森田ひかる
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自分の意思を偽って曲解させていくほど何かが安っぽくなっていく。
根拠もなく褒めちぎるラブソングに反吐が出る。
誰かに求められて、もてはやされて生きていく気持ちよさを知ってから女の子ばかり求めて遊んでる。
簡単なんだよな、みんな。
かわいい、すきだよ、あいしてる。
何かとつぶやけば落ちるすべてとこの顔に感謝して。
ほんとに可愛い女の子を抱いて。
月曜日は同じサークルの子。サークル終わりに家行く。
火曜日は電話しよ電話しよってうるさい子。そろそろ切る。
水曜日はお店の子。一番顔が好みかも。
木曜日はものわかりのいい先輩のところ。たばこ吸うから嫌い。
金曜日はちょろい後輩。何時でも入れてくれる。
土曜日は本命なまえちゃんのもと。
ま、本命っていうか一番ちょろくないから好きなだけかな。
まだ抱かせてくれてないし、
たぶん今日いけんだけどさ
結局イケメンで優しくて、なんでもうんうん聞いてるやつがすきなんでしょ。
森田「なまえちゃん、俺だよ」
『はーい』
マンション住まいのなまえちゃんに一階のインターホンから鍵を開けてもらう。すこしは機嫌を取ろうかと、高めのアイスを持ち込んだ。
ガチャっと鍵が開いて、スリッパが床を叩く音がする。
『え、ひかるくんアイス買ってきてくれたの!?』
森田「うん、これ、なまえちゃん好きやろ?」
『うん、冷蔵庫いれとくね~』
ドアが開いてもなまえちゃんは「おかえり~」も「おつかれ~」も言わない。媚びてこないとこも好きだし、途中で帰るって言ってもいいよ~ばいば~いっていうテンションで送ってくれる。
俺に固執しないところ、媚びてこないところ、女を出さないところ。
全部早く俺のにしたい。
ま、付き合うとかじゃないけど。
味が染みついた毎日だからね。
なまえちゃん、お風呂入ったのかな。
いつもより少しシャンプーとかボディミルクのいい匂いがする。
甘くて鼻を抜ける匂いが思わず抱きしめたくなったけどやめて、おとなしくとなりに座った。
森田「なんか、今日のなまえちゃんいいにおいする」
『え~?』
森田「俺、この匂い好き」
『残念、いつもいい匂いです~』
長い髪を束でとって優しく香るとほんとにいい匂いがして、会話も含めて嫌いじゃない。
なにを考えて俺が来るのにショートパンツを履くんだろう。
皆俺が来ると気合を入れた服で出てくるのに、照れて顔をそむけるそぶりもなくコンタクトも外して丸眼鏡で。
『ラッキー、アイスたべたかったんだよね~』
森田「はははっ、そんなに気に入ってくれた?」
『歯磨き前でよかった~』
のんきな子。
今から俺になにされるかわからないのに。
アイスくらいで上げてくれるテンション。
安上がりな人だ。
『終電逃して帰れないなんて災難だね~』
森田「ほんとに災難だったよ~家入れてくれてありがとね」
『アイスたべれるからいいよ~、あお風呂入る???』
は?当たり前だろ
森田「え、入っていい~???」
『いいよ~バスタオル出すね~』
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森田「は、?」
『見て〜、綺麗にお布団ひけた〜』
お風呂から上がるとリビングに端正に布団が敷かれていた。
なんなら実家から持ってきたと言わんばかりの布団。
お前、寝室にデカいベッドあるよな?
『ごめん今日森田くんここで寝て〜』
森田「え、あ、」
『、????。ベッドじゃなきゃやだ?』
こいつ愛想もなければ、ムードもないな
逆に言えばそういう手法なの?
