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幼なじみ
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「ねぇ、レオナくん。アルバムってどこに置いてるの?」
「は? アルバム?」
「昔の写真をキファジさんが現像してまとめてくれてたでしょ? レオナくんが持ってなかった?」
「覚えてねぇ」
うそ、そう思って顔を見たけど、本気で覚えてないって表情だ。もらったときに2人で見たのに。どんなだったかは全然覚えてないけど、多分キファジさんのことだしきれいにまとめてくれてたと思う。
「見返さなきゃ意味ないじゃん。ね、探していい?」
「勝手にどうぞ。俺は手伝わねぇぞ」
「いいよぉ、暇だったし」
もともと手伝ってくれるなんて思ってなかったし。
適当にいろんな引き出しを開けたり、扉を開いたりして探してみる。服、アクセサリー、本。どこを見ても本ばっかり。そんな中、引き出しの一段に私が無理に渡した私のグッズが入っていた。コップやノートみたいな実用性の高いものは使ってくれてるのを見たことあったけど、うちわやペンライトはてっきり捨てられてるんだと思ってた。適当に放り込まれてるとはいえ、置いてくれてたんだ。捨てるのが面倒だっただけかもしれないけど。でも、嬉しい。
その下の段には紙と枯れた花、おもちゃなんかが入っていた。きっとチェカさまからのプレゼントだろう。レオナおじちんと描かれた似顔絵も入っている。手紙も全部封が開いてるし、結構律儀なところあるよね。
アルバムはその近く、箱に入って積まれていた。思っていたよりも少ない。レオナくんは本読んでるみたいだし、私1人で見ようかな。背表紙に書かれた数字の若い順に並べてソファーの横のテーブルに持って行く。座ってアルバムを開いた。
生まれたばかりのレオナくんが少し遠目から写された写真が一番初めに載っていた。小さくて目も開いていない。私の見たことない、私と出会う前のレオナくんだ。かわいい。次のページには国王さまに抱かれたレオナくんと、幼いファレナさま達が写った集合写真。その次は似たような眠っている写真が数枚。よく見れば少しだけ角度や表情が違う。
ページをめくるごとに少しずつ日が経っていく。写真の横に書かれているメモには、はじめて寝返りを打った日もハイハイした日も立った日も丁寧に書かれている。はじめて立った日のメモの横には、不機嫌そうな顔で座り込んでいる写真が貼ってあった。立ち始めた頃からブレブレの写真が増えてきて、カメラを新調したとメモされている。確かにレオナくんは相変わらずよくブレているけど、背景は少しだけきれいに写っている気がする。大きくなるごとに不機嫌そうな顔が増えていき、走り回っている写真より本を読んだりして座ってる写真が多くなった。
そして、私と出会った頃くらいのレオナくんは、もう笑った顔で写っていることのほうが珍しいくらいになっていた。
「んなもん見て何が面白いんだか」
ソファーの座面が少し下がって、すぐ隣にレオナくんが座った。背もたれに腕を置いて、私が見ているアルバムをのぞき込んでいる。
「面白いよ。可愛いし」
鼻で笑われた。事実なのに。
レオナくんの視線を感じながらアルバムをめくっていると、はじめて私と写っている写真が出てきた。不機嫌そうな顔でカメラを睨んでいるレオナくんと、満面の笑みの私。その次のページにも、その次も、私と一緒に写っている写真だった。どれも嫌そうな顔のレオナくんと笑顔の私。2人はどんどん大きくなって、それに反比例するみたいに写真が少なくなっていく。それまで毎年撮っていたハロウィンの写真も、誕生日の写真もない。まばらなページが続き、NRCの制服を着た棒立ちのレオナくんの写真でアルバムは終わった。
「最近の写真全然ないね」
「そりゃ撮ってねぇからな」
レオナくんの通ってる学校は全寮制だし、帰ってくるの長期休暇くらい。自分から写真撮ることはないだろうけど、学校の友達とは撮ったりしてるのかな。別に小さいときと違って成長がわかるわけじゃないけど、今の自分を残しておけるのって写真くらいだと私は思ってる。今みたいに、また何年も後にアルバムを見返したとき、今のことを思い出せるのかな。
「ねぇ、写真撮ろ」
「あ?」
「ほら、スマホ! どこ?」
「ナイトテーブル」
