短編
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<今日は特別>
あなたのために準備したプレゼントを鞄に忍ばせて外に繰り出すと、真っ白な息が空に溶け込んでいった。
冷たい冬の空気は容赦なく私の頬を通り過ぎていくけれど、
会ったらまずなんて言おうか、プレゼントを渡したらどんな顔するかな、なんて考えているとそれだけで胸がいっぱいになる。
あと一つ角を曲がれば鉄の家に着く、
そう思って歩を進めると張本人が角から顔を出した。
『ぶわっ!!』
予想していなかった早すぎるご本人登場に、私はびっくりして奇声を上げてしまい、
それを聞いて鉄も驚いたようだった。
『て、鉄!急に現れて、びっくりするじゃん!』
「オメー連絡よこしといて、なかなか来ねぇから様子見に来たんだろ」
『あ、心配してくれたの?』
「・・・いや別に」
たしかに、渡したい物があるから家に居て、と連絡を入れてからずいぶんと時間が経ってしまっていた。
心配してくれていたのだろうと、鉄の表情を見たらすぐに分かった。
『えへへ、ありがとう』
寒い中せっかく出てきてくれたので、ここで渡してしまおうと鞄に忍ばせておいた物を差し出し、
ここに辿り着くまでに考えていた第一声を私はようやく発するのだった。
『鉄、お誕生日おめでとう』
「・・・待ちくたびれたぜ」
そう言って微笑む鉄の表情は、
この寒さを忘れるには十分すぎるくらい眩しかった。
ーENDー
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