君がいれば
名前の変換はこちらから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
<第4話>
凍てついた心が溶かされていくようだった。
コイツはいつもそうだ。
いつも、オレの居場所を作ろうと振る舞ってる。
なんでそこまですんのか分からない。
けど、ガキの頃からいつもそうだったと思う。
今日それがはっきりとわかっただけで。
「お前、バカだろ・・・オレなんかのために」
『グスッ・・・バカって言う方が、バカだ!オレなんかって言うな!いつもオレ様のくせに!』
「・・・ハハッ、たしかに」
まだオレのことを離さないまま、泣きながら文句を言ってるのか慰めてるのかよく分からないねむに、オレはつい笑ってしまった。
『・・・てつ、やっと笑った』
「・・・えっ・・・」
『てつ、今日ずっと元気なかったから・・・わたし、てつには笑っててほしい』
ああ、コイツはこーゆーヤツだった。
オレが元気がない時に笑顔をくれるのは、いつもねむだった。
「・・・じゃあ、お前も笑っとけ」
『ふふ、そうだね』
やっとお互い顔を見合わせて笑った。
気付くとあたり一面は夕日に照らされて、
目の前の川は反射でキラキラと流れていた。
そんな景色の中で笑ってるねむは何よりもきれいだと思った。
その日はじめて気付いたんだと思う。
オレはコイツが好きだってことに。
ーーーそれは今も変わらない。
未だにオレの気持ちは伝えられてないままだ。
『あ!鉄が珍しく囲碁打ってる!』
「ぅおッ!ねむ、おまえ急に現れんな!!」
そんな昔の事を思い出していると、タイミングよくねむが通りかかり声をかけてくる。
『あれ。なんか鉄、カオ赤くない?』
「だぁー!うっせえ!あっち行ってろ!!」
『ちぇ、残念。筒井くん、鉄がいつもちょっかい出してごめんね!そこの子も巻き込まれちゃってるけど、コイツ根は良いヤツだから!』
それだけ言い残し、オレの背中をポンっと叩いてねむは別のブースへと移動して行った。
残されたオレたちの周りには碁盤にタバコに押し付けるヤツが良いヤツ・・・?と言わんばかりの空気が流れている。
まぁ無理もねぇな。
大体自分が良いヤツだとはオレは思っちゃいねぇ。
だが、そんな自分でも認めてくれるヤツが一人でもいれば良い。
だからオレにはねむだけいれば
それで良い。
そんな事を考えながら目の前の碁盤を見つめ、幼き日の自分とまた向き合うように一手一手を打ち続けた。
ーENDー