君がいれば
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<第3話>
「鉄男・・・お前がこのまま囲碁を続けても塔矢アキラに勝てないのは、よくわかった。・・・囲碁教室は、もう辞めなさい」
「ッ!・・・あぁ、囲碁なんてやめてやるよ・・・オレはもうオヤジには振り回されねえ!オレのやるコトに今後いっさい口出しすんな!!」
「鉄男!!」
昨日の一件から一夜明け、学校から帰宅すると突然オヤジはオレに囲碁を辞めろと言ってきた。
勝手なことばかり言いやがって、オレはどうにもならない怒りをさらけ出し家を飛び出した。
もうあんな家・・・帰りたくねぇ・・・
行くあてもなく途方に暮れて河原に腰かけると、ズボンのポケットからオヤジの部屋から盗んできたタバコとライターを取り出した。
むしゃくしゃして盗んできたけど、吸うつもりは毛頭なかった。
でも、もうどうでも良い・・・オレなんて、オレなんて・・・
カチッとライターの火を付けてタバコに押し当て、煙を吸い込む。
「・・・ッゲホ・・・まず・・・」
人生初めてフカしたタバコは全然口に合わず、それ以上吸う気にもなれなくてやめた。
何やってんだオレ・・・
『・・・てつ?』
その後どれぐらい時間が経ったのか、その声の主に気付き我に返る。
「ねむ・・・」
『また晩メシ抜き?』
すとんっとオレの横に座り、少しからかうように問いかける。
「今日は、違う・・・」
『ふーん。帰んないの?』
「・・・カンケーねぇだろ」
『そーだけどさ・・・』
オレなんかに構わなくて良い。
ねむには早くこの場を去ってほしかった。
「オマエ、もう帰れよ・・・父ちゃんと母ちゃん心配してんぞ」
『やだよ。だっててつ、泣きそうな顔してんじゃん』
・・・
オレは
まだ泣いてない。
泣いてなんかいない。
何もかも見透かされているような気がして、その優しさも煩わしく思うくらい、オレの心は限界を迎えていた。
「ッお前に!何がわかるんだ!」
気付いたらオレは叫んでた。
「優しい父ちゃんと母ちゃんがいる温かい家庭で育ったお前に、オレの気持ちがわかってたまるか!!」
違う
こんなことが 言いたいんじゃない
「オヤジに振り回されて、怒鳴られて、お袋からも助けてもらえない、家に居場所がないオレの気持ちなんか、わかるわけ、ない・・・!!」
全部言い終える前にオレは涙を止めることはできなかった。
ねむの顔を見れずに俯いているオレを、ねむが優しく抱きしめてきた。
『・・・たしかに、私にはわかんないよ。でも、わかんないとだめなの?・・・わかんなくても、てつの居場所をつくることはできるじゃん!なんで、1人になろうとすんの・・・?』
顔見なくてもわかる。
ねむがまた泣いてる。
オレのせいで昨日も今日も。
『わたしがてつの居場所つくる!だから泣かないでよ、二人でいれば大丈夫だよ・・・』
オレから離れようとしないねむの腕に包まれて
オレも一緒になって泣いた。
ーTo be continueー