊作先輩、そちらは?」
「雑渡さんのご客人のミョウジさん!雪の中倒れていたのを数ヶ月前に僕が保護したんだ。今日は定期の顔見せに来てくださってて……タカ丸くんに髪結いをお願いしようとしたんだけれど…」
「こんにちは。…いないなら仕方ないね、改めよっか」
「部屋でお待ちください、こちらへ」
少し強引に部屋に入れられて、静かにするようにジェスチャーがある。
「ミョウジさんは1番奥へ」
「え?…なんで?」
「伊作先輩、説明しないと……私は田村三木ヱ門。こちらは平滝夜叉丸。それと綾部喜八郎です……侵入者がいるようなので、こちらにいてください」
「え…侵入者?」
「はい、雑渡さんと来たのならお会いしてるでしょうが門番には小松田さんがいます。小松田さんの目をくぐり抜けて入ってきたのでしょう…おそらく先生方が動いていると思いますが、念の為」
田村くんに頷く。布団が敷いてある手前に座り、とりあえず静かにする。侵入者と言われると、タソガレドキの襲撃を思い出す。
「大丈夫です、ミョウジさん。……しっかり呼吸はしてくださいね」
ぜんぽうじくんに言われて頷く。こんな時に過呼吸にでもなったら迷惑なんてもんじゃない。落ち着いて、呼吸だけはしなきゃ。いざとなったら逃げられるように、手足から力を抜きすぎずに。
皆で息を潜めてじっとしていると、いきなりパン!と爆発音がする。顔のすぐ横を熱源が通り過ぎて、見てみると銃弾。……この時代って銃もあんの!?!完全に盲点だった。布団の一部が焦げている……障子に隙間が空いてしまい、誰か立っているのが見えた。
「ミョウジさん、お怪我は?」
「ない、大丈夫」
「頬が少し切れてますね……隙間から丸見えだ、出るぞ」
綾部くんが障子を開けると、大きな銃を持った男の人は雑渡さんと山田先生に縛り上げられてるのが目に入った。
「山田先生!」
「まだ残党がいる、用心しろ……後ろだ!」
山田先生に見つめられながら言われた。明らかにオレに向かって放たれた言葉に反応する前に視界が覆われ口に布をあてられる。変な匂いはしないし濡れてないから薬品は塗られてない……クロロホルム、だっけ?気絶させるやつ。ただ鼻と口元まで抑えられて苦しい。多分このままじゃまずい目眩がしてくる。
「貴様何処の忍びだ、手を離さんか」
「動くな。……摂津国より参った」
「んんんんーーっ!!!」
死ぬから手を離せ。そう思ってじたばたするけど力が強すぎて思うように体が動かない。苦しい、息ができない……!段々体が脱力してくる。耳鳴りが酷くて周りの会話が聞こえない。力が強すぎて顎の骨までミシミシ鳴ってる……。
「私のナマエくんから手を離せ」
「がっ…!!!」
聞いたことないくらい低い雑渡さんの声、少しの振動のあと拘束が解かれた。視界を覆ってた布も、呼吸塞いでたものもなくなり、やっと脳に酸素が入ってくる。
(ミョウジさん、こちらへ!喜八郎くん、布団を敷いて!)
(保健室へ行かないのです?)
(通り道で残党に囲まれたら危ないから僕と…滝夜叉丸くんで薬なんかを取りに行きます。ここには山田先生もいらっしゃるから)
(分かりました)
(ぅ、あ…ざっとさん…?)
(大丈夫、側にいるよ……よくも私の宝に手を出したな、よほど命を捨てたいようだ)
(雑渡殿!……子供の前です、抑えなさい)
(………ふぅ……申し訳ない、頭に血が上った。直接的に手を出したこの男と火縄銃の男の始末はタソガレドキに任せてもらえるだろうか?)
(否と言っても聞かぬでしょう……土井先生!縄を!)