本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ハイラル城の中庭を歩いていると突然上空からの強い風が中庭を駆け巡った。この風が吹くときは決まってあの方がいらっしゃる。
「やっぱり君か」
見上げるよりも早く、リト族の戦士にして風の神獣ヴァ・メドーの繰り手であるリーバル様が私の前に降り立った。
「リっ…リーバル様、お久しゅうございます」
ぎこちなく挨拶をする私を見てリーバル様は「やれやれ」といった様子で苦笑いした。
「ああどうも。前から言ってるけどさ、もう少し自然に接することはできないのかい?」
「それは、あの…」
お会いする度にそう言われるけれど若い殿方とお話をするのはどうしても緊張してしまう。特に相手がリーバル様なら尚の事…
「まあ仕方がないから君が慣れるまで待っててあげるけどね、でもなるべく早く頼むよ」
「えっ?!そんな…無茶でございます…!」
どうしたらよいか困っていると何故かリーバル様の視線が顔に注がれる。そんなことをされたら余計に困ってしまう。
「あっ…あの…私の顔に何か付いていますでしょうか…?」
あまりに凝視されるものだから頬が熱くなってきてしまい耐えきれずに俯いた。
「君、いつも同じ色の髪留めしてるよね」
「え?…ああ、そうでございますね」
朱色は私達シーカー族の伝統色故にプルア姉様やインパ姉様だけでなくカカリコ村の皆も何らかの形で身につけている。
「それじゃないといけない理由でもあるのかい?」
「そのようなわけでは…も、もしや似合っておりませんか…?!」
「そうは言ってないよ。でもたまには違う色を付けてみてもいいんじゃない?…例えばこういうのとかさ」
リーバル様は懐から可愛らしい包袋を取り出すとそれを私の手に乗せた。
「これは…?」
「開けてみなよ」
催促のままに袋を開ける。すると中に入っていたのはリーバル様のものと同じ翡翠の髪留めだった。
「どうせ余ってるから君にあげる。嫌なら別に捨ててもいいけど?」
戸惑う私を見て喜んでいないととられたのか不機嫌なご様子でお顔を逸してしまう。
「すっ…捨てたりなどいたしません!その…素敵な贈り物をいただけてリーチェは嬉しゅうございます」
「本当に?まさか君、僕に気を使ってそう言ってるんじゃないだろうね」
「本心でございます!」
思わず前のめりになってお答えしてしまうとリーバル様は驚いたようで目を丸くしていた。
「ぷっ…はははっ!」
「わ…笑わないでくださいませ…!」
こんなに笑われてしまうなんてもう恥ずかしくて顔を上げられない。
「ごめんごめん、君があまりに必死だったからついね。おっと…そろそろ行かなくちゃ」
「なにかご用事でございますか?」
「ああ姫にちょっとね」
「ええっ?!それならば早く行ってくださいませ!!」
まさか姫様をお待たせしていたなんて…私に会いに来てくださったわけではないことを、ほんの少し…本当にほんの少しだけだけ残念に思ってしまう。
「早く行けって君さ…もう少し僕といたいとか思わないわけ?」
「それとこれとは別でございます…!」
「はいはい、じゃあ行きますよ」
リーバル様は肩をすくめると城の方へ歩きだした。
「ああそうだ」
「?」
「気付いてないみたいだけど、さっきの言い方だと君も僕といたいって言ってるようなものだからね?」
「っ??!」
私の反応を見てリーバル様は満足そうに笑みを深める。
「じゃあねリーチェ。次に会うときには僕があげた髪飾り、ちゃんと付けててくれよ」
ご挨拶を返さなければいけないのに恥ずかしくていっぱいいっぱいになってしまって、颯爽と去っていく背中を真っ赤になった顔で見送ることしかできなかった。