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武元「ほのぉ〜…」






紆余曲折いろんなことがあったけどきちんとパートナーとしての街道を歩いてきた私たち
付き合うまで数年、同棲までも1年、次は何年かかるんだか分からないけど、こうして2人で仲良く暮らしてきた

まぁそんななかで喧嘩があるんは普通やと思うけど、まさかこんなに尾を引くとは思わなかった

どーでもいいことで口喧嘩になって、私よりも早く家を出た保乃を見送り、一人で頭を抱えた朝。

飲んだコーヒーはすっごく苦い
一人でカシャンカシャンとお皿を洗って重ねる
ぼーっと考えてたら自分も家を出る時間で、思っていたよりも耽っていたのか少し急がないといけなくてバタバタと家を出た。

これがいけなかったんよな
家に携帯を忘れたんよ

駅で気づいて
戻るには時間が無さすぎた
この歳で会社の最寄りまでいくらかかるのか大きな看板をみて切符を買った情けなかったらありゃしない

会社のメールはパソコンに来るし
会社内では特に困ることはなかったけど保乃とは案の定連絡がとれず…




保乃:唯衣ちゃん今朝はごめん
保乃:保乃が言いすぎた



保乃:今日は帰ってきたら一緒にご飯食べたい



保乃:唯衣ちゃん、無視はあかんで

保乃:唯衣ちゃんちょっと電話できる?

保乃:怒っとるんやったら謝るから




帰ってきたらおかえりって出迎えてくれんから、まだ帰ってないかと思えばムスッとリビングで腰を下ろしてローテーブルに肘をついてムスッと眺めている保乃。
そそくさと今ご飯作るからと言ったら無視
保乃?と顔を覗き込んだら「………」ふいっと顔をそむけられた。

その時は何でこいつまだ怒っとんねんって思ったけどそりゃ怒るよな?
コートを脱ぐために部屋に行くと忘れた携帯が置いてあって、無意識に手を取るとこの有様。

なんなら不在着信が2件も入っていてどっちも保乃から。

武元唯衣、大反省中でございます。

事情を説明しても中々機嫌治りそうにないこの人の肩をポンっと叩いて、「保乃」と名前を呼んだら、「…お風呂行ってくる」と振られ

傷心。


一人で頭の中を掛け巡らせる
あれ、保乃への機嫌のとり方ってどうやったっけ
いつも謝ってくれるのは保乃やったし、結局いつも夜にはニコニコ2人で笑ってたし、あそこまで芯を出して不機嫌に当てられたことすらなかった。

気を使われてたのかな今まで

怒られたことやってある
そりゃそのくらい一緒におったもん
けど、けど今になってよく分からなくなってきた

勢いと恥じらいは何年経っても必要だと思う。
勢いで波に乗ってしまえば、のちのちついてくる恥じらいは保乃が沈めてくれるだろうし。
今思えば全部全部保乃の優しさだったんだろうな




ガシャンと保乃がお風呂場から出た音がした
謝らないと
謝って許してくれるかわからんけど、
とりあえず謝らんと保乃がほんとに嫌いになっちゃったらどうしよう、




駆け足で向かっていく
ドテドテと足音がしている気がするけれどそんなことよりも保乃にあんな顔させたくない
ほんまにどうしよう、このまま保乃口聞いてくれんかったら






武元「保乃、!」


田村「?!?」


武元「ほの、ほの、ほんとにごめん、唯衣今日「唯衣ちゃん」


武元「唯衣今日おうちに携帯忘れてってそれで、返信できんかったの「唯衣ちゃんあの」


田村「し、下着だけ着させてくれん?」


武元「あっ、」







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武元「………………」


田村「……………。」






服を着てスウェットを着た保乃がドシッと床に座り、肘をついて正座の自分を見ている。
綺麗な顔がぐっとじっと見ているのは本当に緊張する。

いつもはアホみたいにほのぼのしてて、
表情が柔らかくて、
唯衣ちゃん唯衣ちゃんって言ってくるのに

この沈黙も自分が破らないといけないのに、
喉の奥で言葉を噛み締めては何も出てこない
いつもなら、今朝ならパンパンたくさん溢れてきたのに、憎まれ口ばかりな気がしてきた。







武元「保乃、」


田村「…うん」


武元「唯衣今日保乃と喧嘩したあとおうちにスマホ忘れとって、無視してたわけやなくて、ほんとに「それは聞いた。それで?」


武元「ご、ごめんなさい」


田村「………」


武元「っ、保乃唯衣なんでもするから、機嫌直してやぁ…唯衣のこと無視せんでよ、」






鼻の奥がツーンとする
こんな話し方がしたいわけじゃないのに
真剣に保乃の顔を見ているはずなのに絶対眉毛は下がって目尻も落ちている

ひどくため息をつかれた
肩がびくっと震えて上半身が薄く後ろに引いてしまった気がする

保乃はついていた肘を下ろして、
脚に手を置いて体をこっちに向けた。







田村「保乃ばっかり好きみたいで嫌や。」


武元「…?」


田村「…男相手になんでもするって言っちゃうところも嫌や」


武元「……っ」


田村「けど、唯衣ちゃんにそう言われて機嫌直っちゃう保乃も嫌、や…」


武元「!」


田村「唯衣ちゃんおいで。」






おいでと言われたのが聞き間違いだったんじやないかって思うくらい不安に思っていたのがバレたのか、ふふふっと笑われたまま長くてたくましい腕に抱きしめられる。
引き寄せられた体はいとも簡単に保乃の方に倒れて向かい入れる形で保乃が受け止めてくれた。

交わした温もりが保乃でよかったって思う
こんなに暖かくてちゃんと好きな人これからもいない
今日は負けじと抱きしめてやろうと両手でキツくしめたらニコニコとした顔が名前を呼ぶ






田村「唯衣ちゃん帰ってこんかと思って心配やったんやで?」


武元「…ごめん」


田村「んーん、帰ってきてくれてよかった、保乃怒りすぎてごめんな、唯衣ちゃんに無視されてむしゃくしゃしとったんよ」


武元「…唯衣もう保乃んこと無視せん、唯衣今日保乃が話聞いてくれんくて、もうずっと口聞いてくれんかと思って、それで」


田村「わかっとるよ、唯衣ちゃんの気持ち。お風呂に来た時はびっくりしたけどな笑」


武元「あーれは、ほんまに」


田村「どんだけ保乃に会いたかった〜ん?笑」






だまれだまれだまれと気持ちを込めて保乃の胸にぐりぐりとおでこを押し付ける。
今日の唯衣ちゃん可愛すぎる〜と笑っているこいつがどうしようもなく好きで茶化されているのすら嫌じゃない
今日だけ嫌じゃない





田村「焦ってくれたんやろ?」


武元「…唯衣もお風呂行ってくる」


田村「ドライヤー今日保乃がしてもい?」


武元「ううん、保乃疲れとるやろ寝とって」


田村「いやや〜せっかくおるのに寝るのもったいないやん、だめ?」


武元「唯衣ばっか保乃にしてもらっとる、今日はいい」


田村「保乃がしたい、唯衣ちゃんに触ってたいんやもん、あ、保乃ももう1回お風呂入っちゃおうかな〜?」


武元「…ええけど」


田村「えっ」


武元「嫌ならいい。」


田村「待って唯衣ちゃんと入る為にいい入浴剤買っといたんよ待って唯衣ちゃんいかないで早い歩くの」






おわり
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