恋を覚える
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窓を開けると心地よい風が頬を撫でて室内へと入る。
「おはようございます姫様。今日は良いお天気でございますよ」
「ううん……」
姫様は眠たそうに目を擦りながらゆっくり体を起こされた。きっと昨夜も遅くまで古代遺物の研究をなされていたのだろう。
御髪を結っているとベットの脇から白い小型のガーディアンが姫様のところに寄ってきた。
『ピーッ!』
「ふふ、おはよう」
「おはようございます。ガーディアンさん」
姫様やプルア姉様のお話によれば、この子はハイラルに厄災が復活した未来から時を越えて来たのだという。まるでおとぎ話のようだけれど全て真のことなのた。
「完成いたしました。…いかがでございますか?」
顔を左右に動かして鏡を見た姫様は嬉しそうに微笑んでくださる。
「本当に上手ね。どうもありがとう」
「お気に召していただけて嬉しゅうございます」
敬愛する姫様からのお褒めの言葉に内心喜んでいると姫様がこちらを振り返った。
「リーチェ、今日は貴女にお願いがあるのですが聞いてくれますか?」
「はい姫様、私にできることでしたら何なりとお申し付けくださいませ」
「ありがとう。では早速ですが……近頃、私が各地方に神獣の繰り手の依頼へ赴いていることは知っていますね?」
「はい。姉から聞いております」
執政補佐官として姫様と行動を共にしているインパ姉様からゾーラの姫ミファー様とゴロンの豪傑ダルケル様からご承諾をいただけたと伺っている。
「一週間後に神獣ヴァ・メドーの繰り手候補であるリト族の戦士、リーバルに依頼をしにリトの村へ行くことになったのですが…リーチェ、今回は貴女も来てもらえないかしら?」
「…同行することに異存はございませんが、なにゆえ私を…?」
「リトの村へ行くにあたり魔物の群れを避けるため雪原を進もうと思っているのですが、慣れない雪道や天候の心配があります。そこで貴女の風読みの力を貸してほしいのです」
「どうか引き受けてくれませんか?」と仰る姫様に私はもちろん快諾した。
ーーー
そして出立から数日が経過した今、私達は猛吹雪に襲われてしまい急遽近くにあった洞窟に避難していた。
「ひどい吹雪ですね…大丈夫ですか?姫様」
「ありがとうインパ。私は大丈夫ですが、これ以上進めそうにありませんね」
「ええ、村まであと少しなのに困りましたね。…あっ!リーチェ、なんとか吹雪を和らげることはできませんか?」
姉様からの提案に申し訳ない気持ちで首をふる。
「この人数で移動できるようにするのは少々難しいかと…私と隣のもう一方くらいが精一杯でございます」
「そうですか…」
「仕方がありません。山の天気は変わりやすいと聞きますし、吹雪が止むことを信じて待ちましょう」
姫様がそう仰るとそれまで静かに見守られていたリンク様が急に立ち上がった。
「えっと…リンク?どうしたのですか?」
「………周辺を見回ってきます」
そのまま出口へ向かおうとするリンク様を慌てて引き止める。
「あっ…あの…!それでしたら私も一緒に…」
「えっ!?リンクはともかくリーチェには危ないですよ!」
「わかっております姉様。ですが…私も同行すればリンク様の周りの吹雪を抑えながら探索することが可能でございます」
「……リーチェはこう申しておりますが、どうされますか?」
姫様は少し思案した後、「無理はしないように」と念押しをして受け入れてくださった。
「で、では……よよ、よろしくお願いいたします…!」
僅かに驚いた様子で頷かれてから無言で歩き出すリンク様を追いかける。
この後に待ち受けている出会いが私自身に大きな影響をもたらすことになろうとは……この時の私には知る由もなかった。
ーーー
見張りをしていた戦士達が僕のところに慌てて戻ってきた。
「リーバル!あのガーディアンが…!」
「また来たのか……」
とはいえ想定していた範囲だ。控えていた他の戦士達に指示を出して向かわせる。
