君がいれば
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<第1話>
こんなヤツに オレの気持ちが わかってたまるか
オレの気持ちがわかるヤツなんて
アイツ一人でいい。
アイツがいなかったら、オレは今頃ーーー
ーーー4年前
『・・・てつ?そんなトコでなにやってんの?』
日が落ち出した夕刻。
オレは家の門の前に立っていた。
おつかい帰りなのか、買い物袋を下げた幼馴染のねむがオレに気付き声をかける。
「ねむ・・・。ナニってまた負けたんだよ、塔矢のヤツに。今日は晩メシ抜きだと」
チッと舌打ちをして、やり場のない感情を足元の小石にぶつけて見せた。
と同時に抑えていた腹の虫が根を上げる。
『・・・てつ、ウチでごはん食べようよ!今日はカレーだよ!』
ルゥが入った買い物袋を持ち上げて見せて、ねむはニッコリと笑った。
「・・・カレー・・・」
ねむの母ちゃんが作るカレー美味いんだよな、と生唾を呑んでつぶやくと有無を言わさずねむは強引に手を引いて歩き出した。
『ほら!はやくはやく!』
「あ、オイ・・・」
オレはコイツのこーゆーところに弱い。
でも命拾いしたと黙ってついて行く事にした。
『ただいまー!おかーさーん!てつも一緒にカレー食べて良いー?』
「あら、鉄くん!良いわよ。今日はお家の人帰り遅いのかしら?」
「あ、エッと・・・」
『おかーさん、私おなか減っちゃった〜。もうルゥ入れれば完成なんでしょ?』
「あ、そうね。お父さんもうすぐ帰ってくるから、早く仕上げちゃいましょ」
『てつ!手洗って座って待っててね!』
オレを気遣ってかねむは母親と一緒にキッチンに行き、オレに席で待ってるよう促してくれる。
席について待っていると、出来たてのカレーが運ばれて来て、ちょうど良いタイミングでねむの父ちゃんも帰ってきた。
「ただいま〜。んー今日はカレーか!おっ、鉄くんいらっしゃい!」
『お帰んなさーい!』
「あ、お邪魔してマス。」
『おとーさん、カレー食べたらてつと将棋指してよ!』
「ああ、もちろん良いよ!鉄くんの成長っぷりは目を見張るからな〜。おじさんもまだまだ負けてられないがね」
「え、良いの・・・?」
ねむの父ちゃんは趣味で将棋を指す。
たまに遊びに行くと相手してくれるんだ。
自分の家だと将棋を指させてはもらえないので、ねむの家に行く時はいつも楽しみにしていた。
オレの居場所を作ってくれてるみたいで。
「ーーー王手!」
食後の将棋はオレの優勢で進んだ。
オレが王手を振りかざすとねむの父ちゃんはうな垂れた様子で頭を捻った。
「ぬぅ・・・そこから来るのかァ〜、いやぁ完敗だ。次来る時までにおじさんも特訓が必要だな」
『てつが勝ったの?すごいじゃん!』
「鉄くん腕上げたわねぇ〜」
横で見ていたねむ達は楽しそうに歓声を上げる。
オレも嬉しくて自然と笑みが溢れる。
家でのオヤジからのプレッシャーに息が詰まるような生活とは大違いだ。
「・・・」
『・・・てつ?』
「・・・オレ、ねむんちの子どもが良かったな・・・」
単純にねむが羨ましくて、つい口から本音が出てしまった。
(!)
ハッとなって訂正しようと口を開こうとしたけど、それは遮られた。
「何言ってんの!鉄くんはもうウチの子どもみたいなもんじゃない!ねむと一緒にいつでもウチにいらっしゃいね!」
ねむの母ちゃんが温かく包み込むように言った。
「え、母さん、それってつまり・・・ウチのねむと鉄くんがケッコ・・・いやしかし、まだ早すぎでは・・・いやいや、どこの馬の骨か分からん奴を連れてくるよりかは・・・鉄くん!・・・ねむのこと、頼むな!ウッ!」
ねむの父ちゃんは横でうろたえていたが最後は男泣きしながら賛成?してくれた。
『てつ、良かったね。いつでも来て良いってよ』
ねむはというと悪戯っぽく笑っていた。
「オ、オレは、別に・・・」
その笑顔にカァッと顔が赤くなるのを感じ、反射的に俯いた。
コイツ、イミわかってんのか?
この時のオレは、顔が熱いのも、鼓動がいつもより早くなってるなと感じたのも、なんでなのか理解できていなかった。
ーTo be continueー
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