本編
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リーバル様とダルケル様が戦ってくださっている間に安全な場所へ避難する筈が、イーガ段筆頭幹部のスッパと多くの構成員に取り囲まれてしまっていた。
「姉様っ…」
「どうやら私達で切り抜ける他ないようですね」
武器を手に姫様を守ろうとする私達にスッパが刀の柄に手を掛けたままゆっくりと近づいてくる。
「その面子でこの人数を相手取るのは不可能でござる。頼みのあの2人も今頃町の奥…今になって此方に気が付いたところでもう間に合うまい」
カチャッと刀を鞘から抜く金属音が鳴った。
ギィィィン!!
「っ…?!」
目にも留まらぬ速さで切りかかってきた刃を姫様に届くより前にリンク様が剣で受け止める。
「リンク!」
リンク様は私達の方を振り返って「任せてほしい」と言うように無言で頷かれた。
「仕方ありません彼はリンクに任せましょう!早く姫様をここから遠ざけなければ…!」
「それならリーチェにお任せくださいませ!」
前方の敵に向けて弓を構える。そして指先に集めた風を一本の矢に変えてそれを放った。
私の風を凝縮して創る矢は普通のものより速く真っ直ぐに飛び、最後に矢の形を解くことで大きな旋風を生み出すことができる。
「「「 うわぁぁぁ!! 」」」
旋風が敵を吹き飛ばし、予想通り包囲網にポッカリと大きな穴を開けられた。
「やりましたね!」
「さあ姫様、今のうちに行きましょう!」
姉様が姫様の手を引いて、その後に続き一気に駆け抜ける。
「あれが風読み、中々厄介でござるな…。お前達後を追え!」
「「 はっ! 」」
ーー
スッパから離れることはできたものの今だ後ろからは大勢の追手が迫っていた。
「一体どこまで逃げれば……あっ!」
私達の足が止まる。火事による瓦礫で道が通れなくなっていたのだ。
「そんな…」
「やむを得ませんね。迎え撃ちましょう!」
姉様は素早く印を結んで影分身を出すと勇敢に斬り込んでいく。村で最も秀でていると名高いその身のこなしはイーガ団相手に少しの引けも取っていない。
「さすがは姉様でございます…!」
私も姉様に遅れをとらぬよう風の矢を連射し敵をたおしていく。
しかし倒せども倒せども増えていく相手に次第に劣勢となっていった。
「ぐっ…!」
「危のうございます姉様!」
キィン!
「っ…すみません!」
「…いえっ」
互いに庇い合いながらどうにか保っているけれど姉様も私も体力の限界が近い。
「リーチェ!!」
そのとき姫様が悲鳴を上げる。
「まずはお前から消えてもらおう!」
振り返ると死角から飛んできたクナイが私に迫っていた。
「っ…!」
もう避けられない。覚悟して目を閉じる。
カランカランッ
「……?」
来るはずだった痛みがなく代わりに聴こえた金属音に恐る恐る目を開けるとクナイと木の矢が地面に転がっていた。
「僕がいない間に随分好き勝手してくれたようだね」
「!……リーバル様っ…」
途端に涙が込み上げてきて上空で弓を構えるリーバル様のお姿が滲む。
「馬鹿なっ…なぜ此処にいる!?」
「黙りなよ」
殺気を帯びたその声にイーガ団員は「ひっ…」と悲鳴を漏らした。
「この僕を本気で怒らせたんだ。……一人残らず仕留めてあげるよ!」
そう宣言して呼吸をする間もなく怒涛の勢いで矢の雨を降らせいく。
縦横無尽に空を駆けるそのお姿はとても凛々しく、私は高鳴る胸を押さえてただ見入ることしかできなかった。
そうしてあっと言う間にこの場にいた全てのイーガー団の人間を倒したリーバル様は私の前に降り立つ。
「怪我はないかい?」
「っ…大丈夫でございます」
「やれやれ…ひとまず無事でよかったよ」
リーバル様は安堵したような笑みになると濡れた私の頬に手を添えて涙を拭ってくださった。
「あいにく僕は慰め方なんて知らないからね。…ほら、早く泣き止みなよ」
「も…申し訳ございません…止まらなくて…っ」
「別に怒ってないさ。でも僕がここまでしてるんだから感謝はしてよね」
そんなことを言いながらも柔らかな羽に覆われた手はじんわりと温かくて優しい。
どうかこの胸の音が聴こえてしまいませんようにーー
そう祈りながら私は少しの間だけリーバル様の優しさに甘えてしまったのだった。