🐰🐈‍⬛








付き合ってからこんな試練を受け取ったことがなかった。






スマホにメッセージが届いたと思ったら瞳月からで、

瞳月:風邪かも

ずいぶん簡単なメッセージ。
相変わらず…ため息を付くけれど、前までは電話ができないくらいのどが痛くなったり、立ち上がれないくらい熱が上がらないと連絡してくれなかたから進歩進歩。



優:大丈夫!?病院は!?

瞳月:行った

優:えらい
優:今おうち行くから横になっててね!!



無理やり押しかけるつもりのメッセージはすぐ既読がついた。
どうせ瞳月のことだから来んでいいって言ってくる
そんなことは付き合う前から分かってたから行ってもいい?って聞くんじゃなくて先手を打ってしまえば断りにくくなるだろうと思って。


優:買ってきてほしい物とかあるかな!?
優:いらないとか言わないよーに!!!!





少し長い間が空いて返事が返ってきた。


瞳月:お水とおかゆ


瞳月からのおつかいだ!!!
思惑通りに進んだみたいで笑みがあふれる
付き合いが長くなって来れば瞳月の取り扱い方もわかってくる
はず!!!
きっとそうだといいな


でも押し掛けるわけだからやっぱり早めに帰ろう
怒られちゃうかもしれないし…






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山下「…ごめん優」


村井「おじゃましまーす…。大丈夫?」


山下「大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば大丈夫じゃないと思う、」




顔が真っ赤になっている瞳月に出迎えられる。
いつもであれば気だるげの目が、熱で溶けているように感じてかなりしんどそう。
さすがの私でも一目でわかる
心配しつつも瞳月の部屋へと入っていく
なすがままの瞳月をベッドまで誘導して、布団をかけた。
瞳月はけほけほと軽い咳をしながら可愛らしい布団の中でもぞもぞと動いてこちらを見ていた








村井「食欲はある?買ってきたおかゆ食べる?」


山下「…食べる」


村井「わかった。ちょっとキッチン借りるね」







瞳月の家は何回も来ているし、場所も覚えた。見た事のあるレンジで温める。
きちんと温まった事をスプーンで混ぜて確認すれば、布団にくるまっている瞳月の元へと向かった。







山下「優…」


村井「どうした???どこかいたい???」






おぼんをベッドまで持っていき、サイドテーブルに置いて瞳月に渡そうとしたら、瞳月が起き上がっておかゆを見つめていた。掴んだスプーンはきちんと持ってきているのに動かない。目線はおかゆを見つめたまま、ただ往復することなく一点をみつめている。






村井「ど、どうしたの?もしかして好きな味じゃなかった???たまごとかはいってるやつがよかったかな???」



山下「いや…その」





歯切れが悪い。何か言いたそうに口を開いては閉じる動作を繰り返すので、具合が悪くて気持ち悪いのかな?と思い体温計を取りに行こうと立ち上がる。





山下「優……」


村井「待ってね、今体温計さん持ってくる」


山下「ゆうってば、………」


村井「????どうされた」



山下「…食べさせて」






瞳月がはっきり言った言葉に固まる。
食べさせてほしいって、え?私が?
瞳月の口に?






村井「い、いいの……?」


山下「うん」






熱のせいか少しとろりとした目で見つめられる。その目に見つめられると断れなくなってしまった、けど断る気がなかった、普通に瞳月の為にしてあげたい。
私は小さく頷いてからスプーンを手に取った。熱いかもしれないからちゃんとふーふーもした、







村井「はい、あーん……」


山下「あ、」






瞳月は躊躇うことなく口を開け、ぱくりとそれを食べて、少し熱かったらしいけどもぐもぐと口を動かすので「美味しい?」と問いかける。




山下「ん、まぁ、普通に、」



村井「よしよし、たくさん食べようね」






かちゃりとスプーンを置いて瞳月に渡そうとすると、「優…あ」と当の本人は口を開けたまま待っている。
スプーンを渡そうとした手は動こうとしない。
これ、最後まで食べさせてってことなんだね!?そうなんだよね…!?
少し恥ずかしさを感じながら、もう一度おかゆをすくって瞳月の口元へとスプーンを運ぶ。
少し美味しそうに食べていたのが可愛くて頭を撫でてしまったら、「…次」と言われて忙しなくスプーンを運んだ。



可愛い、可愛すぎる
結婚したい
ほんとにかわいい、なんで今日こんなに甘えてくれるんだろう






村井「さて…ご飯も食べたし、後はゆっくり寝よっか」


山下「ん」





もそもそと布団の中へ上半身を入れていく瞳月。
まず空になったおかゆをさげるか。
立ち上がってふと、目に映ったのは空のグラス。
これはまずい、買ってきたお水を入れてあげよう!
グラスを手にしてその場から立ち上がった。





そしたら






山下「…ねぇ……なんでどこか行こうとするん」


村井「!?!?」


山下「近くに居てくれなきゃ嫌…」







ぎゅうと掴まれた服の裾。
必死に伸ばされた右腕と、それに付随する小さい指。
この状況。
ぎゅう、と掴まれた裾からはいつもより高めの体温が伝わってくる。


というよりも、これは試練なの……?
村井優、大ピンチであります
こんなに瞳月が可愛いなんて聞いてないよぉ…!







村井「瞳月あのね、今ね優ちゃんさんね、その、瞳月が飲むお水をね?ほら買ってきてっていってたやつ、それを今から入れようと思っていて、そうなの、あとこのおかゆのお皿を片付けたりとか、どう?しないとたいへんじゃん?瞳月喉乾いたら飲みたくなると思ったんです、おみず、お水飲まないと治るものも治らないしさだからその」



山下「いなくならんで、」





ぽつりとつぶやかれる。
その声はいつもの瞳月からは考えられないくらい、弱々しくて、固まる。
てか声出ない






山下「ねぇ、聞いてるの」






振り向いた私を上目遣いで見てくる瞳月はたぶんわかっててやっている。
これに弱いのを知ってる。
けどいつもとは違う、少し甘えたな瞳月に調子が狂いそう、てか狂っているどうしよう。
どうすればいいのかわからないまま、心臓をバクバクさせながら叫ぶことしかできなかった







村井「お、お水!ポカリとか持ってくるから!!!!」



山下「いらない」



村井「えぇ!?飲まないと瞳月干からびちゃうんだよ!?!?」






私の言葉にも聞く耳をもたないのはいつものことだけど、それどころか裾を掴む力がどんどん強くなっていって、私はもうどうしていいかわからずただされるがままになっていた。






山下「やだ、優と一緒にいる」



村井「うう…!」





そう言われてしまっては、私はうなるだけ。
うなっているだけでほめてほしいくらい
だって本当は抱きしめたい
普段あんなに塩対応なのに、こんな時甘えてくるなんて本当にずるい…瞳月ずるいよ…






村井「ね瞳月私の事、好き?」


山下「好き」


村井「うっ、」


山下「好き、だからどこにもいかないで、やださみしいもん、」


村井「わ…わかったから!どこにも行かないよ!」


山下「ほんと…?」


村井「ほ、本当です…!」







すると、少し裾を掴む腕の力が弱まった。
ぱたんと落ちた腕を布団の中に入れてあげて膝をつく。
ベッドに両肘をついて、布団にしまった手を両手でにぎった。






村井「ね?ずうっと一緒!」


山下「…ん」






そのままゆっくり寝てもらうためにもゆっくりと瞳月の頭を撫でると、力無く目を閉じて眠った。





村井「これって、私もお布団入って一緒におねんねしたら怒られちゃうのかな?」





大歓迎だよね





おわり
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