本編
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夜になり広場では料理を持ち寄って立食での宴会が開かれた。
「おめでとうリーバル!やっぱりお前には敵わないよ」
「飛ぶのなら勝負になると思ってたのに悔しいぜ…」
「いいか!次は俺が勝つからな!」
飛行大会で優勝した僕のところには同じく出現していた仲間達が入れ代わり立ち代わりやって来てすっかり囲まれてしまっている。
「はいはい。僕が勝つのは当然の結果だし次に勝つのだってこの僕だよ」
騒がしいのは好まないけれど…まあ悪い気はしていない。ようやく人が途切れたところでリーチェの所へ向かった。仲間達の相手をしていて側に居られなかったのだ。
一人ぼっちになっていなければいいけど…。
そんな心配をしながら足早に行ってみると彼女も彼女で村の女子供に取り囲まれていた。どうやら要らない心配だったらしい、
リーチェは僕の姿に気がつくと彼女達に礼をして歩み寄ってきた。
「ご歓談はもうよろしいのですか?」
「優勝したから囲まれていただけさ。次から次に来るものだから料理を選ぶ暇もなかったよ」
「ふふ、でもリーバル様…嬉しそうなお顔をなさっていますよ」
「フン……ま、優勝したからこそだから僕も少し寛容になってるのかもね」
そうは言っても料理を食べそこねていたのは本当だから手近にあった料理を皿にとって口に運んだ。
「ところで君は皆と何の話をしていたんだい?」
「侍女の仕事のことや城下町の流行りものなどのお話をしておりました。皆様お優しい方ばかりで……最初は緊張いたしましたがとても楽しゅうございました」
「へえ、それは何よりだね。どうせなら君にもこの村を気に入ってほしいからさ」
「ふふ、リーバル様はこの村を愛しておられるのですね」
リーチェがふわりと微笑む。彼女の言う理由もあるけど…上手くいけば彼女にとって第二の故郷になるかもしれない訳だから居心地が良いと思ってもらえる方がいい。
「生まれ育った場所だからね。……そういえば君からは故郷の話を聞いたことがないな」
「っ!そ、それは…」
途端に彼女は口籠ってしまう。
まあ…リーチェは内気な性格だから好んて自分から話をしてこないのもあるけどーーどうやら理由はそれだけじゃないみたいだ。
一瞬、顔に動揺が走ったのを僕は見逃さなかった。
「そうですね…カカリコ村も良いところでございますよ。山間にあって静かな村ですが、皆で支え合いながら慎ましく暮らしております」
リーチェは故郷を慈しむ言葉に釣り合うような微笑みを浮かべるけれど…取り繕っているように思える。こんな姿を目にするのは初めてだ。
「まったく……見てられないね。そんな顔するのは止めなよ」
「えっ…」
「僕の洞察力を見縊らないでもらえる?空笑いをしているのなんてすぐに分かるよ」
俯いてしまった彼女の肩に手を置いた。
「…どうせ君のことだから何かあったんだろ?無理に聞くつもりはないけどさ」
そんなのは建前で本当は洗いざらい全て話してしまえばいいと思う。君の心に寄り添えたらどんなにいいだろう。もっとも……僕にそんな真似ができるとは思えないけど。
僕の胸の内を知ってか知らずか、リーチェは僅かに微笑む。今度は空笑いなんかではなく…彼女本来のものだ。
「…リーバル様はお優しゅうございますね」
「僕が優しい?そんなことを言うのなんて君、よっぽど参ってるか…ちょっと節穴なんじゃないの?」
「そっ…そんなことはございません!」
「フン、どうだか」
リーチェの手を取って仕切り直すように違うテーブルの方へ歩く。
「リーバル様…?」
「君、デザートはもう食べたかい?」
「えっ…いいえまだ…」
「それならイチゴタルトがおすすめだよ。ヘブラで採れるイチゴは甘みが強くて美味しいんだ」
「本当でございますか?それは…ぜひ食べてみとうございます」
彼女の顔に普段の明るさが戻った。…やっぱり君にはこっちのほうがお似合いだ。
「ただし、人気だからなくなってても責任は持たないけどね」
「えっそんな…!」
「冗談だよ。沢山作ってるはずだから食べ損ねる心配はないさ」