短編
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<素直になれない>
あーあ、やなもん見ちまった。
休み時間で賑わう廊下を気怠げに歩いていたところ、目に飛び込んできたアイツの笑顔。
こんなに生徒がいるのに一瞬で目に留まってしまう自分に驚きを隠せない。
ねむの木 ねむ。
オレの幼馴染で、オレの好きなヤツ。
口が裂けても本人には言わねーけどな。
『じゃあ、筒井くん!またね!』
ねむはそう言って筒井に笑顔を振りまきながら挨拶すると、今度はこちらに向かって走り出した。
『「!」』
(やべっ)
ねむと目が合うと反射的に背を向けて鉢合わせないようにオレは逆方向へ歩き出した。
が、不自然に方向転換したオレにねむが気付かないはずもなく…
『鉄!目ぇ合っただけなのに、なんで逃げんの?』
ちょっと怒ったように小走りでこちらに近づいてくる。
オレは追いつかれないように早足で進んでいく。
「別に逃げてねーよ。こっちに用事があんの忘れてただけだっつーの。」
『うそ。いつもの喫煙スポットそっちじゃないじゃん。』
「うっせーなー」
歩けども歩けども、ねむはオレの後ろについてきてしつこく尋問してくる。
振り切って逃げるのも無意味だと思い、人気が少ない廊下に差し掛かったところで歩を止める。
「・・・」
『隙ありっ!』
「っでぇ!!!!」
オレが何か発しようと考えてる間、不意を突かれてねむから盛大に膝カックンを受ける。
予期せぬ出来事に膝から崩れ落ちてしまった。
なんて間抜けな…
『ふふ、あはははは!鉄!もろに食らいすぎ!!』
振り返ると、ねむは笑ってる。
無邪気で眩しいほどに可愛らしい笑顔だ。
こんな状況だが不覚にもそう思ってしまった。
「お前なー・・・」
体制を整えて、ねむの目の前に立ち自然と頬に手を伸ばす。
『ふふふ・・・、ん・・・?鉄・・・?』
「・・・オレ以外に見せんじゃねーよ」
『なにが・・・』
オレのいつもと違う様子に気付いて不思議そうな顔をしてるねむ。
『いひゃいっ!』
だがオレは素直になれずに、ついねむの頬を指でつまむ。
「笑ってんじゃねぇ、ブース」
『?!!ブス〜〜〜?!』
キーンコーンカーンコーン・・・
「予鈴鳴ったから教室戻んな。オレ一服してくっからよ」
パッと手を離してねむを諭す。
『〜〜〜バカ鉄!カツマタ先生に言っとくから!』
「あ、てめぇ!」
ベーっと舌を出して走り去っていくアイツの背中を見つめながら、まーた心にもない事を言っちまったと後悔するのであった。
ーENDー
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