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武元「どおおおおしよおおおお…」
大園「ははははは笑」
うなだれて机におでこをつける。
手を丸めて、トントントンと机を叩くとぞのが両手を叩いてケラケラと笑っていた。
あの烏の羽根のような、マッシュの綺麗な黒髪が揺れる。
長袖から零れる細くて長い指がただただ煽られている気分を逆撫でしてくるようだった。
武元「なんにもおもしろないてほんまに」
大園「面白いよ困ってる唯衣ちゃんは」
武元「あぁ?なんてぇ?」
巻かれた髪
甘くていい匂い
アイラインのハネまでこだわってあるメイク
Theキラキラ系女子から声をかけられたと思ったら、保乃の連絡先が欲しいらしい。
“保乃くんの連絡先ほしいな”
“唯衣ちゃんなら持ってるって思ったんだけど…”
“おねがい♡”
あいつモテるんやな。
う、うん!と答えたら嵐のようにどこかに消えたその子。
あー、唯衣に用があったんやなくて保乃に用があったんやな。
別になら、保乃の連絡先なんて誰だって持っとるやろうに。
なんで唯衣に言ってくるんやろ
話しかけてくれたのに、
まぁ唯衣に用があったわけやない、保乃の連絡先がほしいねんて。
嵐のように消えていくからその場で連絡先をあげることもなく、話だけ聞いて終わってしまった。
許可を取っておけという意味なのか、なんなのか。
慣れてない自分にはあんまりわからなかった。
結局仲良い人の仲良しになりたい人ばかりが話しかけてきては去っていく。本当に自分と仲良くなりたい人なんてこれっぽっちもいなくて、数人ちらほらいるくらい。
周りばかりが人気者で、周りばかりが色んな人にそういう目で見られていくこの焦燥感って何だか気持ち悪い。
結局は何が言いたいのかすら、わからなくなってきた。
大園「保乃くんの連絡先どうする?送っちゃう?」
武元「………送る。めんどいから」
大園「けどさ唯衣ちゃん。なんで保乃くんの連絡先あげたくなかったの?」
武元「あげたくなかったわけやない」
大園「ううん、賢い唯衣ちゃんなら、その場であげたよね?」
武元「…知らん、その子すぐおらんくなったし」
大園「あげてその子と保乃くんが仲良くなること想像した?」
武元「ちがう」
大園「ふーん。…ふふふ笑」
武元「何が面白いねん」
大園「いやぁ、唯衣ちゃんって可愛いなぁって」
だらしなく机の上に伸ばされた両手に、あの袖から伸びた両手が重ねられる。
少しびっくりして目を合わせるとあの切れ長な目が下に垂れてきゅうと微笑んだ。
大園「僕はいいと思うよ〜流しても。保乃くんの連絡先なんて皆欲しいだろうし」
武元「…よな、別に唯衣がスマホいじればその子もハッピーやし」
大園「あ、そういえば唯衣ちゃん。唯衣ちゃんの相談乗ったんだから僕のも乗ってよ」
武元「なん」
大園「僕新しくピアス開けようと思うんだけどさ〜どこがいいかな〜?」
武元「知らんて」
ぞのはいい意味で唯衣の話テキトーに聞いてるから話しやすい。
聞いてるんだか聞いてないんだか。
聞いてないやろって聞くと聞いてるって言うのに、こうやって話題逸らしてくるところとか。
絶対聞いてないやろ。
武元「唯衣ピアスとか詳しくない」
大園「ここか、ここか、まぁ軟骨は怒られそうだから、ここ。どこがいい?」
武元「もう耳たぶはあいてるやん」
大園「2連にしようかな〜って。どう思う?」
武元「だから唯衣わからんねんて〜、!」
こいつはやっぱり人の話を聞いていない
人の話を聞かないくせにモテるのはやっぱり顔や
顔以外は
頭だけいい
顔と頭以外は
やば、こいつバスケ部や
このひとモテる要素満載なのなんなん
嫌になってきた
大園「じゃあ唯衣ちゃん僕のピアス開けてよ」
武元「は???」
大園「僕の話聞いてなかったでしょう〜」
武元「いや」
大園「じゃなんていった〜?」
武元「やからピアス「ピアスなら保乃が開けんで」
田村「聞こえた?ピアスなら保乃が何回でも開けてあげんで」
学校の食堂の机に片手をついてぞのと向き合う保乃
スクバの持ち手の片方がぺろんと唯衣の頬を撫でる。
椅子に座ってる唯衣よりも立ってる保乃が前かがみに手をついていて目線の高低差がなくなった。
ニコニコとあの切れ長の目が潰れて、ん?と音符が語尾につく。
大園「なぁんだ、保乃くん来てたの?今保乃くんの話してたんだよ〜」
田村「えっ唯衣ちゃんと?」
大園「あっそこは聞いてなかったんだ。ざんね〜ん笑」
ぞのが急にふらっと立ち上がって隣のイスにかけていたスクバを手に取ってポケットに手を入れる。
田村「…とにかく唯衣ちゃんがピアスは無しや」
大園「保乃くんピアスの場所は決めとくから開けてよ」
田村「それはええで」
大園「やった、じゃあ明日ね」
田村「ばいばい玲くん」
「じゃあね唯衣ちゃん」と、
爽やかにローファーを鳴らして歩いていくモテ男
あいつも嵐のように帰っていくけど陽キャは、嵐のように帰るのが流行りなんか?
