本編
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兵士の中でリーチェに想いを寄せる連中が多いことは噂程度に聞いていたがまったく油断も隙もあったものじゃない。…まあ、分からなくもないけど。
僕の隣を歩くリーチェを見る。
新雪を思わせる白い肌と銀色の髪、柔らかみのある大きな瞳を持つ彼女は異種族である僕から見たって美しい。
そんな儚げな容姿と気弱で恥ずかしがりな気質が相まって余計に男の庇護欲を掻き立てるのだ。
「あ、あのっリーバル様…!」
「何だい?」
「あまり見られると…その……」
どうやら考えを巡らせているうちに見つめていたらしい。手で顔を隠す彼女は耳を通り越して首まで真っ赤に染まっていた。
そんなリーチェが愛らしくて僕はつい意地悪をしたくなる。彼女の言いたいことなんて簡単に察しがつくけれど敢えてぐっと顔を近づけた。
「ちゃんと言ってよ。どうしてほしいか分からないじゃないか」
「ちっ…近うございます!」
「君って本当に面白いね。見ていて飽きないよ」
もっと赤くなったリーチェに気分を良くしていると後ろにいたダルケルから「そのへんにしといてやれよ」と声が掛かる。
「嬢ちゃんが可愛いからってあんまり苛めると嫌われちまうぞ?」
「…別にただ僕はこの子の反応を楽しんでるだけだけど?」
「はっはっは!さっきはイーガ団の奴がリーバルに化けてるのかと心配したが、やっぱり本物で間違いねぇな!」
「なっ?!君ね…」
反論しようと口を開きかけたときだった。殺気を感じるのとほぼ同時にイーガ団が四方八方に現れる。
「貴方達は…!」
「ハイラルの姫…此度こそ消えてもらうでござるよ」
ーー狙いは姫か。
敵の指揮官と思われる腰に刀を2本差した男に向かって矢を放った。しかし当たる直前に煙と札が上がり逃してしまう。
「チッ…!」
そして次の矢を放つ間もなく町のいたる所で火の手が上がった。厄介なことに魔物まで放ったようだ。
「ここは俺達が引き受ける!相棒は姫さんを頼むぜ!」
ダルケルの言ったことに対し、あいつは表情一つ変えず無言で頷く。
「リーチェ、君も姫と一緒に此処を離れるんだ」
「は…はいっ」
青白い顔で頷くリーチェは怯えきっているようだ。そんな彼女の頭に手を置く。
「すぐに終わらせるさ。僕の活躍を期待しててくれよ?」
「リーバル様…」
わざとおどけて言うと強張った表情が少しだけ緩んだ気がした。
「わかりました。…どうかご武運を」
「リーチェ、此方へ!」
「はい…!」
姫達と走って遠ざかっていくを確認して再び前を向いた。
「さて、僕達も行こうか」
「おう!それにしてもまさか本当に出てくるとはな」
「君がろくでもないこと言うからなんじゃないの?!」
ーーー
「これで止めだ!」
…ドォン!!
『ギャアアアアッ!』
僕が放ったバクダン矢が魔物を一気に吹き飛ばす。
「今ので粗方片付けたか?」
「ああ」
イーガ団が宿町の広範囲に魔物を放っていたため最初にいた場所からかなり離れてしまった。
「しかし肝心のアイツがいねぇな」
「そうだね。一体どこに消えたんだか」
魔物を倒しながら多くの下っ端や平幹部とも戦ったがあの男の姿は一向に見当たらない。
「っまさか…!」
あの男、最初から姫だけをーー
同じく敵の策に気づいたダルケルが奥歯を噛みしめる。
「まんまとやられたぜ…魔物は姫さんの周りを手薄にするための囮だったのか!」
…だとしたらまずい。
もしイーガ団が姫の方へ本格的に戦力を投入してるなら…一緒にいるリーチェが危険だ。
「っダルケル!」
「わかってる!こっちは俺と兵士に任せな!」
「感謝するよ…!」
翼を広げて空に急上昇する。間に合うか?いや間に合わせるしかない。
姫の方にもあいつとインパがいる。それに彼女自身もそう易易とはやられない筈だ。
「頼むから持ち堪えてくれよ…!」
翼により一層力を込めて更に飛行速度を上げた。