本編
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ついに迎えた出立の日の朝ーー
いつもより念入りに髪を結い、リーバル様から頂いた翡翠の髪飾りも身に付けた。
「リーチェ、そろそろ行きますよ」
「はい只今…!」
背中に愛用の弓を背負いインパ姉様と共に城門へ行く。そこには本日同行する王国兵の方々が既に待機していた。
「おお!執政補佐官殿だけでなくリーチェ様もいらっしゃるのですね」
「よ、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ!いやそれにしてもご一緒できるなんて光栄です!いつでも頼ーーうわっ何だ?!」
言葉を遮るかように突如として風が吹き荒れる。
「!リーバル様っ」
次の瞬間、颯爽と空から現れたリーバル様は私と兵士の方々との間に着地した。
「3日ぶりだね。…おや、もしかして話し中だったかい?」
兵士の方々に気付いたリーバル様が後ろを振り返る。
「い、いえ!我々は大丈夫ですので…」
「そう。ならいいけど」
あまり興味がなさそうに返事をするとリーバル様は再び私の方へ向き直った。そしてまたこの前のように顔を凝視される。
「あの……?」
「その髪飾り、僕があげたやつだよね」
「あっ…はい!色合いが綺麗でとても気に入っております」
「へえ。そうなんだ」
何を思われたのかリーバル様は髪飾りの付いた私の髪を一房手に取った。
「っ?!」
「ま、結構似合ってるんじゃない?少なくとも僕はこっちの方が好きだよ」
「え……?」
普段の少し意地悪な笑みとは違う、初めて目にした自然な微笑みに思わず息を呑む。
「何だいその反応。この僕が褒めてあげてるのに嬉しくないのかい?」
「いえ…!その、嬉しゅうございます」
ちらりと周りを見ると、姉様をはじめその場にいた方々は呆気にとられているのか固まっていた。そこに豪快な笑い声が響く。
「こりゃあ驚いたぜ!おめえでも嬢ちゃんにはそんな顔するんだな」
声の主は急遽参加することになったらしいゴロン族の豪傑にして神獣ヴァ・ルーダニアの繰り手であるダルケル様だ。
「……君が来るなんて聞いてないんだけど」
「いやあ偶然、公用でゴロンシティに来た姫さんから今日のことを聞いてよ。戦力は多いに越したことねえだろ?」
「フン、つまりは飛び入り参加ってわけか」
「おうよろしくな!力を合わせて頑張ろうぜ」
「力を合わけて、ね。僕だけで十分だとは言わないでおくよ」
ダルケル様の満面の笑顔とは対象的にリーバル様は顔をしかめている。そうしているうちに姫様がいらっしゃった。
いつも通り後ろには姫付きの騎士リンク様、足元には姫様によく懐いている白い小型ガーディアンを伴っている。
「もう揃っていたのですね。お待たせしてしまい申し訳ありません」
「いいって姫さん!俺も今来たところだぜ。な?リーバル」
「…まあ僕が来てからもそんなに時間は経ってないよ」
「二人共ありがとう」
姫様はそう言って微笑むと皆の方へお体を向けた。
「厄災への備えとして古代遺物の早急な調査が求められています。そのためにも私達で遺跡内外に住みつく魔物を討ち払いましょう!」
姫様のお言葉に応えて兵士たちが声を上げる。そうして私達は出立したのだった。
「リーチェ」
「!姫様…いかがなさいましたか?」
「来てくれてありがとう。きっと今日を迎えるまで思い悩んでいたのでしょう?…貴女にまで責務を負わせてしまってごめんなさい」
姫様は申し訳なさそうに俯かれる。誰よりもその御身に重責を背負っていらっしゃるのは姫様だというのに…。
「リーチェも姉様たちのように姫様のお役に立ちたかったのです。もし私の風で僅かでも姫様の憂いを吹き飛ばせるのなら嬉しいことでございます」
「…優しい子ですね。貴女の風があればきっと調査の方も大きく進展することでしょう。頼りにしていますよ」
「はい姫様!」