君がいれば
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<第2話>
ピーンポーン
ねむんちで雑談をしていると不意にインターホンが鳴った。
・・・オヤジだ、オヤジが迎えに来たんだ。
今までの楽しい時間はどこへやら、オレの心はざわざわと騒ぎ、額にはうっすらと汗が浮かびあがった。
「はーい」
ねむの母ちゃんがインターホンに出てくれた。
「鉄くん、お父さん迎えに来てくれたわよ」
「あ、ハイ・・・」
玄関に向かって立ち上がろうとしたところ、オレの顔色を見てねむがオレの手をぎゅっと握ってきた。
『・・・』
なんで、オマエが泣きそうな顔してんだよ・・・
でも、気づかないフリして手を振りほどく。
「ねむ、今日はさんきゅ、また明日な」
これは、オレの問題だ。自分でなんとかする。
「ねむの木さん、またウチの鉄男がすみませんでした」
「良いんですよ!ねむも喜んでますし、いつでも来て下さいね」
「はぁ、ありがとうございます。ほら鉄男!帰るぞ」
「・・・うん」
足早にねむの家を立ち去る親父について行く。
少し歩いた所で親父からの檄が飛んでくる。
「鉄男!お前今日はメシ抜きと言っただろ!何をよそ様の家にあがり込んどるんだ!」
もううんざりだった。
でもオレには口答えできる権利もなく、無言を決め込んだ。
その態度が気に食わない親父はさらに怒りをあらわにした。
「鉄男!何とか言ったらどうなんだ!」
降り注ぐ怒号に足は竦み動けないでいると、身体が後ろに引っ張られるのを感じた。
「ねむ!?」
『おじさん、ごめんなさい。私がてつを連れてきたんです。だから、てつのこと怒んないでください!』
ねむはオレの前に立って、親父からの庇うように話を続けた。
『てつは・・・いつも一生懸命です!囲碁も、おじさんの期待に応えられるようにって、いつもがんばってる・・・。でも本当は、てつは将棋がやりたいんだ。おじさん、てつから好きなものをうばわないであげて!』
顔は見えないが、泣いてんのかコイツ・・・?
身体が震えてるのに、まっすぐに親父と対峙してやがる。
ねむが言ったことは、今のオレが思ってること全てだ。
こんなオヤジだけど、オレだって認めてもらおうと努力してる。
でもどーやっても塔矢には敵わないんだ。
何も言えずにただ呆然とねむの後ろに立ち尽くしている自分が惨めで情けなかった。
「ねむクン、これは私と鉄男の問題だ。鉄男の事を考えてくれてるのは有難いが、話はこちらでつける」
『っ・・・』
親父はそのまま歩き出した。
オレはねむの方に一瞥くれて親父の後をついて行く。
その時、ねむがオレにしか聞こえないくらい小さな声で言った。
『負けんな、てつ』
アイツはやっぱり泣いていた。
ーTo be continueー