重なる影、繋ぐふたりの帰り道
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<第2話>
ーーー懐かしい夢を見た。
幼稚園の頃の夢だ。
『うわぁーん、てつがとったぁー!』
「ちっげぇよ!とってねぇ!」
「アラアラ、どうしたの二人とも・・・」
おもちゃの取り合いで鉄とケンカになり、私は泣いていた。
そこに園の先生が仲裁に入ってくれる。
「鉄男くん、ねむちゃんにそのおもちゃ貸してあげてくれる?」
「コレこわれてるんだよ・・・」
音が鳴らなくなったおもちゃで遊ぼうとしたら、鉄が取り上げて治そうとしてくれた。
私はただ横取りされたと思って泣いてたんだ。
「鉄男くん、コレはね、ここのスイッチを入れると音が出るの。ホラ、これで音が鳴るからねむちゃんに渡してごらん」
「・・・ん。」
『わあー』
音が鳴り出したおもちゃを見て、機嫌が直った私に鉄が言った。
「オレさまにかかれば、こんなもんあさメシまえだぜっ」
『てつがなおしたんじゃないじゃん〜』
ケラケラ笑う私を見て、鉄も笑っている。
この頃から私は、鉄の笑った顔が好きだった。
それから・・・
事あるごとに鉄は友達を泣かせてトラブルになってたけど、全部理由があったのを思い出す。
プールに落っこちそうになった子を引っ張って転ばせちゃったり、友達が木に引っかけたボールを取ろうとして、その子の頭にボールを落っことしてしまったり、
友達を助けてあげたくてやってる事が上手くいかない。
今と違ってどこか不器用だけど、優しい鉄が好きだった。
小学校に上がってすぐの頃、
私が同級生の男の子に怪我させられて泣いた時には
「オメーねむのこと泣かしてんじゃねー!」
って私の代わりに怒ってくれた。
そのあと家までおぶってくれたんだけど、もうフラフラで、
『・・・てつ、もういいよ。わたし一人で歩くよ』
「いーから。おまえ泣いてんじゃん。オレ、ねむに泣かれるとどーしたら良いか分かんねぇんだよ・・・」
『・・・』
多分、なんかその時、鉄のために笑ってたいなって思ったんだよね。
私が笑うと鉄も笑ってくれるから。
鉄には、いつでも笑っていてほしかった。
だから鉄が囲碁教室に通い始めた頃から、時折しんどそうにしてるのが見てられなくて、
色々とお節介を焼いてしまったと思う。
ほんと、懐かしい夢だな・・・
今、あの頃の頼りないけど
安心する鉄の背中にいるようなーーー
『・・・ん・・・ぅわっ!鉄?!』
「おー。よっく寝てたなー」
『ちょっと、どーゆー状況?!下ろして下ろして!』
「お前フラフラして倒れたんじゃねーか。危なっかしいからじっとしてろって」
『ぅ・・・』
どうやら学校で倒れてしまった私は、鉄におぶって運ばれてきたらしい。
できれば下ろしてほしかったが、最近寝不足で体調が万全でない私は大人しく従う事にした。
あの頃に比べると、鉄の背中はずいぶん大きくなったけど、変わらない安心感に顔がほころぶ。
鉄の優しさに触れるたび、自分の気持ちがどんどん大きくなっていくのが分かる。
私は昔から、優しい鉄が大好き。
自分の気持ちを確かめるように鉄にしがみつく腕に力がこもった。
ーTo be continueー