昼下がりのあの子
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<第3話>
「先生ー、仮眠とらせてくれ」
加賀くんが風邪で休んだ日から2日後の昼下がり
ではなく、
この日彼は1限目の授業中の時刻に現れた。
いつもと違う時間に保健室のドアを開けた加賀くんに軽く驚きながら、身体の様子を伺う。
『加賀くん、風邪って聞いたけど体調大丈夫なの?』
「おう、この通りすっかり良くなったぜ」
いつもと変わらない様子に内心ホッと胸を撫で下ろす。
『じゃあ仮眠とらなくても良いんじゃない?』
「いーや、これはオレの日課だから」
『今日はずいぶん早い時間に来てるけど・・・』
「先生、3日もオレと会えなくて寂しがってるかと思ってよ」
いつもと違ってベッドに潜ることなく、私の横のイスに腰掛けて悪戯っぽく言ってくる加賀くん。
正直完全に言い当てられてる事実はさて置いて、私は先生として何を言うべきなのか瞬時に考えて言葉を返した。
『そうだね、心配した。・・・あの日様子おかしかったのに、気付いてあげれなくてごめんね?』
「いや、アレは違くて・・・」
私が顔を覗き込むように言うと、加賀くんの視線が一瞬揺らいだように見えたが、すぐに視線が重なる。
少しの沈黙の後で次に発せられようとする言葉を待った。
『・・・?』
「もー隠さず言うけどよ、オレ・・・先生のこと好きだ」
ザァッと外の金木犀がざわめいて、開けていた窓から秋の風が大きく流れ込んできた。
まるで私の心臓の音をかき消してくれるように。
「それ言いたくて、今日は来た。この前言いそびれちまったからよ・・・」
そんで風邪引くとかタイミング悪ィと加賀くんは付け足して頭を掻いた。
その姿はやっぱりちょっと幼いけれど、
真っ直ぐとこちらを見つめる澄んだ瞳が綺麗で
目が離せない。
本当は、気付いてた。
気付かないフリをしていた。
加賀くんの気持ちも、
自分の気持ちにも。
でも私は先生だから、答えられないんだよ。
未来ある彼をここで引き留めちゃいけない。
加賀くんには、これからきっと沢山の出会いがある。
私の事など思い出にして、これから成長していってほしい。
だから精一杯、背中を押してあげたい。
それは、紛れもない私の願いだ。
秋の匂いでいっぱいになった保健室の中で
すぅっと息を吸って私は言葉を紡いだ。
ーTo be continueー