ベッド横の小さなテーブルから、レオナくんのスマホを取ってソファーに戻る。
「はい」
「自分でやれよ」
「プライバシーだよ。撮るのはやるから」
ロック画面を開いてもらって受け取る。パスコード知ってるけどなんか勝手に操作するのは嫌だ。別に私のスマホだったら勝手に触ってもらって良いんだけど、他人のものとなるとなんだか触りにくい。
カメラアプリを立ち上げて、矢印を押して内カメラにする。2人が写るように少し目線より高い位置に手を上げた。ちょっと乱れた髪を手櫛で整えて準備完了。かわいく写ってる。でも、レオナくんは全然カメラ目線じゃない。
「ねぇ、こっち向いてよ」
「向いてるだろうが」
「私じゃなくてカメラのほう」
「はいはい」
「……とるよぉ」
ぱしゃっとシャッター音がして、カメラを睨みつけてるみたいな真顔のレオナくんと笑ってる私の写真が撮れた。アルバムにあった写真と似てる。せっかくだしレオナくんも笑ってるのが撮りたかったけど、これはこれで味がある気がする。
「後で私のスマホにも送っておいてね」
スマホを渡そうとしたら、拒否された。
「今テメェでやれば良いだろ」
「勝手にメッセージアプリ開くのやだもん」
「許可してるから勝手じゃねぇだろうが」
「レオナくんと他の人の会話とか見たくない」
「んなこと知るか、自分でやれ」
「見ないようにするけど見えちゃったら知らないよ。……誰かとイチャイチャしてるメッセージとか」
「ねぇよ」
本当かな。誰かのことハニーとか呼んでたらどうしよ。どちらかというとキティーのほうが言いそうかも。猫科だし。レオナくんの視線の圧に耐えきれずに、渋々メッセージアプリを開く。他は見ないように、一番上にあった自分の名前のトークルームをすぐに開いた。よし、見ないで済んだ。さっき撮った写真を送信する。ついでにハートのスタンプでも送っておこ。
「はい、ありがと」
スマホを渡すと今度はすんなり受け取ってくれた。それにしても、2人で写真撮ったのいつぶりだろうな。
「ね、さっきの写真待ち受けに……あ、でも誰かに見られたら困る、やっぱなし」
「んだよ」
記念に待ち受けにでもしようかなと思ったけど、もし誰かに見られちゃったら困っちゃう。そんなことをする人なんていないかもしれないけど、例えばその画面を撮影されて拡散されたりなんかしたら大問題だ。レオナくんにもたくさん迷惑がかかっちゃう。
「ほらよ」
深いため息をついたと思ったら、ロック画面を開いたスマホを差し出してきた。なんとなく受け取る。
「なぁに?」
「勝手にしろよ」
「なにを?」
「待ち受け」
「……ん?」
話が分からなくて何も言えないでいると、どんどん顔が険しくなる。ちょっと待ってよ。意味分かんないって。ついに尻尾がソファーに叩きつけられる。
「テメェが待ち受けにしたいって言ったんだろうが」
「うん。……え、私のスマホの話だよ?」
「誰かに見られたら困るって言ってたじゃねぇか」
「それは言ったけど」
それがどうしてレオナくんのスマホの待ち受けを変える話に繋がるの? たしかに私がスマートフォンの端末を操作して待ち受けを変えるって点では同じだけど、私の目的それじゃないし。スマホ開く度この写真が見られたら嬉しいなって思ったからなんだけど、伝わってないのかな。私がレオナくんのスマホ持ち歩くわけじゃないから意味ないんだけど。
「やりたくないなら良い。返せ」
「や、待って! やる!」
なんかよく分からないけど、変えさせてくれるのなら変えよ。貰えるものは貰っておけってよく聞くし。設定画面を開いてさっき撮った写真を待ち受けに設定する。てか、レオナくんだって誰かに見られたら困るのは一緒じゃないの? レオナくんのスマホのぞくような人なんていないのかもしれないけど。
「はい、できた。なんかありがとう?」
「どういたしまして」
返したスマホはぽいっとソファーに投げられた。確認しなくて良いのかな。本当になんで変えさせてくれたんだろう。私がただスマホの壁紙を変える動作がしたいと本気で思ってたのかな。
レオナくんは近くにあったアルバムを開いて見始めていた。アルバムなんか見ても面白くないって言ってなかったっけ。何かが足に当たったと思ったらレオナくんの尻尾だった。左右にゆっくりソファーの上で揺れている。……なんにも分からないけど、なんか機嫌良くなったみたいだし、良かったのかな?