「この僕がいる限りリトの村には一歩も踏み入らせないよ!」
この後に待つ出合いが僕を変えることになるなんて思いもせず、まだ見ぬ敵に向かって空高く飛び立った。
ーーー
「行け!あいつらを食い止めるんだ!」
空から現れたリト族の戦士達がいきなり襲いかかってくる。
「な…何故、あの方々は私達に武器を向けるのでしょう…!?」
いつの間に付いて来ていたガーディアンを抱きかかえながら風を使って必死に避けていた。
リンク様も訳が分からないご様子ではあるものの、やむ無しと判断されたらしく峰打ちで対抗している。
しかしこのままお一人で戦い続けてはリンク様の身が危うい…。
私は爆風の隙を見てガーディアンを岩陰に隠すと震える手に力を込めて弓を握った。
……女神様、どうかリーチェに守るための勇気をお与えください。
『ピーッ?』
「…大丈夫でございますよ。貴方のことはリーチェとリンク様で必ずお守りします」
風を足元に纏い跳躍すると同時に弓を構えて風の矢を放つ。
「お覚悟なさいませ…っ!」
矢が当たってしまうと怪我を追わせてしまうので直前に解いて吹き飛ばした。
「「 うわあああっ! 」」
幸い本物の戦士相手にも通じたらしく風に巻き込まれた方々は漏れなく気を失っている。
「よかった…上手くいきましたね!」
リンク様も私が戦うとは思っていなかったのか、珍しくとても驚いた表情をされていた。
「リンク様、進みましょう。微力ながらお力添えさせていただきます」
このまま戻っても姫様を危険に晒してしまう。それにリトの戦士達がこのようなことを為さるのには何かの理由があるはず。
リトの村へ行って事情を教えていただかなければ…。
ーーー
「さて、そろそろかな」
僕の予想した通り戦士達が報告に帰ってくる。しかしその内容は予想に反したものだった。
「妙なハイリア人とシーカー族か…どうやらいつもの襲撃って訳じゃないらしいね」
「ああ。どうする?」
「……僕も出よう。作戦はいつも通りに進めるんだ」
「了解した」
村の手前から侵入者の様子を観察する。向こうから僕は見えないだろうが、ヒトよりも優れた視力を持つリト族の僕からは捉えることができる。
「フン、お手並み拝見といこうか」
相手はあのガーディアンを除けばたったの2人だ。ハイリア人の男とそれからーー
「………!」
弓を構えるシーカー族の女に僕は目を奪われた。
風に揺れる銀髪が雪原の中で煌めき、弓を持つ姿は射手と思えないほど白く華奢にも関わらず自身の髪と同じ色の矢を的確に打ち込んでいる。
「これは流石に驚いたね……」
一瞬、敵だとかそういうことは忘れて純粋に美しいと思ってしまった。
とはいえ…あのガーディアンと行動を共にしている以上、彼女もまた村を脅かす侵入者であることに変わりはない。
そのまま戦況を見守っていると白いガーディアンが爆風で空中に投げ出された。
崖下へ落ちていくガーディアンを仕留めるべく動き出そうとしたその時、彼女が思いもよらない行動を起こす。
「なっ…?!」
あろうことか自ら飛び降りてガーディアンを庇うように抱きかかえたのだ。
気付いたときには全速力で飛んでいた。そして樹木にぶつかる前に、どうにか背中で受け止める。
「ぐっ…」
「えっ…?!」
……僕は何をしているんだ。
自らの行動に舌打ちを一つして近くの雪原に降りた。
「あ…あの……」
戸惑う彼女に対して訳も分からず苛立つ。
「翼もないくせに飛び降りるなんて何を考えているんだ!僕が助けなかったら死んでいたかもしれないんだぞ!?」
「っ……も…申し訳ございません…!」
先程までの凛とした姿は何処へやら…彼女は僕の怒気を含んだ声だけですっかり怯えきっていた。
気を取り直して彼女に矢を向ける。
「っ……!」
「この矢で射抜かれたくなかったら、これから僕が聞くことに素直に答えるんだ。……いいね?」
返答次第では容赦はしない。今度こそ決心を固めて真っ直ぐに彼女を見据えた。
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