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幼なじみ
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乱雑に閉められた扉も、隣に座られたことも、なにも気にせずに眠っている。間抜けな寝顔だ。
国の利益、そんなことは分かってる。物知り顔で説く兄貴より、俺の方がよく分かっているくらいだ。だから、縁談だって受けると言っていた。この国の利益になる人間。その条件さえ満たしていれば、相手がどんな奴だろうと別に構やしない。それなのに、何が不満なんだ。王子なのだから国のためになるようにしろと言うくせに、望むようにしろとも言う。だから、国のためになれることを望んでいると物分かりよく言ってやっているのに、どうしてかそれを否定する。そうじゃないだろうと知ったように話すが、俺の何を知っている。望むもの全て手に入れ恵まれた奴に何が理解できる。
隣から聞こえる規則正しい寝息が、やけに腹立たしかった。手を伸ばせば触れられる距離だ。深く眠っているようだから、きっと簡単には起きない。どうしてこんな呑気なのだろうか。俺がこいつのことを慮り、不当な扱いをしないとでも思ってるのだろうか。伸ばしかけた手が、馬鹿馬鹿しくなってソファーの背に凭れかかった。ある意味こいつは正しい。こいつがどれだけ楽観的で無防備で危機感がないやつだろうと、俺がなにかすることはない。そんなことをする理由がない。
縁談といえど、まだ序盤も序盤。明確に話になっていたわけではないとはいえ、相手にとってはそれでも大きなことだっただろう。こちらの都合で流れたとなれば、これからの関係に支障が出るかもしれない。それは考えていたのだろうか。勝手に進めていたくせに、どうして急に俺の意見を聞こうと思ったのだろうか。その意見も聞き入れられることはなかったが。
望みなど、あるとしたら王の座だ。そう言えば、また物分かりが悪いと顔を顰めるのだろう。素直になれと諭すように言う兄貴の顔を思い出して反吐がでそうだ。こんなにも従順な態度を示しているというのに、何が不満だ。
いくら考えても、堂々巡りだ。ああいう‘人が良い’連中の甘く空想的な考えは俺には理解できない。今は、そうだ、駒を一つ失わずに済んだと考えるしかない。結婚は切り札でもある。今回の相手よりも良い条件は山ほどあるだろう。その時のためのキープだ。そう考えることしかできない。
「れぉなくん……」
聞こえてきた声に隣を見れば、苦しそうな顔で眠っていた。
「それ……たべちゃだめ……」
ムカついて放り出されていた足を軽く蹴った。