2人残されて唯衣に何をしろって言うねん
まぁ残されたのは帰るのみなんやけど
田村「唯衣ちゃん、」
武元「ん?」
田村「玲くんと何話しとったん…、?」
この男次瞬きしたら目の前に座ってたんだけど光の速さか?
デカい上半身で前保乃しか見えへんねんけど壁か?
武元「はい?笑」
田村「笑い事じゃない、ひどい保乃がいないところで保乃の話…」
武元「いやいやいやいや笑」
田村「真剣に聞いて」
武元「なに本気にしてるんよ笑」
田村「いいから言って!」
このデカい図体で駄々をこねるな
保乃とおると目立つから嫌やねん
ぞのといるときに飲んでいた水に目をやると手を重ねられる。
ごつごつとした指に包み込むように分厚い手が無駄に暑苦しいかった。
武元「唯衣は何も知りませ〜ん」
田村「うそ」
武元「保乃がモテるからや〜ん」
田村「はい?」
見た目が良い男子特有の「自分がかっこいいの分かってる感」が保乃から一切感じられないのほんとびっくりする
「まわりがあまりにもそう言ってくるからもしかしたらそうなのかも???」くらいの雰囲気なところがとてもいい所
変なところが鈍感で、自分に向けられるいやらしい行為を拾い上げないところが保乃らしい
武元「隣のクラスの子が保乃の連絡先欲しいんやって」
田村「……はぁ」
武元「なんでため息やねん」
田村「なんでもない」
武元「唯衣に話しかけてきてん」
田村「…あげたん?保乃の」
武元「いや、あげとらん」
田村「…そう」
前のめりだった姿勢が椅子に背をつける。
少し呼吸を置いてから、目線にハイライトが入る
田村「なんであげんかったん?」
武元「なんでって」
田村「なぁなんでなんで???」
武元「待って保乃暑苦しい」
田村「あ、」
近すぎて暑いっていったらひゅっとあの大きな上半身が背中をつけた。
ごめんごめんと笑いながら柔らかくジャケットをなおす。
ぼそっと呟く言葉をつつくと、「やってな〜?」なんてつづける
田村「やって、もしかして」
武元「うん」
田村「唯衣ちゃんが保乃の連絡先あげんかったの、他の子と保乃が仲良くなるん嫌やったらええ「あほか」
武元「寝ぼけてるんか」
田村「だったらええのにってだけやん!!」
武元「笑笑笑笑。それであげてええん?」
田村「ん〜、あげても、んんん〜、唯衣ちゃんの連絡のほう欲しい」
武元「?」
田村「その子からの連絡より唯衣ちゃんからの連絡のほう頑張れる。やから、その子に連絡先あげても保乃、バレーばっかやからって言っといて」
武元「っ!」
田村「保乃、唯衣ちゃんと話して元気出た。部活行ってくる」
武元「は、」
照れ隠しかなにか、されたことないことをされた
あの大きい手で頭をポンポンと撫でられる。
いつもは頭に入ってくる活字が全部メロドラマのように色で入ってくる
保乃の言葉を反芻して携帯を握る
後ろ姿で足早に帰る背中を悔しげに見つめる、角を曲がろうとした保乃がぐるっと顔をこっちに向けてばちっと目が合う
武元「っ!?」
ほんとばか。
こっち向くなんてわからなかった。
ただひとこと、“部活頑張れ”と文字を打った。
おわり