可愛くないよ?全然
森田「も、もう布団敷いてくれたんや」
『そう〜、私明日早いからさ〜』
森田「え、寝るの?」
『???寝るけど???』
あくびをして伸びるその子にニッコリと微笑んで、バスタオルを机におく。
この興味の無さそうな無機質な瞳をどうにか揺らしたい。
もっと、溺れてもらわなきゃこまる。
寝よ〜なんてアホヅラこいてるこいつに近づいて、なまえちゃんが腰掛けていたテーブルに向き合うように手をついて、顔を作る。
森田「なまえちゃんのこと、寝かしたくないな」
『???』
森田「…ねぇなまえちゃんのこと」
『あー…え…しないよ?』
森田「…は?」
胸をそっと押される。
口角がピクリとも上がらないで、なんなら目は無機質なままで。
アイス食べてる時のほうが表情動くとかどうなってんだよこの女。
『可哀想だから泊めただけで、』
森田「はー、あっそ」
『こーわ、ブチギレてる』
森田「何、具合でも悪いの?」
『いや、普通に好きじゃないとできない』
森田「俺でも?」
『は?だめだけど』
森田「見る目な」
『…なんか大変そうだね』
ずっとその「足りない何か」を埋め続ける為に消費して身を削り痛むのやめようよ。
足りなくていいよ。
一生埋められないんだし。
自分の中の足りないものを必死に埋めようとして何かにしがみついている。
依存、執着、失うことに対する恐怖。
根底にあるその足りないものは「代わりの何か」では絶対に埋まらないのに。
“女の子”に固執しすぎ。
本気で愛せないなら、手放してあげればいいのに。
森田「説教とか…冷めるわ」
『冷めるほどあったの?熱』
森田「っ、だる」
『????。なんで不機嫌なの?』
森田「は、?」
『図星だから?』
歯磨きしよ〜っとって洗面台に行きやがった。
奥歯をギリリと噛んでいる感じがした。
全てわかった。
こいつ、俺の事男だと思ってない。
だから意識もなく、ワンチャンもなく、肉体関係も無いから、脳もなく男を泊めてショーパンで出迎えるんだ。
風呂に入ったいい匂いで隣に座るんだ。
帰る、と言って立ち上がると、
あの呑気な顔で「アイスいいの?」って聞かれて余計ムカつく。
馬鹿な女に時間を使ったこと、お金を使ったこと。
あー、
全部ムカつく。
『ほんとにいいの?レディーボーデンだよ?』
森田「いらねぇよ、ばーか」
『え、帰んの?雨だよ?』
森田「うっせ」
『アイスチョコだよ?食べたくない?』
森田「いらねぇわ」
『えー、じゃあ寝ないから一緒にドラマ見ようよ』
森田「見ねぇよ帰る」
『他の女の子寝てるのに〜迷惑ばっか』
森田「は?うっさ」
『まじ見よ、その性根変わるから』
森田「誰が性格悪いだよ、だまれ」
『待ってねポップコーン作る』
森田「…だから見ねぇって」
『悪役令嬢に転生しちゃった主人公が転生したこと周りにバレないように奮闘するんだけど、唯一の家臣に溺愛されてバレる話、どう?』
森田「……ちょっと見たいかも」
『おっけい、すわれ』
大園「なまえちゃんまじ面白い」
森田「その後4時までドラマ見せられた、しかも解釈付き」
大園「そういうとこ好きなんでしょ?」
森田「いや、ムカつくからなかせたい」
大園「それを好きって」
森田「俺、ぞのみたいに性癖曲がってないよ」
大園「まじでだれが言ってんだよ、本命手に入れられないくせに」
森田「まじであの女ムカつく」
大園「あれ今なんていうと会ってくれるんだっけ?笑」
森田「………。“なまえちゃん、ロマンチックなドラマみたいんだけどおすすめある?”」
大園「誘い文句これじゃないと会わないの面白すぎるだろ笑。ひかちゃんなのに!?笑」
森田「くそっ」
大園「しかもレディーボーデンないと家開けないの面白すぎる」
森田「“出直せ”って言われる」
大園「週6で女抱いてた男の扱いではないな」
森田「ちがう、週4」
大園「変わんないよ笑。今は?」
森田「……週4でドラマ」
大園「wwwwwwwwwwww」
森田「……まじでなんなんだよ。」
大園「他の女の子抱くのとなまえちゃんと会うのどっちドキドキする?」
森田「…………前者」
大園「はいダウト〜!!!笑」
飲み屋で両手を叩くぞのの肩をぺしっとたたく。近況報告という名の女の子討論会で最近のことを暴露すればあひゃあひゃと笑われてしまった。
まじで意味がわからない。
他の子の下着姿より、あいつのショーパンのほうが興奮する。
森田「…誰があの女と」
大園「いいねぇ、告白とかしないの?」
森田「…好きじゃないもん」
大園「拗れてる〜!」
おわり