短編
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<この席から見えるのは>
教室の一番後ろ、窓際の席で大あくびをしているオレの目の前には
早々に問題を解き終えた答案用紙。
クラスの連中が鉛筆を走らせる音が響く中、テスト終了時間が来るのを待っている。
教室から出て煙草でも吸いに行きたいところだが、廊下には生活指導のカツマタが見張りをしているらしい。
なす術もないオレは、両手をポケットに突っ込み、浅く腰掛けた椅子の背もたれに身体を預けながら
ぼーっと窓の外に広がる青い空とぽっかり浮かんだ雲がゆっくり流れていくのを見ている。
そんな中、オレの斜め前の席から小声で唸るような声が聞こえてきた。
幼馴染のねむだ。
苦手な社会の問題に悪戦苦闘しているのだろう。
こんな問題大した事ねぇのにと思いながら、つい気になって見てしまうのは
オレがコイツに特別な感情を抱いているからだ。
ねむは腕を組んだり、頭を捻らせて天井を見上げ、記憶を呼び起こそうとしているかと思えば、
しまいには諦めて、鉛筆を転がして出た目で選択問題を解いているようだった。
その姿が可笑しくて、オレは消しゴムを小さくちぎってねむの頭に目がけて投げる。
『!』
ねむはすぐにオレの仕業だと気付いたようで、こちらを振り返り少し怒ったような顔で"なに?"と口を動かしている。
"ばーか"
とオレも口だけ動かして見せると、ねむはムッと口を尖らせ、イーッと変な顔をしてすぐに向こうを向いてしまった。
ほんと、コイツ見てると飽きねェわ。
それはほんの些細なひと時の出来事で、
他の生徒もいる教室の中での二人だけのやり取り。
ねむの斜め後ろでずっとこの席なら教室で過ごす時間も悪くないなと
オレはまた窓の外へと視線を移し、ぼんやりと考えていた。
ーENDー