本編
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『プルア様とインパ様は優秀だというのに、リーチェ様は……一体誰に似たのやら』
『いっそのこと私の娘に生まれなければ、あれも幸せだったのやもしれんな』
「っ………」
思い出すと針を刺したように胸が痛む。もう何度目か分からないけれど…。
全て至らない私自身が招いたことだと分かっていながらも故郷を離れて数年経つ今でも痛みは消えてくれない。
きっとご自分の道を貫くプルア姉様なら何を言われても気になさらないのだろう。常に凛とした佇まいのインパ姉様ならば自分を律して他の方に気取られるようなことはなさらない筈だ。
それなのに、私はーー
ーーー
リトの村を発つ前に族長様や村の方々が見送りに来てくださった。
「大変お世話になりました」
「またいつでも来てくだされ。リーバル、リーチェさんをしっかり送り届けるのだぞ」
「わかっていますよ」
隣にいるリーバル様が私の方にお顔を向ける。
「忘れ物はないかい?流石に取りに戻るのは大変だからね」
「はい。大丈夫でございます」
「それなら行こうか」
そうして来たときと同じようにリーバル様の背に乗せていただき、手を振ってくださっている皆様にもう一度お礼を言ってハイラル城に向けて飛び立った。
「リーチェ、寄り道をしないかい?」
少したったところでリーバル様がお顔をちらりと向けて声をかけてくる。
「寄り道…でございますか?」
「少し方向が違うけど君の好きそうな場所があるんだ。どうかな?」
「行ってみとうございます」
「そうこなくちゃね。ーーさあ、捕まっていなよ!」
そう仰るとほぼ同時に大きく旋回して方向転換をした。
「私、こういったことはしたことがなくて…なんだか心躍るようでございます…!」
「そうなのかい?じゃあ僕とが初めての寄り道ってわけだ」
「はい。リーバル様、よろしくお願いいたします」
「フン、期待して損はさせないから任せておきなよ」
ーーー
ハイラル丘陵を超えて更に南へ進んでいくと山が見えてくる、
「もしや目的地は…」
「サトリ山だよ。もしかして来たことがあったかい?」
「実際に目にするのは初めてでございます。以前に本の挿絵で見たことがあって…いつか訪れてみたいと思っていたのです」
「だったら丁度良かった。実際に自分の目で見るのは絵で見るより格別だぜ?」
リーバル様はサトリ山の真上から景色を眺めるように一回りして桜の樹の側に降ろしてくださった。
「何て素敵な場所なのでしょう…!」
満開の桜の樹は雄大で美しく、風に吹かれて桜の花弁が宙を舞うと透き通った湖や地面に桜の絨毯のように敷き詰められていく。
「此処って不思議な場所だよね」
「本当でございますね。空気が澄んでいて神聖さすら感じます」
「時々1人で来ることがあるけど、いつ来ても桜が満開でさ…精霊がいるって噂もあながち嘘じゃないのかもしれないね」
「まあそんな噂が…!精霊様…いつかお会いしてみとうございます」
それから暫く付近を散策して、帰る前に桜の幹の根本に腰掛けて休憩をとることにした。
「色々見ているうちに結構歩いたね。僕は大丈夫だけど君は疲れたんじゃないの?」
「私も平気でございます」
「へえ、なかなか頼もしいじゃないか」
ふっと笑うその表情の優しさに胸が高鳴って頬が熱くなる。今この時は私のために向けてくださっていると思うと幸せで堪らなくなり、お慕いする気持ちは大きくなっていくばかりだ。
「あの、リーバル様……」
「なんだい?」
「故郷での私の話……聞いていただけますか…?」
リーバル様は一瞬目を見開く。
「今お話することではないのやもしれません。それでも…リーバル様だから聞いていただきたいのです」
私の我儘に過ぎないけれど…私を知ってほしい。
失望されたくなくて言えなかったけれど、この場所でなら、リーバル様になら話せるような気がした。
俯く私の背にリーバル様の温かく柔らかな翼が添えられる。
「リーバル様…」
「話してみなよ。…ただし、君も分かっているとは思うけど僕に優しい言葉なんて期待しないでくれよ?」
口ではそんなことを仰るのに仕草の一つ一つは繊細で優しさが込められていた。
「ふふ……ありがとうございます」
気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。
そしてリーバル様に全てお話した。
ーー私の在りし日々を